176. からくり
不定期と言いながら全く出せずすみませんでした。一応これから毎日投稿できるようになりましたので、自分のペースで書き進めたいと思います。
「キャハッ!もう終わり!?まだまだこれじゃあ楽しめないわよ!」
赤黒いオーラの放つ鎌を振り回しながら戦う彼女の姿はまるで本物の死神のようだった。
「クッ!流石に手強いっすね…!」
「全然いい方に転がらない…!私の魔法も決定打にはならないし…!」
「面倒くさいですね…恐らく私の天敵…」
3対1なのにまるで勝機が見出せない。それもこれも全てこの中で一番の戦力であるハクの蝕毒魔法が対して効いてないことが原因だった。
「私が…私が何とかしなければいけないのに…!」
「落ち着いてハクちゃん!あいつを倒すのはやっぱりハクちゃんにしかできないわ!プロディの時間稼ぎも限界がある!」
「ほらほらほらほら!しぶといけどそろそろ終わりが来てるんじゃない!?」
「まだまだっすよ…!」
(これでも粘り強さには定評があるっすからね……あっしはハクっちが何とかしてくれるのを信じて動くだけっす…!)
プロディが時間を稼いでる間にハクが打開案を模索する。
「どうしましょう……何か手は……せめて毒が効かない仕組みでもわかればいいのですが……」
(ご主人様の一番の強みはその多彩さ…どれかがだめなら他の手段、それでもだめならまたさらに別の手段……そうしてほぼ無限に近いほどの戦術を持ち、どんな相手でも勝てる手段を持ってるのがご主人様……でも、私やレイさんは違う。一つしか極められなかった私達は勝てない相手には絶対に勝てない……私達も教えてもらってばかりじゃなく自分で何かを掴まないと……)
「ハクちゃん!もしダメならあんたは逃げなさい!あんたは守らなきゃいけない人がもう一人いるはずよ!」
「そんなことしません!ご主人様を見捨てて逃げたなんてマール様に顔向けもできませんから!それならいっそ奴の喉元に_」
「キャハハッ!終わりだよ褐色!いい声を聞かせておくれよ!」
「しまっ…!」
疲労によりほんの0.1秒ほど見せてしまった隙を見逃さず、プロディの腹を切り開く。
「ぐ……グフッ……!」
「プロディ!!!」
瞬間ベルンがプロディの下に駆け寄ろうとする。しかし_
「キャハッ!させると思う!?ヒーラーも潰さないとね!」
そんなベルンに向かって鎌を振り下ろす。
「邪魔しないで!炎攻球魔法っ!!」
「キャハハッ!そんなの効かないよ!これでヒーラーも終わり!」
「く…なんてやつ…!」
鎌がベルンの首を捕らえた瞬間_
「地防御魔法!」
ハクの指輪から解き放たれた魔法がベルンを守る。
「キャハッ!メイドも中々いいもの持ってるじゃない!」
「ベルンさん!すぐさまプロディさんの治療を!私が何とかしますから…!」
勝算はない、それでもやるしか無かった。
(蝕毒魔法が効かない、ベルンさんもプロディさんも戦線離脱、応援なんて期待できない、むしろ敵の増援が来る可能性のほうが高い……何より側にご主人様がいない……これ以上の危機なんて今後無いでしょうね……でもまだ全部試したわけじゃありません。ここで全てをかけてでも倒してみせます!)
メイド服の裏生地からハク専用の杖を取り出して構える。
「私は………私は『死神の従者』、ハク=アルセトラ。」
「キャハッ!私は『狂い咲く華』、ヘデラ!」
杖を通して全力で魔法を放つ。それでもヘデラには通じてない様だ。
「キャハハッ!効かないよ!」
ヘデラが鎌を振りかざす。それをハクが地防御魔法で防ぐ。
「キャハッ!それしか使えないの!?なら次は当てるよ!」
(どうすれば…いや、落ち着いて。私が持てる毒は全部放った。でもどれも効いてない。何で?私の毒は解毒魔法でも防げない。ベルザさんは毒無効化がついていた。それと同じか、もしくは他の何かからくりがあるはず……)
「キャハッ!戦意喪失かな!?なら今すぐ楽にしてやるよ!」
(あの特徴的な笑い方、喋るために毎回していますよね…まるで何かに操られてるみたいに………毒が効かない…操られてる…『狂い咲く華』……まさか…!)
「ベルンさん!彼女に治癒魔法をしてください!今すぐ!」
「……いや、わかったわ。常時回復魔法!」
「キャハ…?」
ヘデラの動きがピタリと止まる。そしてすぐに絶叫する。
「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
「まさか死霊…!?でも普通に人の言葉を話して…」
「……ヘデラさん、今楽にしてあげますね。」
ハクはプロディのナイフを取り、ヘデラの首を切る。
「キャハ……」
ゴトリと首が落ちる。その目は虚空を見つめておりながらもどこか笑みを浮かべているように見えた。
「きっと操られてたんだと思います。死体を操るなんて死者への冒涜です…!やはり私は決着をつけなければいけない相手がいるようですね…」
「………ハクちゃん、何があったのかは知らない。でも今はあいつを助けるのが第一優先よ。」
「………はい、わかってます。私の私情よりもご主人様を優先すべきなのは私が一番わかっていますよ。」
苦笑しながらベルンとプロディを見つめる。
「まだ治りそうにないですか?」
「……そうね、今すぐは動けないわ。だからハクちゃんは先に行きなさい。」
「ありがとうございます。ご主人様が近いような気配がしますのですぐ戻って来るでしょう。」
そうして奥に走り始める。
「すごいわね、本当に。それに聞いちゃった。ハク=アルセトラ。ふふ、やっぱり望んでるんじゃない。」
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牢屋を走っていると、奥の牢屋からエルラルドの気配を感じる。
「ご主人様!」
「やっと来たか、随分と遅かったじゃないか。」
「申し訳ありません!確実にご主人様を救出するために何度も練っていたので…!………って、そこにいるのは誰です…?」
「あー……まあ取り敢えずここから出してくれ。お前ならこの特殊合金でも溶かせるだろ。」
「あ!すみません!」
こうしてエルラルドは牢屋の外に出ることに成功し、再び世に解き放たれることになる。
ヘデラのステータスです。
名称:ヘデラ=アスター
種族:死霊(元人間)
年齢:347歳
装備:冥羅殺鎌
筋力:A 敏捷:B 体力:S 知能:E 魔力:E 魔気:A
状態:死霊化、洗脳、不腐の器