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オタクが転生したので異世界でもオタクになります  作者: 枝豆 糵
第四章:冒険者編
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168. 篠原祐希VSエルラルド=アルセトラ

「勝手に俺の身体に宿って我が物顔で俺の肉体を動かす。死人にしては随分と図々しいじゃねーか。死人に口なしだぜ?篠原悠希の魂。」

「……つまりお前が本来のエルラルド=アルセトラの魂ってわけか?」


「ああ、俺はずっとお前を見てきたぜ。もちろんお前の魂を通してお前の前世のことも理解してるさ。ロリだったか?が出てくる作品ばかり見て欲情していたよな。いや、それは今もだったか。『死神』の本性が幼女好きとはこれまた愉快な存在だよな。下手したら周りから引かれるんじゃね?」

「……別にあいつらはこの程度で引かねえよ。俺は_」

「あいつらを信用してるから、だろ?お前も随分と丸くなったよな。正直腑抜けてるぜ?昔の獰猛さを思い出せよ。お前以外は全員敵、誰も信じず孤高に生きていく。そう考えていたやつがいまさら信用してるだ?随分と都合のいい脳みそしてやがるんだな。」

「……随分と俺を憎んでやがるんだな。」

「当たり前だろ?俺はお前のせいで人生をつぶされたんだ。お前さえいなければ俺は現世に顕現できたのによ。」


 まあそりゃそうか。俺がこいつの人生を奪ったってわけだもんな。


「……顕現したら何をするんだ?」

「そうだなぁ……手始めにお前を信じてるやつを片っ端から殺しつくしてやるよ。もちろんこの肉体でな。さぞかしいい顔が見れるだろうなぁ。もちろんすぐには殺さねえ。ジワジワ痛みと苦しみ、絶望に染まっていって壊れるところをお前にも見せてやりてえしなぁ。」

「………………不思議だな。」

「は?」


 不思議だ、本当に不思議だ。実に面白い。


「お前は散々俺を煽ってくれてるみたいだが、俺には全く響かなかった。怒りが全然湧いてこないんだ。不思議だろ?」

「煽られ耐性でもあるんじゃねーのか?」

「何だろうな……映画館とかで今俺がここで叫んだりしたらどうなるんだろうみたいな、そういう侵入思考的に感じるんだろうな。お前が俺であるゆえにお前の言葉も俺の思考に流れてくるみたいだ。」


 そうだ、だんだんとこの空間の認識に慣れてきた。今ならこいつの考えてることだって手に取るようにわかってしまう。


「………なるほどな、そういうことか。」

「突然なんだよ。」

「俺とお前の魂が混ざり合ってる。俺の魂は仮死状態でお前の魂の生命力を吸収してたってことなんだな。」

「そうだ。お前は俺の生命力を奪って生きてるんだ。」

「お前のおかげで再び魂が蘇り始めたところで、今の俺の魂はまた仮死状態になった。」

「お前という存在はもう死んだんだ。」

「でも、お前の魂は死んでない。」


 活路を見出し思わず笑みが漏れる。


「……………そうだな、俺の魂はまだ死んでない。といってもお前に吸われまくったせいでほとんど抜け殻。もう現世に顕現する分の力すら無い。」

「俺はまだ死ねない。現世に戻ってみせる。だからお前の魂の力を全部よこせ。」


 手を前にかざす。


「むざむざ渡すわけないだろ?むしろお前の魂をくらってやるよ。そして俺が現世に行ってみせる。」


 目の前の俺も俺に向かって手をかざす。


「ここは魂が宿る世界。今のお前が死ねばお前の魂は消滅する。」

「逆もまたしかりだろ?勝ったほうが前世に戻り、負けたほうが消滅する。単純明快でわかりやすいじゃねーか。」


(おそらくお互いに魔素魔法を使える、というか俺の技術を全て持ってると言っても差し違えないだろう。なら勝負すべきは生への執着。どれだけ生きたいと、どれだけ相手を殺したいとそう思えるかの勝負になる。)


 お互いの魔力が整い、それぞれが叫ぶ。


「「天地消滅光線(オールデリートレイ)っ!!」」


 文字通り全力、全ての力を使って過去一の極太光線を解き放つ。

 大きさ、威力、速度、質量、どれをとっても全く同じで鏡のような対称的に撃ち合う。


「出てけよ紛い物!外部の人間が出しゃばってんじゃねえ!お前を倒して俺の生きたいように生きさせてもらう!」

「俺は一人じゃねえ!俺の帰りを待ってくれるやつがいる!お前こそ出てけよ!今さら出てきて後出しジャンケンしてんじゃねえ!」

「ふざけんな!それは俺の身体だ!本来は俺が使うべきなんだよ!」

「知らねえよ!もう俺から何も奪うな!栄光の菖蒲(グローリーアイリス)のやつらにミレイヤにガウスにマーシュにセティアにアッシュ村のやつらにユーグリル王国のやつらに!それに加えて俺すらも奪うというのか!俺はもう何も失わない!失わせない!俺はお前を殺して絶対に戻ってみせる!」

「ぐ……!俺は……負けたく………ない……!やっと…!やっと掴めたチャンスなんだ!こんなところで無下にされてたまるかよ!」


 徐々に徐々に情勢が傾き始める。


「悪いな……転生者だからってぽっと出でお前の全てを奪ってしまって。自分勝手なのはわかってる。都合が良すぎるのも分かってる。だから恨むなら俺を恨め。俺がお前の分まで全力で生きてやるからよ。」

「死ね!死ね死ね死ね死ね!お前なんか死んじまえよ!」

「…………最後まで悪者で居てくれてありがとよ。おかげで何の後ろめたさもなく殺せる。」

「やめろ!やめてくれ!俺を……殺さないでくれ…!」

「今さら命乞いしてんじゃねー!!」

「ぐ……!ぐああああああああああああっ!!!」


 渾身の力、魂心の力と言うべきか。とにかくすべてを出し切り目の前の俺を消し去る。


「眠れ。そして恨め。この世の不条理に打ちひしがれながらな。」 

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