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オタクが転生したので異世界でもオタクになります  作者: 枝豆 糵
第四章:冒険者編
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167. 再邂逅

「お前がエルラルド=アルセトラか?兄上から話は聞いていたが……想像以上の化け物のようだな。実に惜しい人材だ。」


(こいつを倒せば終わり……なら今すぐ殺してやる…!)


「はぁ…はぁ…水災害魔法(ブリザード)!」


 もはや無詠唱をするほどの集中力すら無く、詠唱破棄にしかならなかった。


「残念ながらお前の相手をするのは我じゃない。ルクス!テネブラ!」


 名前を呼ばれた途端純白と漆黒の執事がウィズラムを守るように目の前に現れたかと思うと、俺の水災害魔法(ブリザード)を漆黒の執事が切り裂いてしまった。


(っ!こいつら今までどこにいやがった!?)


「ウィズラム様、我々をお呼びになられたということは対象が現れたのですね。」

「凄腕の魔法使い……あの剣を持ってる方ですね?」

「そうだ。あいつがエルラルド=アルセトラ、今回の殺害対象だ。」

「では早急に対処させていただきます。」

「ウィズラム様はお下がりください。巻き込まれる可能性がありますので。」

「わかっ_」

「っ!」


 ウィズラムが返事を終える前に既に俺の懐まで漆黒執事が入り込んでくる。

 咄嗟の出来事に反射的に地厚壁魔法(アースアーマー)を使い短刀を防ぐが、次に純白執事が高速の矢を放ってくる。


(レイに致命傷与えたのはこいつか…!)


 剣で叩き切れば矢なんて届かな_


「グフッ!」


 腹部からの猛烈な激痛。下を見ると漆黒執事が更に歯を深く食い込ませ、肉まで届かせていた。


「このっ!」


 剣を逆手に持ち替え、眼下のゴミを突き刺せば_


「ガハッ!」


 あまりの痛みに周りが見えなくなってしまい、思わず矢の存在を忘れてしまっていた。的確に心臓を狙われ、止めどなく血が流れ出て意識が朦朧とし始める。


(あ………これ本気でまずい……)


 全身から力が抜けていき、目の前が真っ暗になっていった。


「エルラルド!」


 そんなカエドスの呼びかけを最後に俺の意識は完全に落ちていった。



___

__

_




 目が覚める?いやどちらかと言えば夢の中?そんな不思議な空間に俺は立っていた。


「なんだここ……いや、確か前にもこんなところに来たような……」


「あー、あー、ただいまマイクのテスト中。テステステース。」

「は…?」


 機械音声のようなそうでないような声、男性なのか女性なのかもわからない不思議な声が響き渡る。


「やーやーお久しぶり?それともそんなに時間経ってない?始めましての人もいるかな?まあ色んな人がいるよね。」

「誰だよお前……誰に向かって話してるんだ…?」


 気味が悪い。最初の感想はそれだった。


「あー、まだ記憶を封印したままだったね。これは失敬失敬。戻してあげるよ。」


 そうやつが告げたあと、激しい頭痛とともに過去の情景が鮮明に思い起こされる。


「な、なんだこれ……森羅万象之神本(アカシックレコード)……あの時のうぜえやつ……」

「でも君の命を救ったのは僕なんだよ〜?」

「チッ!お前は変わんねえな…」

「ふふふ、まあ君も相変わらずそうだね。」


 前にこいつが現れた時は、俺が肉体の限界を超えた技術を無理やり行使して死んだ時に出てきたんだったか…


「………また俺は死んだのか?」

「ああそうだとも。君は死んだ。君の人生はあそこで終わる運命なんだ。因果律ってやつだね。」

「………お前が関与してきたってことはもう一度チャンスをくれるのか?」

「うんうん、わかるよ〜。目の前の希望には縋りたくなるよね〜。でもさ、それじゃあつまらないんだよ。死にそうになった時に僕が来て生き返らせる。それの何が面白いの?またいつもの都合のいい展開じゃないか。」


 こいつの言いたいことは理解しきれない。理解しようと脳が働かない。


「まあ君が理解できるわけがないんだよね。君は二次元に向かって話してるけど、僕は三次元に向かって喋ってるわけだからね。」


 なるほど、比喩が上手いやつだ。癪だが人事を超えた存在であることに間違いはない。思わずそう都合のいいように脳が納得してしまっていた。


「………御託はいい。お前はなぜ俺をここに呼んだ。」

「そうだね〜……こんなところで死ぬ主人公なんて面白くないだろう?それにこんな中途半端なところで君は終われないんだ。君の最後は決まってるわけだからね。」

「………矛盾してるぞ。お前の言い分では俺を生き返らせるつもりがないのに俺は生き返らせると言っている。」

「ああ、僕が生き返らせるつもりはないよ?ただ君の魂はかなり複雑でね。やりようがあるってわけなんだよ。まあやるもやらないも君次第なわけなんだけどね。」


(こいつの口車に乗っていいのだろうか、でも乗るしかないかもしれない。そもそもこいつは何もかもがお見通しだと宣言していた。なら俺に選択肢を与える理由は…?)


「………お前は俺の選択肢を知ってるんだろ?だったら俺が言う理由はないはずだ。」

「君の世界ではニューカムのパラドックスって呼ばれてるやつだね。結局僕を信じるか信じないか、それで君は判断するしか無いんだよ。あと、これは君の口から言うべきことだろう?」

「………言えばいいんだろ言えば。」


 深呼吸してから深々と頭を下げる。


「俺がもう一度生き返れる方法を教えてください。」


 不思議と屈辱は感じなかった。


「それはきっと君にプライドだとかが無いからだろうね。昔はそれなりにあったけど、今の君にはない。」

「プライドなんて持ってても何も意味ないものだからな。」

「ふふふ、じゃあ君にだけ与えられたチャンスをものにしてみるといい。」


 そう言うと奴の姿が消え、魂が現れる。その魂が肉体を持っていくと衝撃が走る。


「よお、俺の体を乗っ取った()()()()()。楽しかったか?転生者として生きてきた人生は。」

「お前は……俺…?」


 鏡でもあるのかと思うぐらい俺と瓜二つの人間が俺を殺意のこもった目で睨んでいる。

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