166. 大混戦
遅くなりましたすみません
「うおおりゃあ!」
「フラっち!リーダーを頼むっす!」
「任せろ。」
「身体よ!かの者の肉体を降下せよ!防御強化魔法!」
「天地消滅光線!」
襲ってくる一万の兵をひたすら迎え撃つ。
魔法兵は限界を迎えているが、義勇兵達は今まで出番がなかったせいか張り切って先陣を切ってくれる。
今のでだいたい8千対1万3千ぐらいになった。数の差では既にスライトを上回っていた。
「はぁ…はぁ…さすがに限界近いな……」
天地消滅光線は集中力がごっそり削られる。それでも撃たないと一気に戦力を削れない。
「おいエルラルド!もう限界なのか?」
「お前らと違って俺は数時間ぶっ続けで戦ってるんだよ………今さら来たやつに言われたくねえセリフランキングナンバーワンだ。」
「無駄口が多いぞ。」
「エルっちは少し休んでるっす!今はクゴっちもいるっすからね!」
「エルラルドさん!ここは僕に!」
せっかく飛んできたってのに冷たい野郎どもだ。
「クゴールとか言ったか?お前は回復係に徹しろ。こいつらは俺のサポートなしでも耐えれるやつらだ。」
古龍の時、俺とハクがいない間も何とか耐えきっていた。そして俺たちが抜けたことでこいつらだけで切り抜けた危機もあっただろう。
「だからお前がベルンの代わりになってくれ。」
「わかりましたエルラルドさん!」
「……あと、俺の武器は魔法だけじゃないんでな。」
腰の剣を抜き魔気解放をする。身体強化魔法を使うほどの集中力は残ってないが、ここから先に思考力はいらない。目の前の敵を斬り殺すことだけを考えればいい。
「お前の剣技はそこまでだろ。」
「剣だけでもお前には負けねえがな。」
「はっ!抜かせ!」
そうして近距離戦が始まった。
残った敵の盾兵は相当固く、まるでフラントを相手しているみたいだった。その後ろには槍兵がいるので迂闊に盾の攻略ばかりを気にかけてられない。そのさらに後ろには弓兵と魔法兵がおり、的確に一番嫌なところを狙ってくる。
「「「風よ、かの者らに大いなる災いを!風災害魔法!」」」
それに一部の魔法兵は面倒くさいことに合唱魔法的なことをしてくる。巨大な竜巻が地面から湧き上がるように
「俺のもとに来い!」
フラントの呼びかけに全員がフラントの身体に張り付き、フラントに支えられる。
「ぐ……!」
いくらフラントでも連続的に強力な攻撃が来るせいで疲労が溜まっているようだった。
「なんとか耐えてくれフラント!」
「無茶……言うな……!」
「神よ、かの者を癒したまえ、回復魔法!神よ、かの者を癒したまえ、回復魔法!」
クゴールも魔力が切れてきた。そうなったら完全に終わりだ。
(考えろ……何か手があるはず……)
そんなことを考えようとした時だった。
「フラント!あんたそれでも盾士なの!?もっとシャキッとしなさいよ!」
竜巻の外から声が聞こえる。
「ぐっ……その声はベルンか…?」
「耐えきってみせなさい!耐えたら私が回復してあげるから!」
「ふん……どこまでも……うるさい女だ。」
「フラント……帰りを待ってくれる女ってのはいいもんだぜ?」
「そう……だな…!」
その時、カエドスの宝盾の魔石が光り輝く。
「フラっち!?その魔石もしかして…!」
「うおおおおおおお!!完全防御魔法!!!」
フラントの周りに球体状の結界が現れる。その中は竜巻の中とは思えないほど空気が静かに流れており、まるで切り離された空間のようになっていた。
「これは…」
「あとは任せろ!」
風災害魔法の仕組みは理解してるので、集中して魔素に霧散していく。
「エルラルド!お前それができるなら早くやれよ!」
「うるせえな!集中力がいるんだよ!少なくともさっきみたいないつ吹き飛ばされるか分からない状態では無理だったさ!」
「り、リーダー!エルラルドさん!こんな時に喧嘩は_!」
「喧嘩?違うな。」
「これは信頼の証ってやつだ。」
ゆっくりと視界が晴れていく。後ろを見るとベルンとレイがいた。この時間の間俺たちを守ってくれたのはレイだったらしい。
「レイ!もう大丈夫だ!ぶっ放せ!」
「わかった!灼熱爆破魔法っ!!」
今の風災害魔法の魔素を吸収したのか、ほぼ溜めなしで放つ。突然の反撃に敵の前衛が崩れ始める。
「プロディ!エルラルド!クゴール!俺に続け!」
「「「了解!」」っす!」
「フラントはこっちに来なさい!回復してあげるから私とレイちゃんを守るのよ!」
「わかった。」
そうして反撃が始まる。カエドスとプロディが戦場をかき回し、俺が的確に隙をついていく。レイの灼熱爆破魔法で敵の陣営はボロボロ。こちらの義勇兵達もかなり失ったが、ここからは弱肉強食。どちらの兵が強いかの勝負になる。
「隙ありじゃあ!」
「甘いわ!」
「なんのこれしき!」
「通さねえ!」
「ぶっ殺してやるよ!」
「お前こそぶっ殺してやるよ!」
「死ねえ!」
「ガハッ!」
「さあ次はグハッ!」
「油断したな!」
殺して殺される。気を抜いたものから次々と脱落していき、お互いにその数を減らしていく。
そうして気づけばお互いの兵力が目に見えるぐらい少なくなっていた。
「ようやく……終わりが見えてきたか……」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…あと……少しだな……」
「あれが……大将っすか……」
今まで見えなかったこの軍団の総大将。あのクソ貴族にも似てそれでいて俺の弟子にも似てる王族。
「ウィズラム=スライト……スライト王国の第二王子です……」
そうクゴールが言うと、ウィズラムは素敵な笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がった。