163. 2万対25万
レイの魔法を合図に戦争が始まった。
「うっ…」
「大丈夫か?お前はちょっと休んでろ。」
常時回復魔法を掛けて寝かせてやる。
「ありがとう…」
「さて、じゃあここからは俺の出番だな。」
敵の先鋒部隊の約半数。大体千人が今のレイの魔法で消し飛んだ。
「俺のために死ね。」
様々な属性、特に混合魔法を使いながら撃退していく。
「レイはあれを半分にするのにこんなに疲れてるのに……お兄ちゃん全然疲れてないじゃん…」
「まあ減るのは集中力だけだしな。」
今ので先鋒部隊は全滅。もはや下の兵とか他の魔法使いもいらないレベルだ。まあ彼らは彼らで俺達の討ち漏らしを処理してくれてるんだろうが…
「それに俺は今まで多くの強敵と戦ってきたからな。あいつらに比べればあんなやつらはミジンコだ。」
上位の奴らには届かなくても下位の奴らにはちゃんと届く。天地消滅光線とかまではいらないレベルでこっちとしてもやりやすい。
「それを魔素化させてるから撃ち放題なんでしょ?お兄ちゃんなら一人だけで勝てそうだね…」
「だといいんだがな。」
今のは先鋒部隊。主力でもなければ学校長みたいなSランク級がいたわけでもない。学校長に勝つつもりで攻めてるんだからもちろんSランクが敵にもいるんだろう。
(そうなったときはレイかハク、もしくは学校長の力が必要だ。)
城壁を見渡してみると次々と魔法を撃つ様子が見られるので、他の方向からも攻めてきてるらしい。しっかりと対処しきれてるかは不明だが、突破されても中に学校長がいるなら大丈夫だろう。
「お兄ちゃん、もう大丈夫。ありがとう。」
「わかった。でも俺とお前は相性が悪い。まだお前の力は使わないでくれ。魔素を吸収されたら俺の魔法が腐るからな。」
「うん…」
「さ、いよいよ次鋒ってやつか?」
またゾロゾロと大群が迫ってくる。大体五万ってとこか。
「こりゃあ骨が折れるな…」
水災害魔法、風災害魔法、地災害魔法、炎災害魔法、雷電災害魔法、煉磊災害魔法、灼烈災害魔法、爆破災害魔法。
自分が使える様々な属性の災害魔法を放っていく。
「お、お兄ちゃん……化け物すぎ……」
気づいた時には次鋒部隊もいなくなっていた。
「あれ、俺なんかやっちゃいましたか?ってな。」
ここぞとばかりにテンプレ構文を言ってみる。意外と気持ちいい。
「あ、今なら人がゴミのようだの方が適切か?」
「何言ってんの馬鹿兄貴…」
レイからバ◯スを使われた。
「あと約二十万か……俺の集中力が持つかどうかも怪しいな…」
「………ねえお兄ちゃん、ちょっとおかしくない?」
「おかしい?」
「この国は魔法使いが多いでしょ?それなのに敵は連続して来ない。むしろ今みたいに休憩の時間すらある。対魔法使い軍と戦うなら悪手にも程があると思うんだけど…」
「なるほど…」
確かにそれはそうだ。最初は魔法で一気に全滅させられるのを恐れたから分断させてるのかと思っていたが、むしろ休憩ができる分次に備えやすくなっている。
「何かの作戦かもしれないな……だが全滅させないわけにはいかない。あっちもこの方向に戦力は集中して来るんだ。…………いや、違う。」
周りを見てみると、俺の大規模魔法に刺激されたように強力な魔法をバンバン放ってる。俺達は実質魔力無限なので気にしたことはなかったが、普通は魔力切れを起こしてしまうだろう。
「そうか……相手は魔力切れを狙ってるんだ。」
この国の人は優秀だが、決闘とかいう概念がある以上対集団戦には慣れてないんだろう。だから序盤に燃費の悪い技を考えなしに使ってしまう。1年や2年の連中ならまだしも、6年や卒業生にまでそういうやつがいる。
「レイ、お前はいつでも魔法が使えるようにしておけ。お前の出番も直に来るだろう。」
「わかった!」
作戦は向こうの勝ち、しかしこっちの兵も優秀なのに変わりはない。いつ決壊するかは分からないがまだ大丈夫だろう。
(なんて言った時、だいたい大丈夫じゃないんだよなぁ……)
そのフラグに応えるかのように残りの二十万の兵が一気に押し寄せてくる。
(ほら見ろ!くそ、変なこと考えるもんじゃねえな………にしても人手が足りなすぎる……)
「手の空いてる魔導兵はなるべくこっちに人員を割け!人手が足りない!騎兵は手薄になった所を補うように防衛しろ!」
俺の言う通りに人が動いていく。中には動かない者もいるがああいう奴らは仕方ない。俺の人望のなさを恨むだけだ。
しかし、学校長から戦場の指揮権は俺に委ねると言ってくれたので、思う存分使わせてもらうとしよう。
「俺は学校長代理を任されている!つまり動かない奴らは学校長の指示を背くということだ!ならばそいつらは俺たちの敵!容赦する必要はない!」
そう言うと動かなかった奴らが怯えたように動き始める。
「馬鹿兄貴……もっとやりようあるでしょ…」
「悪いな。人を動かすには恐怖が一番手っ取り早いもんで。」
俺はどこまで善人面しても悪人だ。だったら悪人は悪人らしくどこまでも無慈悲に支配していこう。
「炎爆破魔法!水雷電魔法!そして…」
魔素を練り上げて大軍用に広範囲になるようにして放つ。
「天地消滅光線っ!」