155. 灼熱爆破魔法
予約投稿ミスです、すみません。今日の分は21時にちゃんと出します。
「そこまでだ。」
「わかりました!」
「うっ……」
結局レイがほとんど力をできずに終わった。
「レイ、そんなんじゃ俺の役に立てないぞ。お前の実力はそんなもんじゃ…ってお前、震えてんのか?」
足がガクガクと震えて体を縮こませている。
「怖い……もしかしたら殺しちゃうかもって……殺しちゃったら……もう戻ってこないから……」
レイは俺たちの故郷が焼け落ちるところを直接見てしまった。恐らくそのトラウマが抜けないのだろう。
「それでも克服しないと魔法使いにはなれない。辛いのはわかる。精神もまだちゃんと落ち着けてないだろう。だが時間は待ってはくれないんだ。」
「ごめんなさい……」
「謝るな。とにかくお前の課題はわかったんだ。俺もお前のためにできることを色々と考えてみる。」
「師匠。一つ提案してもよろしいでしょうか?」
ずっと黙っていたグレイスが口を開く。普段は盲目的に俺の言うことを信じてるくせに珍しい。
「なんだ?」
「人が駄目なら魔物を相手すればいいんじゃないですか?」
(魔物ねえ……だがそれだと人相手になったときにまたこうなる可能性も高い。それに時間ももうあまりない…)
学校長の話を聞いてからもう5ヶ月ぐらい経っている。およそ半年後ってのの正確な時期はわからないが…正直いつ呼ばれるかわからない。
「レイ、なら俺と戦うぞ。」
「え…?」
「し、師匠が…?」
「俺相手なら好きなだけ魔法をぶっ放してもいい。遠慮なく掛かってこい。」
グレイスに審判を任せ、レイと距離を取る。
「さあ、お前の全力を俺に見せてくれ。」
しばらく震わせていた体を鼓舞するかのように膝を叩きつけ、なんとか杖を構える。
「すぅ………はぁ………行くよ!」
炎攻球魔法が放たれる。大きさはない代わりに速さがあるのだが、正直受けるまでもないので簡単に躱す。
「魔法、撃てたじゃねーか。」
「わかった……私、これが必要だったんだ…」
「ん?何か掴めたのか?」
「うん…もう大丈夫!」
俺別に何にもしてないんだが……まあ本人は満足そうなので良しとしよう。
「どうする?まだ続けるか?」
「馬鹿兄貴には絶対勝てない。でも、馬鹿兄貴に私の力を見て欲しい。だから続ける。そしていつか…パパとママの仇を討つ。」
黒い感情。あんなところまで俺に似なくていいっつうに……
「お前のとびっきりの一撃を見せてくれ。」
「わかってる。私は絶対に帝都を許さない…!そのためにもこんなところで躓いちゃだめ…!」
これだ…周りの魔素がレイに集まっていき、魔力へと変換されていく。
つまり俺の魔素魔法をも封じれる可能性があるというだけじゃなく、自分もどんどん強化されていく。
(相性が悪いってことなんだろうな。だが、妹に負ける兄じゃあ示しがつかんだろ。)
「すうぅぅぅ…………はあぁぁぁ…………」
周りの魔素が次々と炎魔法に変換されていく。空気を燃やし熱気が直接肺に入り不快だ。
(チッ……グレイス……)
既に気絶してしまったグレイスに水厚壁魔法を掛けてやる。これで死ぬことはないだろう。
(妹の成長なんだ。兄としてしっかりと受け止めてやらないとな。)
深呼吸を繰り返しながらどんどんと熱を帯びていく。隙だらけではあるのだが、それを邪魔するのはご法度。そもそも、そんなに貪欲に勝つ必要もない勝負だからな。
「行くよ……お兄ちゃん…!」
彼女の頭上に巨大な炎球が形成されていく。
(炎攻球魔法なんてものじゃない。炎災害魔法、いやそれ以上だ…!)
あまりの光景に興奮し、思わず息を呑む。
「さあ来てくれ……俺にその力を味あわせてくれ…!」
「いっけええええぇぇぇ!!!灼熱爆破魔法っ!!!」
「何っ!?」
(その魔法は確か…!)
考える暇もなく、みるみる俺に近づいてくる。炎が俺を食おうとしてるかのように灼熱が迫る。
水防御魔法を張ったが、蒸発したのか魔素を吸収したのかすぐに消滅する。
「チィッ…!」
(水魔法を次々唱えてもだめ。そもそも魔素が上手く機能しない。この周りに漂う熱気が魔素になってるんだろう。熱を冷やして自分のものにするという手間をかけるほどの余裕はない。いや何受け流そうとしてんだよ。全力には全力で。挑戦者相手に逃げたりなんてできるわけねえだろ。)
手を前にかざし、全力を込める。
「天地消滅光線っ!!」
二つの巨大な質量がぶつかり合う。衝撃波がものすごいことになっており、俺ですら立っているのがやっとのレベル。レイやグレイスは吹き飛んでいるだろう。
(互角……マールですら受け止めきれなかったのに互角なのか………レイ…お前は一体………)
突如、灼熱爆破魔法が膨張する。
(まずい……爆破魔法の一部なら…!)
俺の天地消滅光線を飲み込むように膨れ上がり、さらに膨張する。
「ぐっ…!四属性防御魔法!四属性厚壁魔法!フォース…」
ズゴオオオオオォォォォォォォン!!!!!!
「ぐっ……ぐはっ……」
尋常じゃない衝撃波が巻き起こり、離れた木に激突してもまだなお勢いは収まらず、むしろ木すら貫通して吹き飛ばされる。
「魔気解放、念動魔法、身体強化魔法_」
しばらくしてようやく衝撃波が収まったようだ。
「り、常時回復魔法……」