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オタクが転生したので異世界でもオタクになります  作者: 枝豆 糵
第四章:冒険者編
141/229

138. 俺はお前を

「ん……」

「エル!」

「ぐわっ!」


 目覚めたお腹にダイレクトアタック……


「お兄ちゃん!大丈夫?」

「大丈夫なわけないだろ……」


 魔力切れの身体に人が乗っかってるんだぞ……


「マール様…ご主人様がお困りですよ……?」

「やだ。エル離さないもん。」


 ドキッ…


「ま、マール…?」

「私はずっとこうしてたかった……こうしてエルを抱きしめたかったの…」


 さらに強く抱きしめられる。


「ま、マール姉……」

「ば……お、お前な……//」


 先ほどから胸の高まりが収まらない……昔感じたあの感情が戻ってる。


「妹様、少し席を外しましょうか。」

「ハク姉…?でもお兄ちゃんは……」

「ご主人様なら大丈夫ですよ。行きましょう。私もご主人様から魔法を教わったので、もしかしたら妹様にも教えられるかもしれませんよ?」


 ハクは察したのか、そう言ってレイを連れて降りていった。


「ねえエル……エルは、まだ私のこと好き…?」

「……そりゃあ、好きに決まってるだろ。お前のことを考えなかった日はない。」

「じゃあ私と…」

「それはできない。」


 マールの言葉を遮る。


「え……」

「マールの気持ちは気づいていた。流石に俺もそこまで鈍感じゃない。俺もマールが好きだ。」

「なら!」

「それでも、俺は…お前と婚約するのは難しい。」

「……」

「……」


 マールが俺から離れ、二人の間に静寂が流れる。

 その静寂を先に断ち切ったのはマールだった。


「り、理由を教えてもらってもいい?」

「………まだ、お前はここに来て短いから知らないかもしれないんだが………俺が、俺が世間で何と呼ばれてるか…知ってるか?」

「エルが?ううん、知らない…」

「だろうな……」


(知ってたら、ここまで好意を向けてくれないだろう。ハクやあいつらみたいな物好きでもない限りな…)


「教えてもらっても、いい?」

「………表向きには『不幸の神童』。影では…」


 一泊を置いて告げる。


「『死神』。」

「しに…がみ……?」


「俺が関わった人間が次々と死んでいくことから付けられた二つ名らしい。最初のパーティーメンバー、ミレイヤ、アッシュ村とユーグリル王国の人たち……ハクだって失いかけたし、お前やレイも失ったと思っていた。」

「エル……」

「俺はもう、関わってきた人間を不幸な目に合わせたくないんだ。お前も、レイも…ハクだって本当は関わらせたくない。俺と関わったやつは不幸になる。俺から心を開けば開くほど不幸な目に遭いやすい。だから、俺に深く干渉しちゃダメなんだよ……」


 守るために突き放す。一見矛盾してるけど、それが正しいんだ。

 俺は深く干渉せずに守れるものを守れるならそれで_


「そしたらエルが一人になるよ…?」

「………俺はいいんだよ、一人でも。慣れてるから…」

「エルは誰が守るの…?」

「俺は守られなくても別に…」


 言い終わる前にマールに抱きしめられる。


「マール…?」

「あの時のエルを見たあとだと、誰かが守ってあげないとダメだと思うんだけど…?」

「俺はもうああならない。お前らまで失ったら俺は今度こそ自死を選ぶだろうし、そこまで堕ちることは…」


 バチン!


「ふざけないで!一人で生きていけるわけないでしょ!」


 平手打ちされた頬がジンジンと痛む。ここまでの痛みは人生で初めてレベルだ。


「でも、お前を失いたくは__」

「なら守ってよ!私をエルの側で、一番近くに置いてよ!私だってエルを守るから!だから……だから、深い関係になろう?」

「マール……」

「それに、私だってエルほどじゃないかもだけど強かったでしょ?もうエルに守られるだけの存在じゃないんだから…ね?」

「何でそこまで……」


 ここまで好かれてる理由がわからない。昔の事がずっと残ってるというわけではないだろう。


「エルが好きだから。それ以外に理由なんてないよ。」


 涙を浮かべながらも精一杯の笑顔だ。裏表のない、屈託の笑顔だ。


(ほんと、お前ってやつは……成長してるようで全然成長してねえじゃねーか。)


 泣き虫で、か弱くて、そのくせして芯が強くて、しっかり者で、自分より他人が第一で、努力家で、可愛くて、かっこよくて、俺のことが大好きで。


「不幸になるかもしれないぞ?」

「二人で支え合っていけば大丈夫。」

「世間からは煙たがられてるぞ?」

「私はずっとエルの味方。」

「俺は、昔と違って愛想悪くなったぞ?」

「大人っぽくてかっこよくなった。」

「俺は………『死神』だぞ?」

「なら私が『女神』になる。」

「俺が幸せになる権利なんて……」

「世の中に幸せになっちゃいけない人なんて存在しないよ。」

「……」


 ほんと、俺は周りに恵まれてるんだな。


「まだ不安なことある?」


 お前がいてくれるなら、不安なんてあるわけないだろ……


「俺はお前が好きだ。昔からずっと、何なら今のほうが好きだ。」

「私も。昔からずっとエルのこと好きだったけど、今のエルの方が好き。」


 キザったらしい台詞なのはわかるけど、今ぐらいかっこつけねえとな。


「俺はお前を愛してる。お前の左腕になって一生支えていきたい。」

「私も、私も愛してる!エルの心の支えになれるような人になる!」

「マール。」

「エル……っ!?」


 誓いの口づけ。


 一生離さないし、失わせない。マールは俺のもの。寿命を迎えるまで、ずっと俺のものだ。


「エル……//」

「俺と結婚してくれ。」

「うん、うん!エルと結婚する!」


 今度はマールから求めてくる。俺の首の後ろに手を回してガシッと抑えつけられる。


(ミレイヤが見たら、死ぬほど嫉妬されそうだな。)


 ミレイヤ、見守っててくれ。お前の分までマールを幸せにするから。


「エルぅ……好きぃ……//」


 舌まで入れてきやがって……悪い気はしないがな。

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