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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第五十一話「正義とは…」

第五十一話 「正義とは…」

(主人公 シルバー最終話)


バラレンジャーの解散から数か月が経った。でもボクはまだ答えが出せていない…。正義とはなんだ?ボクにとっての正義とは…



 ボクは弁護士になるために改めて大学へ行くことに決めた。入学も決まり、それまで暇を持て余していたボクは近所の公園へ行った。そして、ベンチに座り、桜をなんとなく眺めていた。


虎羽「………光らなくなっちゃったな……」


 ボクはブレスレットを掲げ、陽の光に当ててみる。ピカピカに輝いていたブレスレットも一年が経ち、汚れや熱によって輝きは鈍くなっていた。


虎羽「まるでボクみたいだな………」


 正しい行いを実行し続けてきたつもりだったが、バラレンジャーと関わり、色々な出来事を乗り越え、兄さんと関わってそれが分からなくなった。これまでの行いは正しかったのか、

今の行いは正しいのか、ボクの考えは正しいのか…。



 ボクはあの時のことを思い出した。銀河さんに言われ、飛行物体を壊し、より多くの人間を救う可能性を取るか、爆発を見届けて確実に未来を救うか、という決断を迫られた時のことだ。

 あの決断を一人でしていたらどうなっていたのだろうか…。たぶんボクは…未来を選んだはずだ…。未来人が正しいと言うのなら、そちらの方が正しいと思うからだ。

 ボク達は力を持っているだけの存在…いわば執行者だ。正義の執行者。

弱肉強食の世界で必ず勝つことが出来てしまうボク達は運命や正義を捻じ曲げてしまう…。だから正義に従わなければならない…。正しいから従うのではない。正義だから従うのだ。…ボクはそんな考えだ…。…でも、ボクはあの時『可能性』を選んだ…。『正しい正義』を探したんだ…。


虎羽「………正しい正義を…探しに………」


 ボクはその答えが、やっぱり法律の中にあるのではないかと思っている。それを確かめるためにも、本当に正しいことを考えるためにも、ボクはこの道を進む。

 そして、その答えが出るまでは正義の執行はお預けだ。それまでボクは審査し続ける。何が正しいのかを学び、考え、経験する。


 今でも、絶対の力を持つ者の判断は絶対正義でなければならないという考えは変わっていない。バラレンジャーの中で明確に罪を犯していたのが兄さんだっただけで、他の誰かが道を外れれば見逃すつもりはない。

ボクらの力が必要になる時がまた来るかもしれない。その可能性がある限りボクらの『ヒーロー』としての役割は続く。ボクはその役割が終わるその日まで常に正しい行いをし、絶対の力を持つ責任を果たす。そして、バラレンジャーの皆が道を間違えないように監視し、議論し、吟味し、正義を哲学し続ける。それがボクの道…兄さんとは違う正義の在り方、シルバーローズの在り方だ。


虎羽「…………うん……これでいい……。ボクの考えは…これでいい…。」


 自分の正義に結論を出し、桜を見て「ふぅ…」と、一息つく。そして、もう一度ブレスレットを掲げて見る。


虎羽「………やっぱり…ボクらしいのかもな……」


 正義と悪。白と黒。そうやって二元化させながら世の中を判断し、生きてきた。それが正しいことだと思っていた。でも、白に近い黒を見たり、黒に近い白を見たりした。この世界は白とも黒とも言えないことだって沢山ある。そして、ボクももう白でも黒でもなくなってしまった…。

 絶対化していたものが崩れ、正義を断言することはもうできない。分からないことも増え、純粋さを失ってしまったかもしれない。そう…このブレスレットの輝きの質が落ちてしまったように…。でも…輝きを失ったわけではない。汚れや日焼けはそれと『共に歩んだ証』でもある。味が出ていいじゃないか。

 ボクはこの、銀のブレスレットに自分の正義を投影した。迷ってしまってもまた、己の輝きを思い出せるように。そして、自分がシルバーローズであることを思い出すために。そして…家族の繋がりと、共に歩むために。

…あっ…あと、もう一つあったんだった。



母「合格おめでとう、こーちゃん!」

虎羽「ありがとう母さん。」

父「さすがうちの息子だ!父さんは鼻が高いよ。こんなに親孝行な息子がいるか?なぁ母さん!」

母「ええ、ほんと!こーちゃんもりゅーちゃんも本当にいい子で、お母さん嬉しいわ。」

虎羽「言い過ぎだって…まぁボクも2人の間に生まれて良かったって思ってるけど…」

父・母「っ!!!」

母「こーちゃん…!!」

虎羽「ちょっ!恥ずかしいって…」

父「うっ…父さん…こんなに嬉しいのは人生で初めてだ…!」

母「お父さん、入学もまだなのにもう泣くの?」

父「ずずっ…そうだったな…この涙は卒業まで取っておこうか…!」

母「そうだ!りゅーちゃんも呼んで一緒にお祝いしなきゃ!」

父「おお!そうだな!すぐに連絡しよう!」

虎羽「兄さんも呼ぶの?…まぁいいんだけど、兄さん、雪さんとラブラブだからわざわざ呼ばなくてもいいんじゃない?」

父「おお!そうだ、雪ちゃんも一緒に呼ばなきゃだったな!」

母「そうね!あの子達進展はあったのかしら…!」

虎羽「もう…こういうのすぐ張り切るんだから……ふっ…」


 呆れたフリをしながらもやっぱり内心では嬉しいんだけどね。兄さんとの会話も回数を重ねるにつれて自然になっていった。隔たりはなくなったと感じる。でも、雪さんも一緒となるとまだ慣れないな。楽しいからいいけど。


父「…にしても虎羽が法律の道へ行くとはねぇ…」

虎羽「なに、前から法律は勉強してたでしょ?」

父「いや…虎羽はもっとこう…保育士とか、教師とかやるかと思ってたな…」

虎羽「え~一番似合わないよ…口うるさい先生として嫌われるだけだよ。」

母「そんなことないわよ。優しい先生だってきっと慕われるわ。」

虎羽「……そういえば前もそんなこと言ってたよね?父さんと母さんだけだよ?ボクのことを優しいだなんだって言う人なんて…」


 そう…ずっとそうだった…ルールや法律を遵守じゅんしゅするボクは誰かを咎めることが多かった。嫌われ、疎まれ続けたが正しいと信じた己の正義を貫き通した。能力を手に入れてからその考えはさらに強くなった。

 強い想いだった。だからこそ、犠牲を払ってでも正義を貫こうとした。正義のためなら残酷にもなる。嫌われ者になっても構わない。そんな考えを持ったボクは、周りからの評価もそんな感じだ。残酷な嫌われ者。それがボクに対する評価だ。ボクもそう思う。でも、父さんと母さんはずっと前から「優しい」と言い続けた。それがずっと疑問だった。


母「何言ってるの~こーちゃんはずっと優しい子じゃない。法律を学ぶのだって、他の人のためでしょ?」

虎羽「……違うよ。ボクは自分にとって、本当に正しい正義を見つけたいだけだよ。他の人のことなんて…別に考えてないよ。」

父「…正しいことを見つけるのはなんのためだ?」

虎羽「え…?」

母「こーちゃんあの時のこと覚えてない?友達がいじめられていたのを見つけて、助けてあげたって話してくれた時のこと…」



「かせよ!よこせよ!」

「う…あっ!」

「あっちで遊ぼうぜ!」

「!……こ、こらー!」

「なんだよ…」

「今、横取りしただろ!ダメだよ!」

「うるせえよ!」

「うっ…貸してって言ったのか!?力づくで取ったらダメなんだよ!?返せ!」

「なんだよお前!」




「ぐすっ……」

「…はい、これ…」

「あっ!…ぼくのおもちゃ…」

「…取り返してきた…!」

「あ…ありがとう…!」

「一緒に遊んでいい?」

「いいよ!」




「おかーさん…今日、ボク…いいことしたよ。」

「いいこと?何をしたの?」

「…おもちゃを横取りしてるの見たから、取り返してあげたんだ。その後一緒に遊んだんだよー。」

「そっかぁ…偉いね。善いことしたね!」

「うん!ありがとうって言われたんだよー。…いいことするって…いいことだね!」

「…そうね…こーちゃんは誰かのために正しい力を使える、優しい子だね…!」

「正しい…力…?正しいってなに?」

「…それは、こーちゃんの方がよく知っているわ。」

「ふ~ん………ねえ…正しいことをしたらおかーさんは嬉しい?」

「もちろん!」

「!そっか…おとーさんも?」

「お父さんも!」

「そっか…」

「その、助けてあげたお友達も喜んでいたんでしょ?」

「うん。」

「……………」

「……………ボク…正しいことしたい…」

「…どうして?」

「……おとーさんもおかーさんも、みんな喜んでくれるから!」

「そう…やっぱり、こーちゃんは優しい子ね…。そうだ!そんな優しくて良い子にはご褒美をあげなくちゃ!好きなお菓子買っていいわよ!」

「えっ!ほんとに!?」

「うん!りゅーちゃんには内緒でね…?」

「…いや!お兄ちゃんにもあげる!二人で食べられるの買っていい?」

「っ!ふふっ…いいわよ…!」



虎羽「……あぁ…そんなこともあったね…」

母「こーちゃんが正しいことをしたいって思ったきっかけは『誰かのため』にいいことをしたかったからでしょう?」

虎羽「………」

父「父さん、あの話を母さんから聞いた時本当に嬉しかったぞ。それからも虎羽は勉強も運動も頑張って、いつだって自慢の息子だった。…でもな、本当に嬉しかったのは成績が良かったことでも、良い結果が出たことでもないんだ。」

虎羽「え…?」

父「父さんや母さん、学校の皆や先生達のために何かをしようとしてくれたから嬉しかったんだ。」

母「そうよ。りゅーちゃんがいなくなった時、その優しさに何度助けられたか…もう、数えきれないわ…。こーちゃんがいてくれたから、私達はあの日々を乗り切れたのよ。」

虎羽「……そっ……っか………そっか……そうだったね…。」


 そういえばそうだった。こんなにも根源にあるものを忘れていたなんて…一番近くにあったのに、気づけなかったなんて。


(虎羽…お前に聞きたいことがある……お前が護りたいものはなんだ?…お前がまもりたいのは法律だけなのか?………ボクが守っているのは今も昔も、己の正義だ…!そして…ボクが護りたいのは…正義の先にあるのは、平和な人々だ!!)



虎羽「……そうだったよ。ボクは善いことをすれば誰もが喜んでくれると思ったから正義に憧れたんだ。父さん、母さん…そして兄さんが自慢してくれるような…そんな立派な家族になって喜ばせたいと思っていたんだ。」

父「はははっ、もう充分過ぎるほど親孝行してもらったけどな!」

母「ふふふっ、そうね。」

虎羽「いや!まだまだ終わらないよ。ボクのこの想いは決して消えることはないからね。二人が生きている限りずっと、ずっと親孝行し続けるよ。」

父「虎羽…!」

母「こーちゃん…!!」

虎羽「父さん、母さん、ありがとう。二人の間に生まれてこられて本当に良かった。二人に育てられて本当に良かった。この気持ちを持てたのも、それに気づけたのも…家族のおかげだよ…。もう二度と忘れないようにこのブレスレットに誓うよ…誰かのための正義を…!」



 ボクはこのブレスレットを見ると思い出す。己の正義の在り方を。家族の繋がりと共にあることを。誰かを想う熱い魂があることを。

 熱い魂がある限り、正義の炎が消えることは決してない。そして、自分を見失わない限りその魂が輝きを失うことも決してない。

 白黒つけることが出来ず、兄やバレレンジャーと関わる中で色は混ざり合ってしまった。さらには炎に焼かれ光は鈍くなった。しかしそれでも輝きを失ったわけではない、灰になってしまったわけではない。始まりとは違うがそれこそが虎羽のヒーローの色で、進むべき道の色だ。



正義の哲学のその先を確かめるため、桜の中を歩いて往く。

重厚な銀色の輝きを左手に宿して。

その輝きがある限り、忘れることはない。

あの日目覚めた『ヒーロー』としての優しさを。


虎羽「さて、そろそろ帰ろうか。」


温かな日差しの中、ブレスレットに視線を落とす。

拳を握りしめ、熱誠な魂で正義の炎を滾らせる。


虎羽「………さぁ…これからだ…!」


雲を貫き地上に届く陽の光…その力強い輝きの下で、そのヒーローもまた力強く前に進む。銀色の輝きと共に…。



シルバーローズの物語 終了


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