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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第二十四話「神の力を貰った俺は異世界で敵なし」

第二十四話 「神の力を貰った俺は異世界で敵なし」

(主人公 ピンク1)

紫雲「う……う~ん……こ、ここは…?」

??「目が覚めたか、少年。」

紫雲「誰だお前?」

神「わたしは……神だ。お前はなぜここにいるのか分かるか?」

紫雲「え……」


そう言われ、紫雲はここに来る前のことを思い出す…。


*


紫雲「なぁ、最ハレ(異世界に転生して最強能力でハーレムを作った件)の最新刊読んだか? めっちゃ面白くね?」

友人A「ああ、まだ読んでねーや。今度貸してくんね?」

友人B「何それ?どんな話?」

紫雲「異世界に転生した主人公がチート能力で無双して女の子にモテまくるって話よ」

友人B「へー」

友人A「いーよなー異世界…リアルなんてクソゲーだよな」

紫雲「なー…。俺もこんな現実世界リアルから抜け出して無双してー」

友人B「じゃあトラックにでも轢かれてこいよww」

紫雲「トラックに轢かれて異世界に行けんなら行きてーよ…」

友人A「疲れてんなー。また母ちゃんになんか言われたか?」

紫雲「はぁー。もう毎日うぜーんだよなぁ。ゲームするなだの、勉強しろだの…うるせーっつの。こないだの数学も赤点だったしよぉ。最近、全然良いことねぇよ…」

友人B「こんな本読んでっから赤点だったんだろ。勉強しろよww」

友人A「そりゃあ勉強しろって言われますわなー」

紫雲「うるせーなぁ。だまってろ」

友人A「まーうちも似たようなもんよ…。はーなんか、天才になって女の子にモテモテになるチートとか落ちてねぇのかな…」

友人B「まー確かにリアルってつまんねーよな。なんか面白れぇことねーのかなー」

紫雲「なら最ハレ見ろよ。おもしれーぞ?」

友人B「いや、そーゆーんじゃねぇんだよ…」

紫雲「じゃあなんだよ…」

友人B「女の子連れてこいってんだよぉ~!」

友人A「やっぱそれだよな!リアルがクソなのはモテないからだ!」

友人B「なー!お前もそう思うだろ?」

紫雲「リアルでモテてもな…やっぱこっち(異世界)の美少女にモテないと!」

「「…………」」

友人A「こいつこういうとこあるよな」

友人B「ああ。しらけるわ」

紫雲「なんでだよっ!」


紫雲はほぼ毎日、友人2人とくだらない話をしていた。頑張っていることは特になく、努力をしていない割に結果に文句を言い、なんとなくで学校に行き、なんの変化も成長もないまま毎日を消化し続ける日々だった。

そんなある日、退屈な世界に飽き飽きしていた紫雲は友人2人と万引きをしようと企んだ。


*


紫雲「ぜってぇ大丈夫だって。今なら店員もすくねぇし、お前らが隠せばカメラにも映らねぇって。」

友人A「えー。さすがに万引きはやばくねぇか?」

友人B「そうだよ。やめようぜ。」

紫雲「なんだよお前ら。刺激が欲しいっつってたのはお前らも一緒だろ?やろうぜ。ぜってぇバレねぇから」

友人A「うーーん刺激ってこういう刺激か…?」

紫雲「今時、ちょっと悪いくらいじゃねーとモテねぇんだよ」

友人B「そうだよ!結局女とヤリまくってる男ってそういうやつじゃねーかよ!オレらも男になろうぜ!」

友人A「んーーまぁ一回ならやってみっか…」


 友人Aは渋りながらも結局紫雲達に流され、万引きの手伝いをしてしまった。バッグに入れるまでは良かったが、店を出ようとしたその時。

店員「ちょっと君たち待ちなさい!」

三人「やべっ」

紫雲「逃げろ!」


三人は散り散りになって逃げた。なんとか店員を振り切って安心していた紫雲だったが、手元にある盗品を見てふと我に返った。紫雲は「自分はまずいことをしてしまったのではないか?」と急に怖くなり、冷や汗をかいた。盗品の入ったバッグを持ちながら異常なほどに周囲の目を警戒していた。紫雲はこの時、目に映る全ての人間が自分のしたことを知っているのではないかと疑ってしまうほど疑心暗鬼になっていた。

頭が真っ白な状態で歩いていると自分が盗みを働いた店の近くに来てしまっていた。家とは反対方向に逃げた後、帰宅しようと店の近くのいつも通っている道を無意識に歩いていたのだ。店の近くに停まっているパトカーを見てさらに気が動転し、「早くこの場から立ち去らなければいけない」と考えた紫雲は真っ先に道路に飛び出し、反対側にある道へ行こうとした。

ドンッ!

と、鈍い音と共に紫雲は吹き飛ばされ意識を失った。


*


紫雲「そうだ…俺は万引きしたあと逃げようとしてトラックに轢かれたんだ…」

神「そうだ。そして、ここは現世と冥界の狭間だ。今のお前には二つの道がある。一つはここに来たことを忘れ、現世に帰ること。現実世界のお前は病室で眠っている。二つ目は力を与えられて異世界に行くことだ。どちらを選ぶ?」

紫雲「異世界に行けんの?しかもチート能力付き!?」

神「貴様は異世界に行く道を選ぶのか。いいのか?もう元の世界には戻れないかもしれないぞ。」

紫雲「いいに決まってんじゃん!あんな世界生きる価値ねーよ。異世界に連れてってくれよ!」

神「分かった。貴様には無敵の力を与えよう。力を使いこなせるようになるまで元の世界に戻ることは許さない…せいぜい頑張るんだな…」

その言葉を聞くと紫雲の意識は遠のき、次に目覚めた時には異世界へと転生していた。


*


謎の女性「……ですか…大丈夫ですか?」

声を掛けられ、ゆっくりと体を起こす。

紫雲「ここは…?」

まぶたを開けるとそこには見知らぬ女性が屈み込んでいた。女性は不安そうな顔で紫雲に話しかけた。

謎の女性「こんな森の中で寝るなんて危ないですよ?モンスターに襲われたらどうするつもりだったんです?」

自分が森にいることも、モンスターがなんなのかもわからない紫雲はポカンとしていた。

謎の女性「でも、何ともないみたいで良かったですぅ。」

女性は胸をなでおろし、紫雲の隣に座った。

紫雲「あの…ここはどこなんですか?」

謎の女性「どこって“アスファリアの森”だけど。それも知らないで来たの?もしかして他の村から来たの?」

紫雲「まぁそんな感じです。ええと…あなたは…」

カイン「ああっ!私の名前はカイン。ここのすぐ近くにあるシナト村に住んでるの。…あなたは?」

紫雲「俺の名前は紫雲です。住んでたとこは…」

カイン「シウンね。…場所は?わからないの?」

紫雲「うん…ちょっとわけありで…そういえば今日寝る場所もないんだよ…どうしよ…」

カイン「ええ!?ど、どういうこと…!?」

カイン(…っ!もしかしてこの子、他の村から逃げてきたとか記憶喪失とか…?…でもなんにせよ複雑な事情を持っているのかも…。もしかして行く当てもないからこんな場所で寝てたのかな…)

カイン「ぶつぶつぶつ……」

紫雲(…そら身一つで異世界転生したらこうなるよな……家も金もないし…ゲームも無いじゃん!!うわぁ……なんも考えてなかったな……てかこれ結構なハードモードじゃね?俺、リアルがクソだかっらって異世界に来たんだけどこっちもクソか…?)

「……行くとこがないなら、私の家に来る?」

紫雲「マジで!?いいの!?」

カイン「うん!困っている人は放っておけないし!とりあえず私が住んでる村まで案内するよ!」

紫雲「ありがとうございます!」 (この子めっちゃ良い子じゃん!可愛いし…お、おっぱいも大きいな…マジラッキーだわ。異世界最高―!)


*


紫雲は歩きながら、ふとカインを見てみた。

紫雲(いきなりのことが多すぎて面食らっていたけど、落ち着いて見るとすごい恰好しているな…よく見たら刀も持ってる…)

「あの…その武器は一体?」

カイン「あ、これ? えへへ…まだギルドの支給品使ってるんだよね…。」

と彼女は腰に付けた短刀を指差しながらはにかむ。

紫雲「…ギル…ド…?」

紫雲が聞きたかったのは何故女の子が武装しているのかだったが、また分からない単語が出てきて困惑してしまった。

カイン「あ!ごめんね。もしかして他の村だとこのシステムじゃないのかなぁ?ん-と…私はハンターで、ギルドのクエストを受けてこの森に来たの。でも、私まだまだ見習いだから支給品の武器しか持ってないの。あ!ごめんね。私説明下手で…。わかったかなぁ?」

紫雲「ん~…ハンターってなんですか?」

カイン「ハンターはモンスターを狩ったり、薬とかに使う植物を採取したりする人だよ。ランクが1から6まであって、1は見習い。研修を受けてすぐのハンター。ランク2は3つ以上の採集クエストをクリアするとなれるの。モンスターがほとんどでない場所でなら一人でクエストに行けるんだー。ちなみに私はランク2だよ。」

紫雲「へ~。3の人は?」

カイン「ランク3になるには小型モンスターの狩猟ができないとなの。ランク3のクエストを一定数こなすとランク4になれるの。それ以上のことはよく知らないんだけどランク5だと大型モンスターの狩猟が認められて、6になるとそれが一人で行けるようになるらしいの。」

紫雲「へ~。大型モンスターを狩るのにそんなにランクをあげないといけないんだ。」

カイン「あ、当たり前だよぉ!大型モンスターってすっごく危険なんだよ!?」

紫雲「へ、へぇそうなんだ…。見たことあるの?」

カイン「え…み、見たことは……一度だけ……」

紫雲「どんなモンスターだったの?」

カイン「……私が見たのはあの“ユグドラグン”だよ…」

紫雲「へ?ユグ…ドラグン?」

カイン「まさか知らないの!?全ての生物の頂点に君臨し続ける神竜、ユグドラグンだよ!?」

紫雲「ご、ごめん…知らない…」

カイン「あっ、ごめんなさい。大きな声出しちゃって…」

紫雲「…その、ユグドラグンってのはどんなやつなの?」

カイン「…山のように大きな体で、その鱗は鋼よりも堅い。一度の咆哮で全ての生物に命令でき、逆らう者は必ず殺す…そう言い伝えられているの。」

紫雲「ふ~ん……そいつが大ボスってことか…」

カイン「?」

紫雲「じゃ、いつか俺がそいつを狩るかなぁー!そしたら大英雄として皆にちやほやされるかも…」

カイン「っ!バカなこと言わないで!!」

紫雲「…!!」

カイン「あなたがどうしてユグドラグンのことも知らないのか分からないけど、冗談でもそんなことを言うのは止めて!」


カインは足を止め、今度はハッキリと怒りの表情を浮かべて紫雲に言い放つ。


紫雲「え…俺そんなにマズいこと言ったかな?」

カイン「…あなたふざけてるの?もしかして私のこと知っててそんなこと言ってるの?…だったら許さない…!」

紫雲「ご、ごめん!本当になんのことかわからない!ふざけてない!ちょっと調子のってたかもしんないけど………」

カイン「……本当に何も知らないの?」

紫雲「…うん……この世界のこと何も知らないんだ……ついさっき異世界転生したばっかで……」

カイン「?……本当に知らないのね……」

紫雲「…………」

カイン「……私のお父さんはランク7になった初めてのハンターだったの。」

紫雲「!」

カイン「父さんはとっても強くて…嵐をも自在に操ると言われたあの“クウラビオン”も一人で倒すほどだった。その圧倒的な狩猟センスから、父さんはランク6以上だと認められ始めてのランク7ハンターになったの。……でも、そんな父さんの前にユグドラグンが現れたの……」

紫雲「………」

カイン「しばらく見つめ合ったあと、二人は移動して…たぶん場所を移して戦っていたんだと思う…そして…戻ってきたのはユグドラグンだった…。ユグドラグンは私達の村の中心に……っ!…父さんの頭だけをっ!置いていったの!!」

紫雲「えっ!!!」


カインの眼からは涙がこぼれる。


カイン「だからっ!とっても強くてとってもすごいハンターのお父さんでも倒せなかったんだから…もう絶対に勝てないの!…倒すとか戦うとか…バカなこと言わないでっ…!!」

紫雲(……ヤバい…女の子泣かせちゃった……ここで「それでも俺がなんとかしてみせる!」とか言えたらカッコイイんだろうけど…貰った力がどんくらいチートなのかわからないからなぁ……なんかモンスターも強そうだし自信なくなってきたな……命がけで戦うってよく考えたら嫌だな…死ぬかもしれないのに戦いに行くなんてやめよう……)

カイン「ぐすっ……ごめんね………」

紫雲「いや……こっちこそ、ごめん……」

カイン「…………」

紫雲「…………」

カイン「…もう大丈夫……行こうか……」

紫雲「……うん……」


 その後、あまり会話もないままカインの住む村まで向かった。


*


~シナト村~

カイン「家に行く前にクエストの報告をしなきゃなんだけどいいかな?」

紫雲「いいよ」

高い壁に囲まれた街へと入り、少し歩いたところに大きな集会所のような場所があった。カインはそこに入り、受付嬢と話しながら報酬を受け取っていた。紫雲は入口のあたりで待っていたが、時折カインと受付嬢がこちらを見て話していた。紫雲は不法入国で訴えられるのかと心配していたが、見た感じ茶化されていただけのようだったので一先ず安心した。

カイン「お待たせ。じゃ、家に行こっか!」


*


紫雲「ずいぶん嬉しそうだね。そんなに良い物貰ったの?」

カインは出会ったばかりの紫雲が見ても上機嫌だと分かるほど嬉しそうに報酬の入った袋を抱えて歩いていた。

カイン「そうなの!実は今回の報酬で貰った素材を使うと新しい装備が作れるの!やっと自分の装備が一式揃うから嬉しくて!」

カインは満面の笑みで語った。もう先程の涙の跡も消えており、紫雲は安心した。

紫雲「分かるよ!何度もクエスト行って、素材集めて、やっと作った装備にはテンション上がるよな!」

カイン「分かるかー、シウン君!」

目をキラキラと輝かせながら語り合う二人であった。武具屋に素材を預け、カインの家へと向かった。


*


カイン「ただいま!」

カインがドアを開けるとすぐに母親らしき人物が目に入った。

カインの母「おかえり…。その人は?」

見知らぬ男がいることに気づいた母親は目を丸くしながら言った。

カイン「かくかくしかじかでー」

身寄りがいないこと、別世界から来たことなどを話すと

カインの母「そうかい、そうかい。ならずっと家にいればいいよ!ちょうど男手が欲しかったところだしね!」

と優しく迎え入れてくれた。明るく優しいのは親子揃ってのようだと、紫雲は感じた。


*


次の日から、紫雲はカインの手伝いをしにクエストに行くようになった。カインはランクが低いので、モンスターとの遭遇が滅多にない採取クエストをしていた。紫雲も支給品の片手剣を持ったが使うことはなかった。力を持っているということを忘れかけていたある日…

カイン「ねぇ!私の装備がやっとできたらしいの!一緒に行かない?」

とカインに誘われ、武具屋にやってきた二人。

自分で採鉱、採取した素材で作られた武具を装着し興奮しているカイン。


カイン「どう? いいでしょー?」

紫雲「うん!すごくいいよ!」

誇らしげなカインを優しく見守っていた紫雲だったが

男A「見ろよ。あんなしょぼい装備ではしゃいでるやつがいるぜ。」

男B「ほんとだ。あんな弱い装備ただでもいらねぇぜ!」

男C「今時、ちょっと金出せばランク3の装備くらいすぐ手に入んのになぁ」


男達は少し離れたところからカインを馬鹿にしていた。確かにカインが作った装備は支給品と同じく最低ランクのランク1装備だった。本格的にモンスターと戦うならばランク2以上の装備を付けるのは当たり前で、今ではランク3の装備であってもお金を出せばすぐ買えるようだった。

紫雲(なんだあいつら…。自分で素材集めて作るから楽しいんだろ…)

そう思っていた紫雲であったが、男達に突っかかる気はなかった。相手は見るからに強そうだったし、話しぶりからもランク4以上の上位ハンターらしかった。


カイン「…もう、行こっか。」


見るからにテンションの下がったカインを見て紫雲はかわいそうだと思った。やり返せるならやり返したい。でも今の自分はただの高校生。力もないし…と考えたその時、神の言葉を思い出した。

(分かった。貴様には無敵の力を与えよう。)


紫雲(そうだ。今の俺にはチート能力がある。もう高校生でもないんだ。ここならうるせー先公もババアもいねー。やってやる…!)

カイン「ねぇ、帰ろうよ…」

声を掛けるカインを無視し、険しい顔で男達に近づく。

紫雲「誰が何の装備を作ろうと勝手だろ?お前ら男のくせに自分で素材集めて装備作る喜びがわからねぇのか?」

紫雲は初めて自分より強いと思っていた存在に喧嘩を売った。言いたいことを言った。するとどんどん文句が湧いてきた。

「ああ、そっか。何でも金で解決したり、プロハンに頼って強いモンスター狩ってるいきり玉無し野郎にはわからねぇのか。だいたいお前ら顔もザコって感じだし一人じゃなんもできなさそうで…って…やべ…」

早口気味に話していたが男達に睨まれていることに気づき、急に青ざめる紫雲。

男A「てめぇ喧嘩売ってるな?」

男B「痛い目みないとわかんねぇみたいだな」

男C「ガキがなめた口きいてるとどうなるか教えてやるよ」

恐怖で棒立ちしている紫雲に男が殴りかかる。

紫雲(そういや、どうやって力使うのかなんて聞いてなかった。はは…やべ…もう駄目だ…)

ビリッ!!

男達「ぎゃああああああ!!」

紫雲に触れた男達は痙攣しながら倒れている。

紫雲「……俺何かやっちゃいました?」

何が起きたかわからない紫雲は引きつった顔でカインの方を見た。


*


一先ず、その場を離れたカインと紫雲。路地裏で息を整える。

紫雲「はぁ~~~ビビったぁ~~~~」

カイン「もう!本当にビックリしたよ!」

紫雲「ごめん。でも、あいつらムカついたしなんかイケる気がしたんだよね」

紫雲は少し笑いながら言ったが、先ほどの出来事を思い出し、不思議に感じていた。


カイン「ところで、さっきのビリビリはなんだったの?シウンは大丈夫だったの?」

紫雲「ビリビリ?」

(確かにあの時、あの男達は電撃をくらったみたいに痺れていた。もしかしてあの神様がくれたチート能力ってこのいかづちの力のことか…?)

カイン「…大丈夫?」

考え込んでいる紫雲の顔を覗き込むようにしてカインが尋ねた。

紫雲「うわっ!?大丈夫、大丈夫!」

いきなり視界に入ったカインの顔にドキッとしつつ、慌てて距離を取る。

紫雲「カイン、ちょっと試したいことがあるんだ。これからクエストに行かない?」

紫雲はあることを思いついていた。


*


ギルドにて

カイン「ええ!?モンスターを狩りに行くのぉ!?」

紫雲「さっきの力を試したいんだよ~。お願い!」

紫雲は手を合わせて頼み込む。

カイン「私、モンスターと戦ったことないんだけど…」

カインは不安そうに視線を外す。

紫雲「じゃあ今回を機に慣れていこうよ!モンスターを狩ってる人なんて沢山いるし、大丈夫だよ。せっかく俺がいるんだし、行ってみようよ!」

紫雲は必死に説得するが、カインはうんうんと唸っている。決断を渋るカインを見かねて受付嬢も説得に加わってくれた。

受付嬢「カインさん、今まで採取クエストばかりでしたので紫雲さんの言う通り、これを機会に討伐クエストをやってみても良いのではないでしょうか。簡単なクエストでも、採取クエストよりも報酬が高いのでお金も稼げますし、小型モンスターが多く生息している地域での採取クエストも受注できるようになりますよ。せっかく、頼りになるパートナーがいるんですし簡単なクエストだけでもやってみてはいかがですか?」

受付嬢と紫雲が2人がかりで説得し、一度でも討伐クエストをクリアできれば採取クエストの幅が広がるということで何とか納得してもらい、討伐クエストに出かけることになった。


*


クエストのエリアに向かう道中にて

紫雲「まさか、あんなに討伐クエストを嫌がるなんて思わなかったよ。」

紫雲がそう呟くとカインは少し間を置いてから静かに語り始めた。

カイン「……私、あの村のハンターのことあまり好きじゃないの…」

紫雲「えっ?…どうして?」

カイン「…あの人達は必要のない命まで奪っている。生きるのに必要最低限のモンスターだけ狩ればいいのに…あの人達は自分勝手な理由で命を奪ってる…。だから嫌いなの…。」

紫雲「自分勝手な理由って…例えば?」

カイン「素材が欲しいとか、武器の性能を試したいからとか、お金になるからとかいって…そんなくだらない理由で命を奪っているのよ…私はそれが許せない……」

紫雲「………それってそんなにいけないことかなぁ…俺も強い装備作ってみたいし、武器が出来たら性能も試したくなっちゃうな…」

カイン「……あなたもそっち側の人なのね……」

紫雲(やべっ!話合わせりゃよかった…!)

「いや!でも、たしかに可哀そうだよね!モンスターだって生きてるんだし!」

カイン「……可哀そう…か…たしかに命を奪うって残酷で可哀そうだって思うけど、私は少し違うと思う。」

紫雲「へ?」

カイン「生きるためには他の動物の命を奪わなければならない。それは自然の摂理で、残酷だけど誰も逆らえない。だから、もし命を頂くことになったら…その時は感謝するべきだと思うの。」

紫雲「感謝?」

カイン「そう、感謝!私の生きる力になってくれてありがとう…あなたの命を頂きます…って感謝して生きるの。…その感謝を忘れて、無駄に多くの命を奪っているシナト村のハンターは…私は好きになれない…」

紫雲「………そっか……」

カイン「……自然や命に感謝するって、お父さんが教えてくれたんだよ。」

紫雲「え?」

カイン「…お父さんはいつも自然に敬意を払ってた…。お父さんはとても強かったけどいつも、見つからないようにしたり、逃げることを考えてた。」


*


幼い頃のカイン「パパ強いんでしょ?あんなモンスターやっつけちゃえばいいのに!」

父「ハハッ…カイン…今必要なのは村のおじいちゃんおばあちゃん達のための薬草だけだろう?それ以外の命を無暗に奪う必要なんてないんだよ。」

幼いころのカイン「でも、倒した方が安全じゃん!あのモンスターだって人を襲うんでしょ!?」

父「そうだな……。確かに、片っ端からモンスターを倒してった方が安全で平和に暮らせるかもしれない。」

幼いころのカイン「でしょー!?」

父「でもな?それは人間の勝手な都合なんだよ。人間は自然の一部だ。人間のために自然があるんじゃない…自然の中に人間がいるんだよ。だから自然は大切にしないといけないんだ。例え、自然を変える力を手に入れたとしても…ね。」

幼いころのカイン「えーよくわかんないよー」

父「ハハハッ…カインも大きくなれば次期に分かるさ…」


*


カイン「…お父さんは自然が好きだった。ちょっと残酷だけど、それでも命を懸けて生きようとし続けるモンスターのやりとりを真剣に眺めてた時もあった。」


*


 カインは命のやりとりを目の当たりにした。互いが持つ「生きたい」という本能。それを押し通すことが出来るのはどちらか一方のみ。それがどれほど残酷であっても、どれだけ否定しても抗うことはできない。

幼いころのカイン「……死んじゃったね……」

父「……そうだね………まだ食べられる所が残ってる。少し貰っていこう。」


父「おいしいだろう?この部位は火を通すと柔らかくなって旨みも出るんだ!」

幼いころのカイン「………」

父「どうした?おいしくないか…?」

幼いころのカイン「……死んじゃうなんて可哀そう……嫌がってたのに………」

父「………。そうだな……でもな、これが自然なんだ。弱い者が食べられて、強い奴が生き残る。それがこの世界のルールなんだ。…自然は理不尽に弱者から大切な物を奪っていく…さっきのモンスターが命を奪われたようにね…。でも、悪いことだけじゃない。」

幼いころのカイン「…悪いことだけじゃないって?」

父「あのモンスターが死んでくれたおかげで、こうして美味しいお肉を食べることができてる。あっちのモンスターもお腹いっぱいになった。それだけじゃない。残りの肉や骨は微生物に分解され、土になり、植物の栄養になる…そしてその育った植物をまた動物が食べる…。あのモンスターは自分の命と引き換えに、沢山の物を恵んでくれているんだ…だから、カインも命に感謝して食べなさい。」

幼いころのカイン「…うぅっ……ありがとうっ…!モンスターさんっ!」

父「うん……。さ、それが自然の恵みだ。たらふく食べよう!」

幼いころのカイン「うんっ…!!」


*


カイン「…お父さんはモンスターの生態に興味があったみたいだけど、私は植物の方が好きなの。見てると癒されるでしょ?あ…ほら!このお花もちっちゃくて綺麗…!」

紫雲「……そっか……自然に敬意を払うとか考えたことなかったな……そもそもこんな森みたいなとこ行ったことなかったし……」

カイン「あなたの世界に森はないの?」

紫雲「いやあるけど……んー…勝手に木とか切ってるかも…」

カイン「え?」

紫雲「…人間が木を伐りすぎるせいで動物たちの住む場所がなくなってるとか聞いたことあるかも…。こっちの世界の人間は…ううん…俺も自然に感謝できてなかった……」

カイン「そうなんだ……。」

紫雲「………」

カイン「……これからはどうするの?」

紫雲「え?」

カイン「これから。シウンは命を大切にする?」

紫雲「…うん。俺もカインを見習うよ!」

カイン「ふふっ!その言葉、忘れないでね?」


 紫雲はこの時のカインの微笑みに心を奪われた。カインに嫌われないようにするためにも自然を大切にしようと誓った。


*


紫雲「ふぅ…これで必要な素材はそろったかな?」

カイン「うん!もう大丈夫!…ありがとね…あなた達の毛皮、大切に使わせてもらうからね。」


 カインが受注を許可したクエストの内容は新しい服を作るための素材調達だった。紫雲はモンスターを狩る際、力を試してみた。しかし、比較的大人しいモンスターの狩猟であったため力をほとんど解放せずに倒してしまった。


紫雲(物凄い力は感じる…でも全くと言っていいほど使ってない気がする…思いっきり走ってみたいのにずっと熟睡してるみたいだ…)

「ねぇカイン!もう少しこの力を試してみたいからちょっと離れてもいいかな?」

カイン「えぇ!?もう火、消しちゃったよ!」

紫雲「ごめん!すぐ戻るから!」

カイン「も~しょうがないな~。ま、煙は少し残ってるしこのエリアはモンスターも出ないからいっか…いいよ!でも、すぐ戻ってきてね!?」

紫雲「わかったー!」


紫雲はこの力の底知れない可能性を探りたかった。モンスターの討伐時や、男達との喧嘩の時では力を使っている感覚にすらならなかった。1パーセントも力を出していない感覚。「攻撃」しようと思って力を解放したらどうなってしまうのか。せめてそれだけでも確認したかった。

紫雲は森の奥へと走っていった。間違いがあってもカインに雷が当たらないだろうと思えるくらい離れた。移動の際、紫雲の脚は有り得ない速さで動いた。体は半分実体を失い、電気を纏いながら音速で動いた。

僅か数秒で、カインから離れた紫雲は早速、力の強大さに驚きながら「攻撃」を試した。近くの直径50センチくらいの岩を上に投げ、攻撃方向が上空になるように、投げた岩に向かって蹴りを放った。

音速を超えて放たれた「雷の蹴り」は岩を粉砕し、衝撃によって辺りの雲を吹き飛ばした。紫雲はあまりの力の強さに驚いた。そして、同時にこの世界で「最強」だということを確信する。


紫雲「うおおおおおお!!!やべえええええ!!!クッソつえぇじゃん!!!やっぱ俺最強なんじゃん!なんだよこんだけ強けりゃやっぱモンスターなんて余裕だな!どんなデカいモンスターでもこの蹴りで一発……」


 と思ったが目の前の自然を見て先程のカインの話を思い出す。


紫雲(…こんな力使ったらカインの好きな自然が壊れちゃうな……それにモンスターも生きてるだけで悪いことしてるわけじゃないし…。……いっか!別にこの力使わなくても!カインと草むしってるだけでも楽しいし…。次のクエストで、植物のこともっと聞いてみようかな……へっ…学校の勉強なら先公の話聞こうなんて絶対思わなかっただろうな…)


ズゥゥウン…!!

ビリビリ…!


 突然近くに何かが来た。近くにいるだけでこのプレッシャー。只者ではない気配。地面を見るとそこに光はなかった。顔を上げると陽の光を遮るほどの巨体がそこにあった。


紫雲(…っ!!カイン!!)


 紫雲は急いでカインの下へ戻った。そこに居たのは超巨大なドラゴンだった。


紫雲「…コイツは…!」

紫雲(…こいつがユグドラグンか…!?)

 一目見ただけで分かる格の違い。圧倒的な大きさから感じる迫力だけではなく、全ての生物を統べほどの力と威厳を直感で感じさせた…。

ユグドラグン(その通りだ小僧…)

紫雲「っ!!なんだ!?頭に直接!?」

ユグドラグン(……先程の稲妻は貴様がやったのか?)

紫雲「ああん?それがどうしたんだよ!?」

ユグドラグン(…人間と同じ見た目からは想像できん程の力だ。その力、見極めておく必要がある…我と戦ってみせよ…)

紫雲「なんなんだよいきなり…!…いいのか?本気出したらお前なんか一瞬だぞ?」

ユグドラグン(…人間ごときに我を倒せるとは思えないが…)

紫雲「っ!そういえばカインは!?ここにいた女の子をどうした!!」

ユグドラグン(……さぁな…この下に居たのならもう生きてはおるまい…)

 ユグドラグンは足を動かした。するとそこには、ぺちゃんこに潰れたサバイバル道具と変わり果てたカインの姿があった…。

ユグドラグン(ああ…人間はあまりにも小さい…そして脆いな…)

紫雲「あ……あぁ……カイン……」

ユグドラグン(貴様が草花を一本一本避けて歩かぬように…たった一匹の小虫を殺したことを気にも留めぬように…我にとって人間はその程度の存在なのだ。しかし、貴様ほどの力を持つ存在であるなら…)

紫雲「ふざけんな!!お前は殺す!!お前なんかがいるから!!」


 紫雲はユグドラグンの話を遮り、数百メートルはあろうかという巨体を蹴り飛ばした。さらに飛んだ先に回り込み、踵落としで地面に叩きつけた。


ユグドラグン(ッ!!!…この力は!!)

ドォォオン…!!

ジジジジ…!!!バチバチッ!!


 紫雲の右脚に雷の力が蓄積されていく。


ユグドラグン(ま、待て…!)

紫雲「死ね!!!」


 その瞬間、凄まじい轟音と共にユグドラグンの体ごと辺りが吹き飛んだ。地面はえぐれ、緑は炎に包まれた。

紫雲はあまりの出来事にしばらく放心状態でいた。すっかり日が落ちるほど時間が経ちようやく村へ戻ることを決意した。


*


紫雲「な…んだよ…これ……」


 壊れた建物、バラバラに食いちぎられた死体、声一つないシナト村…

ただ茫然と立ち尽くしていると聞き覚えのある声がする。

神「ボスであるユグドラグンが消えたことで混乱したモンスターが襲ったのだ…」

紫雲「っ!?」

神「ユグドラグンはこの世界の生態バランスを保っていた。そのバランスを崩壊させないために力のあるモンスターの行動を制御していた。さらに、カインの父親は自分の命と引き換えにユグドラグンと契約し、村の安全を守っていた。そんな全ての生物のボスをお前がヤっちまったんだ。この村の惨状はお前の軽率な行動が引き起こしたものだ…力があるからと言って己惚れたな…」

紫雲「な……俺のせいだって言うのかよ!?ふざけんな!こんなの……こんなの……」

神「想定していなかったと…?その言い訳は通用しない。世界のバランスを覆すほどの力を手にするお前は“絶対に選択を間違えることは許されない”。たとえ知らなかったとしても…だ。」

紫雲「…っ!」

神「社会の仕組みも知らないまま、お前は感情だけに従って行動してしまった…。実に浅はかだ…。お前は望んでいただろう…?絶対無敵のチート能力を。まさかその力に見合わぬ知性のまま上手くいくと思ったか?」

紫雲「うっ……ならどうしろって言うんだよ!?こんなの想像できねぇだろ!あいつを倒せばうまくいくって思うだろ!!」

神「力は所詮道具でしかない…よく考えるんだ…その力の使い方を…世界を護るために必要な思考回路を…」


 神がそう言い終えると視界が歪んだ。


神「いくらでもチャンスはある…それこそ無限にな…。次の異世界では上手くやれるといいな…」


 そして、次に目が覚めた時にはそこはまた別の世界であった。


紫雲(俺は…どうすりゃよかったんだ……俺がもっと…もっと頑張れりゃシナト村も護れたんじゃないのか…?あの時…もっと早くユグドラグンを倒せていればカインも死なずに済んだんじゃないのか!?……殺してやる…!悪いやつらを…!そうすれば誰も死ななくて済む…次はやってやる…!)



*



紫雲は初めての異世界転生で力の使い方を学んだ。

誰かを愛おしいと思った。

食べ物への感謝を学んだ。

力をどう使うべきか考えるようになった…


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