1,転生
初心者すぎてなろうの設定がわからん…。
気がつくと見知らぬ草原にポツンと立っていた。
「は?」
あまりに突然のことで呆けた声を出してしまう。
なぜ俺はこんなところにいるのだろうか?思い出そうとしても、どうにも記憶がはっきりしない。
昨日は確か、仕事が終わってから会社を出て、それから…どうしたんだ?
会社を出てからの記憶が一切なかった。
どこかで眠ってしまって、これは夢の中かもしれないとも考えたが、不思議と夢という感じはしない。むしろこれは現実のことだと直感でわかる。
これはもしや、俺は事故にでも遭って死んでしまったのか?そうだとしたら、ここはあの世だろうか。
見渡す限りの草原で、あまり地獄という感じはしない。
ということは俺は天国に来れたのだろうか。
生前の俺はといえば、趣味らしいものは読書くらいなもので休日は家で本を読むか友達と飲みに行くかしかなく、彼女はいない、ただのしがない会社員。強いていうなら人より少し猫が好きだったくらいか。
…うん、言ってて虚しくなってきた。
それよりも、俺はこれからどうすればいいんだ?
なんかこう、神様的な人と会ったりしないの?
さっきから人っ子一人出てくる気配がしないのだが…。
とはいえずっとこのままここにいるわけにはいかないだろう。
辺りを少し散策でもしてみるか。
そう思い俺は、前足を一歩踏み出した。
ん?前足?
…おかしいな、まるで俺が四足歩行をしているみたいじゃないか。
だが、不思議なくらいにそれがしっくりくる。
そういえばさっきからずっと目線がひくいような…。
恐る恐る視線を下ろしていくと、そこに映ったのは真っ黒な手だった。
正確には真っ黒な毛に覆われた手というべきか。
我ながら毛深くなってしまったものだ…。
いや、現実逃避している場合じゃないな。
だけどしたくなるのもしょうがないだろ!
だって、明らかに人間の手じゃないんだもの…。
手には指はなく犬や猫のような丸いフォルム。手を返してみれば犬や猫にあるような肉球が。
わあ!可愛い肉球!
って、ちゃうちゃう…。
顔を後ろに向けてみる。
すると、ふさふさとした背中とシュッとした尻尾が見えた。
試しに動かしてみるとフリフリと左右にゆれる。
続いてそっと顔に触れてみる。
指先に少し硬い一際長い毛のようなもの、おそらく髭が当たる。
そのまま手を上に持っていくと、頭頂部に三角形の耳がついていた。
…これは認めざるを得ないだろう。
どうやら俺は猫に転生してしまったらしい…。
モデルは我が家のキャットです。