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第70話 双剣

 ラビのレベルアップが終わったところで、相談に乗ってくれたミリシャさんと一緒に屋敷の食堂にやってきた。


 額にある色が変わった宝石を自慢するかのように、ラビがドヤ顔を決めると、周りで見ていた弐式の子供達から「おおっ~!」って歓声と拍手が上がる。


「それでさ、上級召喚を行おうかなと思うんだけどさ」


 離れていたのに俺の声が聞こえたらしいラビが、爆速で俺の前に飛んできて、何かを訴えかけた。


 ムキムキポーズをしているから、自分が強くなったよってアピールしているみたい。


「あはは、大丈夫! ラビにはずっと仲間としてここにいて貰うからね」


 それを聞いたラビが安堵の溜息を吐いた。


「何かね。『転職士』だからなのか、召喚()がもう一つあるんだよね。だから『上級召喚』を普通に使ってみようかなと思う」


 俺は既に持ってきた貯蔵中の『水の魔石』を複数個取り出し前に置く。


 どんな召喚獣が出てくるかとても楽しみだ。


「魔法、上級召喚!」


 置いてある『水の魔石』の真下に魔法陣が現れ、眩く光り輝いた。


 魔法陣から凄まじい魔力の波動が溢れ出る。


 そして、中から現れたのは――――。



「え? 魚?」



 魔法陣が消え、その上には飛んでいる大きな魚が現れた。


 フォルムもとても綺麗で、白色と黒色が綺麗に別れているその魚は、何故か海の中のように浮遊していた。


「っ!? もしかして、その召喚獣は! 制空の覇者(・・)ルーラーオーカ(帝王シャチ)!」


 初めて聞く名前だったが、流石はミリシャさん。博識で直ぐに反応してくれる。


 ミャァァァァ


 独特な甲高い鳴き声を発するルーラーオーカ。


「その召喚獣は、上級召喚獣の中でも、最も賢い(・・)とされている召喚獣だよ。それと魔法に非常に精通して――――あれ? ラビちゃんもそうだし、もしかして、ソラくんの召喚獣ってそういう属性なのかしら」


 ふむふむ……賢い召喚獣か。


「そういや、名前を付けてあげないとな」


 そう話すと、嬉しそうにまたミャァァァって鳴き声を上げた。


 甲高いけど、決して不快には感じないその鳴き声が不思議に思える。


「るーらーおーかか~」


「ソラ。ルーちゃんはどう?」


「ルーか! うん。いい感じだね」


 ルーと名付けようとすると、新たな召喚獣は嬉しそうに鳴き声をあげた。


 嬉しい感情が伝わってくるので、名前はルーで決定だ。


 ラビも仲間が出来て嬉しいようで、ルーと一緒に召喚獣語(?)で何かを話し合い始める。


 召喚獣達の仲良しを眺めながら、俺達はハイオーク戦の勝利の祝い会を始めた。



「「「「乾杯ー!」」」」


 食堂は集まった『銀朱の蒼穹』の全メンバー達で賑わった。


 ハイオーク戦に参加出来なかった弐式や参式のメンバー達にアムダ姉さんが当日の話をしてあげる。


 大活躍だったラビがドヤ顔を決めると、みんなから拍手が贈られる。


 アムダ姉さんも頑張ったラビを撫でてあげると更にご満悦になるラビ。


 空中で眺めていたルーもどこか嬉しそうだ。


 鍛冶屋のガイアさん達も駆けつけてくれて、ハイオーク戦の勝利を一緒に祝ってくれて楽しい祝い会となった。




 それから数週間後。


 ガイアさんから例の物が完成したとの連絡があったので、パーティーメンバーで鍛冶屋に向かった。


「おう。来たか」


 鍛冶屋のカウンターで待っていてくれたガイアさんが出迎えてくれる。


 俺達がカウンター前に着くと、ガイアさんは不敵な笑みを浮かべて、包帯にぐるぐる巻きにされた物体を二つ取り出した。


 フィリアが一歩前に出て、ワクワクした表情で二つの物体を見つめる。


「俺が今まで作った全ての剣でも最高の出来だぜ」


 不敵な笑みのガイアさんが自信ありげに話す。


 その言葉を聞いたフィリアは緊張を紛らわすように一息飲み込み、恐る恐る物体に手を伸ばした。


 二つの物体にフィリアの両手が触れた瞬間、物体をぐるぐる巻いていた包帯の隙間からそれぞれ赤い光と白い光が漏れ出す。


 光が現れ魔法のように浮いた物体は、その刀身を覆っていた包帯が緩み始め、フィリアの両手に移り始める。


 少しずつその刀身が姿を見せる。


 そして、フィリアが持たなくても、フィリアの腕にぐる巻きになっていた包帯が柄に繋がれていて、二振りの剣がフィリアの前に浮いたまま、その刀身を輝かせた。




双神(そうじん)(こう)。俺が今まで作った全ての武器の中でも、最高クラスの出来だ。それでもって、まだ()完成だ」




 美しく煌めく二振りの剣。


 フィリアの右手には赤黒く光り輝いている剣。


 左手には白銀の光り輝いている剣。


 これだけでも、ものすごい存在感を放っている。


「ガイアさん。これで未完成ですか?」


「ああ。残念ながらこの双剣は未完成だ。何故か成長(・・)する剣になってしまったのだ」


「成長する剣?」


「偶に出来る事がある。狙いたくても狙えない特殊な効果だが、その効果が付いた場合、必ず大きなデメリットがある」


「デメリット?」


「出来た段階では、非常に弱い(・・)事だ」


 弱い!?


 フィリアが持っているからなのかは分からないけど、二振りの剣から溢れている気配はとんでもない強さを感じるんだけど……。


 これがもし完成品だったら、とんでもない強さを発揮するという事か。


「ありがとうガイアさん。この剣、凄く気に入ったよ。これから一緒に強くなるんだから期待してて!」


 フィリアはこれから自分の力となる二振りの剣を大事そうに持ち、満面の笑顔でそう話した。

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