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第38話 合格

 フォースレイスを倒して帰って来てから、みんなで泥のように眠りに付いた。


 次の日起きたら、ベッドの中にフィリアも一緒に倒れるように寝ていた。


 静かに寝息を立てて眠っている彼女が可愛らしい。


 まだ昨日のフォースレイスとの戦いの興奮が収まらず、少し震える自分の手を見つめた。


「勝ったんだ…………」


 思わず、ポツリと言葉を漏らしてしまった。


「ん…………ソラ?」


「あ、起こしてしまった。ごめん」


「ううん、…………どうしたの?」


「……昨日の戦いを思い出してさ」


「ふふっ、昨日は頑張ったもんね」


「ああ、でも俺だけじゃない。みんなが頑張ってくれたおかげだよ。戦いの最中に何度も仲間に助けられたな」


「うん。私達……遂に勝ったんだね」


「ああ。でもここからが始まりだ。フィリア、これからも――――」




「あ~あ~、ここは甘いお花畑なのかしらね~」




 窓の外からアムダ姉さんの声が聞こえた。


「あはは…………フィリア、行こうか?」


「うん!」


 俺はフィリアを手を繋ぎ、家を後にした。




 ◇




「いらっしゃい。ソラくん」


「こんにちは、ガレインさん」


 俺達は冒険者ギルドから呼ばれ、フィリア、カール、アムダ姉さん、イロラ姉さんと五人でガレインさんの所にやってきた。


「よく来てくれた。早速だが――――『フォースレイス』の討伐おめでとう」


「あ、ありがとうございます。もうガレインさんに届いているんですね」


「そうだとも、『フォースレイス』を倒したパーティーの噂が広まらないはずもない。今ではソラくんのパーティーは一躍有名だよ?」


「ええええ!? そんなに早くですか?」


「ああ。冒険者ギルドでもすぐに噂が広まってくれてね」


「なるほど……だから既に知っていたんですね」


 ガレインさんが「うんうん」と頷く。


「それで、どうして呼ばれたんですか?」


「ん? 君は不思議な事を聞くね? 『フォースレイス』を目指した理由を忘れたのかい?」


「えっ? 確かに僕達は『フォースレイス』を倒したんですが…………まだクランの目標は達成出来てないんですけど……?」


「ん? 達成出来てない? どういう事だい?」


 ガレインさんがキョトンとする。


 俺達の目標は『フォースレイス』を倒して『フォースクロース』を持ってくることだ。


 ただ、既に『フォースクロース』は持っている。ちゃんとフィリアが守ってくれている。


 俺達に足りないのは…………


「だって、俺達はフィリアと一緒に(・・・)倒したんですよ?」


「ん? あ~なるほど! つまり、君は、『剣聖』であるフィリアくんと同じパーティーで『フォースレイス』を倒してしまったから、今回の試練(・・)は突破出来なかったと」


「え、ええ」


「あははは~ソラくん。君は本当に面白いね! うん。本当に気に入ったよ!」


 ガレインさんが大笑いした。


 それを俺達は不思議そうに見つめる。




「僕は君に剣聖くんと同じパーティーであってはならないとは一言も言ってないんだけどね?」




 ガレインさんの言葉に、俺の思考が停止する。


 え?


 フィリアと一緒に戦って良かったの?


 あの剣聖のフィリアと?


「ふむ、みんな納得いかない顔だね。フィリアくんが剣聖なのは知っているが、剣聖くらい(・・・)で『フォースレイス』は倒れないよ? あの魔物の別名は『絶望の軍団』さ。軍団と付く理由を君達は味わったのだろう?」


「あ……もしかして、ハイレイスがあんなに大量に現れたのって……」


「ああ、フォースレイスの取り巻きさ。あれは倒しても倒してもずっと現れ続ける。生半可なパーティーなら耐える事すら出来ないのさ」


 ガレインさんの言葉に、フォースレイス戦を思い浮かべると、確かにその通りだと思う。


 あのハイレイス達の魔法の数と、フォースレイスの単純だが、強力過ぎる広範囲魔法はフォースレイスの耐久が減れば減るほど強くなるのは、絶望に等しいのだろう。


「そんな相手に剣聖をたった(・・・)一人入れたくらいで勝てた君の実力を、ギルドマスターとして高く評価せざるを得ないのさ。だから、ソラくん。この試練を乗り越えた君だからこそ、セグリス冒険者ギルドマスターとして、君に今一度聞こう」


 最も聞きたかった言葉。


 俺達がずっと目指してきた道のり。


 周りの人々からすれば、俺達の努力は速かったかも知れない。


 人よりも努力をしてないように見えているかも知れない。


 それでも、俺達は決して楽な道を歩んでいない事を知っているし、俺達を見て来た沢山の人々もそれを分かってくれた。


 だからこそ、俺達はこれからも前を向いて走り続けたいと思う。






「ソラくん。クランを結成するかい?」




「はい! よろしくお願いします!」


「分かった。セグリス冒険者ギルドマスターとして、ソラくん。君のクランを正式的に許可する」






 この日。


 セグリス冒険者ギルドマスターのガレインの承認により、一つのクランが誕生した。


 その報せは王国だけでなく、隣国にも広まる事となり、瞬く間に広まる事となった。


 何故瞬く間に広まったのか。


 それには二つの理由がある。


 一つ目は、冒険者ギルドマスターのガレインという史上最強(・・)と呼ばれている男が唯一認めたクランである事。


 二つ目は、そのクランマスターが『転職士』であるからだ。




 こうして『転職士』のクランマスターが誕生する事によって、王国は、いや、世界は大きく変わろうとしていた。

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