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第24話 最後の沼地

 あれから一か月が経過した。


 三十日で一か月だから、レッサーナイトメアを十回倒した。


 ――――と言いたかったけど、他のパーティーも遠距離攻撃で初撃を取るようになり、レッサーナイトメアと戦えたのは半分に減った。


 それでも狙うパーティーの中では俺達が最も勝率が高かった。狩人十人のパーティーは反則級だね。


 そして、俺達のパーティーは最後(・・)のレッサーナイトメアを倒しに沼地にやってきた。


 そして、沼地の中央に全て(・・)のパーティーが集まっていた。全員武装解除のまま。


 暫く待つと、いつもの強烈な威圧感は放たれ、その場にレッサーナイトメアが現れた。




「行ってきます!」


 沼地に響く美しい声。


 レッサーナイトメアの前に対峙する――――フィリアだ。


「迅雷剣」


 フィリアが小さく呟いた後、目にも止まらぬ速さの剣戟がレッサーナイトメアを襲った。


「剛皇刃!」


 レッサーナイトメアが動く前にフィリアが更なる剣戟で吹き飛ばす。


「二連、牙蒼閃!」


 フィリアの双剣を覆っていた闘気から、大きな爆風が放たれ、レッサーナイトメアを包み大きな音が響き渡った。


 あの攻撃…………喰らったらひとたまりもなさそうだ……。


 少し距離があるがフィリアは双剣を鞘に戻し、柄に両手を置いたまま、ぐっとこらえる。


 既にボロボロになったレッサーナイトメアが起き上がるが、戦える気力はなさそうだ。


 そして、


「剣聖奥義――――百花繚乱」


 消えたフィリアが、レッサーナイトメアの後方に現れる。


 後から無数の剣戟がレッサーナイトメアの周囲に見え始め、それが美しい花びらのように見えた。


 舞い上がった花びらが落ちていく。


 そして、レッサーナイトメアは鳴き声すら上げれず、その場で消え去った。




「カール…………」


「お、おう…………」


「俺達の努力ってさ…………」


「い、言うな……あれが特別過ぎるんだけだ……」


「そ、そうだな……そういう事にしないと…………」


 向こうからレッサーナイトメアの角を二つ持った笑顔のフィリアがやって来た。


「フィリア、お疲れ~」


「えへへ~、ただいま~」


 心なしか、一緒に見守っていた全てのパーティーの人達が一歩下がった。


 そりゃ……あんな圧倒的な戦いを目の当たりにしたら、そうもなるよね。


「レッサーナイトメアって、とても強いんだね! Cランクと聞いていたけど、まさか、三回目で終わらないと思わなかったよ~」


「あ、あはは……そ、そうなんだ? そういえば、フィリアって他のパーティーでCランク魔物と戦ったんだよね?」


「うん。レッサーナイトメアは、多分だけどBランクに限りなく近いCランクじゃないかな? あの体力の無さ(・・)じゃなかったら、Bランクだろうね~」


「そ、そっか……」


「これならソラがBランクを倒せるのもすぐね!」


「あ、あはは……が、頑張るよ」


「うん! 頑張ってね! 応援してるんだから!」


 帰り道、沢山の人から潤んだ目で肩に手を載せられ、「頑張れよ」と言われた。


 頑張ります…………。




 その後、相も変わらず、俺達は宴会を開いた。


 今度は俺達が貸切っての宴会だ。


 なんせ、今日が最後の沼地だからね。


 既に多くの貯金が貯まった俺達は、日頃の感謝も込めての事だった。


 沼地の主なパーティーが利用しているこの酒場『木漏れ日』に宴会が始まった。



「寂しくはなるが、打ち上げとかあれば、この酒場に来いよ! いつでも歓迎するぜ!」


「ありがとうございます! この酒場ってご飯もとても美味しいから、これから利用します!」


「おう! いいじゃねぇか! ここのマスターの飯は美味いからな!」


 ワイルダさんの、がはははっ! の笑い声がとても心地よかった。


 その日は夜遅くまで、宴会が続いた。




 次の日。


 休息の日だけど、事前に終わらせておきたい事があったので、フィリアと一緒に冒険者ギルドにやってきた。


「ソラくん! いらっしゃい!」


 ミリシャさんが手を振って歓迎してくれる。


 手を振る度に右へ左へ揺れるのが凄い。


「ソ――ラ――」


「ち、違うから! そんなんじゃないから! ほら、早く行くよ!」


 恐ろしく冷たい視線を感じながら、急いでミリシャさんの所に逃げ込んだ。


「いらっしゃい」


「こんにちは、ミリシャさん。今日はお願いがあって来たんですけど」


「何でも任せて!」


 ミリシャさんが自分の右手で胸を叩く。


 だから……それは……揺れるんだよな……。


 必死に目線を外して、フィリアをけん制した。


「実は、俺達昨日で沼地を卒業しまして、沼地の『レッサーナイトメア』の『攻略情報』を提供しに来たんです」


「あ! ワイルダさんも話していたあれね? 分かったわ。ではこちらに付いてきて~」


 俺達はミリシャさんに連れられ、冒険者ギルドの二階にある部屋に案内された。


「では、担当の人が後から来るから、そこの紙に『攻略情報』を書いて待ってて~少し遅くなるかも知れないから、ゆっくりしててね」


「はい! ありがとうございます!」


 俺とフィリアはソファーに座り、俺は懸命に『レッサーナイトメアの攻略情報』を書き進めた。


 ある程度完成して、ノックの音がして、一人の男性が入って来た。


 ごつい体型が多い冒険者ギルドの中では、細身に見えるが、外でも分かるほど鍛えた身体が見える。


「君がソラくんだね?」




 綺麗な金髪から俺を覗く蒼い瞳がとても印象的な男性とは、それが初めての出逢いだった。

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