第21話裏 古参の衝撃
◆沼地の古参パーティーのリーダー◆
俺は長年、セグリスの沼地で『レッサーナイトメア』を倒してきた。
倒した数は今では数え切れない程だ。
しかし、いつも綱渡り状態だった。
時には仲間を失い、時には自分も大怪我をした。
そんな戦いを毎回送っていた俺だが、今日は初めて感じる異質な空気を感じた。
いつも俺らや他のパーティーの戦いを眺めていた変なパーティーが、何故か今日はやる気に満ちていた。
弓を携えた者が十人で、魔法使い一人と剣と弓を持った少年が一人、そして盾を持った前衛がたった一人。
その異様な編成に、いつも他のパーティーからは笑い者にされていた。
しかし、俺はずっと不安だった。
何故なら、彼らの真ん中で戦い方を観察している燃えるような赤い瞳の少年からは、ただならぬ気配を感じていたからだ。
以前、スモールボア十頭を三秒で倒す狩人の集団がいるとの噂を耳にした事があった。
倒すのは大変な事じゃない、問題は三秒にある。
三秒でスモールボア十頭を倒せるパーティーが何処にいるというのだ。しかも、戦い方なんて類を見ない戦い方だと聞いている。
それが……まさか、このパーティーではあるまいなという不安……。
しかし、その不安は的中した。
円陣を組んでいた狩人達が黒い霧を見つけた瞬間に矢を放った。
ああ……あれでは初撃は誰も勝てまい。
案の定、初撃はあのパーティーが一瞬でかっさらった。
初撃を取った……という事は、算段があるって事だろう。
その戦い方とやら……見てやろう……。
おいおいおいおい!
嘘だろう!?
何なんだ!? あの戦い方はよ!
今まで幾つものパーティーの戦い方を見て来た。
でも、こんな戦いをするやつらなんて見た事がねぇ!
遠距離攻撃に重きを置いたパーティーなのは知っていたが、そもそもあのレッサーナイトメアの稲妻をどうやって防ぐのかと思ったら、大盾二つを持ったやつが体当たりして、すぐに逃げるだー!?
ふ、ふざけるな!!!
そんな……
そんな簡単な方法であの稲妻を防げたのかよ!!!
二度目の稲妻をどう凌ぐかと思ったら、少年が持っていた大盾二つも渡すだ!?
既に読んでいて、準備してきたのかよ!!
お前ら、これが初めてのレッサーナイトメアとの戦いだろうが!!
なんで初めての戦いなのに、そんなに慣れてるんだ!!
どう考えても可笑しいだろう!!
それによくよく見ていると、あいつらが矢を放つタイミングなんて、有り得ないくらい的確なんだが!?
それを中央の赤い髪の少年が指揮しているよな!?
魔法を放つタイミングも、突撃してきたレッサーナイトメアに体当たりして足を止めるのも、全部あいつの仕業かよ!?
なんの犠牲も出さずにレッサーナイトメアを倒しやがった……。
信じられん…………。
一対一で倒せるくらいの強者ならいざ知らず、あんなただの狩人十人と魔法使いに剣士で、あのレッサーナイトメアをここまで簡単に倒せるだー!?
……。
……。
……。
く、くっくっ、くはははははー!
なんて面白れぇやつだ!
赤いの! お前、本当に――――――
つえぇーじゃねぇか!!!