すべてが闇に閉ざされている
すべてが闇に閉ざされている。
どれだけ快晴の日の世界も私の見るものは黒く淀む。大地は黒く染まり、青いはずの空は黒に染まっている。
太陽でさえ私には眩しくは無い。
明るい色なんてものを見たことが無い。赤?青?黄?私には黒の延長でしかない。
特に街は黒い。ただでさえ影の強い路地裏はいつだって闇夜の様相を挺している。
だからと言って、正午の晴天が照らす広い草原は明るいのかといえば決してそんなことはなく、私にとっては荒野も同じだ。
黒い川には何が隠れているのだろうか。覗き込んだとして、暗黒に包まれた水中を確認する術など無い。
色彩が消えている。
道行く人がすべて同じに見える。否、多少の違いは分かる。だがそれは影を見ているようなもので、影が示す違い程度しか判断が出来ない。
夜が来れば私はさらに世界が分からなくなる。影と影の境が不鮮明となり、自分がいる場所さえも黒く消えていく。
人工的な光が私を照らす。私には何一つ響かない。
ここはどこなのか、あるいはどこがここなのか。
僅かに認識できる世界の在りようだけを頼りに私は歩を進める。
真の闇はその先にある。
人工的な光は何処かへ去り、月の光は厚い雲に覆われた。
周囲がすべて厚い壁に遮られたようにすべてが黒くなる。これはもはや漆黒である。
それでも朝はやってくる。カーテンを開けると黒く弱々しい太陽が光り輝いていた。
そう、私はサングラスをかけている。