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7.ペリドールの驚きと悲しみ

いまだに荒い息のままで前かがみに倒れそうになり、とっさに片手を胸にもう片方は床についた。


「あれ? 水?」


明るいブラウンの艷やかな床にしずくが落ちている。


ポタン ポタン


それは、どんどん増えて。


「あ、私の目から?」


この胸が苦しいのは、奥深くにいるペリドールの悲しさなんだ。


「そんなに驚いたの?」


返答はないだろうと確信しながらも、彼女に話しかけずにはいられなかった。


「血が繋がってなくて、あの重たいくらいの優しさをもらえているなら凄いじゃない」


自分で言いながら、慰めにならないとは感じつつも色々言葉を並べていくうちに、息苦しさは消えていった。


「あのハートマーク、三人だけって事はないわよね」


いわゆる攻略対象者という人達で間違いない気がする。


「選んで、無事にゴールしたら葉月として戻れないのかな。あ、もし上手く恋愛が出来なかったらペナルティみたいなのもあったりして」


設定を把握していないから仮説も立てづらい。


コンコン


「は、はい!」


すぐ後ろのドアのノックで飛び上がりそうになり返事まで裏返ってしまった。


「失礼致します。お嬢様、目元が腫れています! どうされましたか?」


茶色の髪をきっちりと左右に三編みした女の子が膝をついてオロオロし始めた。


『シトリン・ティル。17歳 私の専属侍女、話し相手』


なるほど。


「ちょっとドアの角に足をぶつけちゃって。もう大丈夫よ」

「でも、目元を冷やしたほうが」

「わかったわ。それで、何か用事でもあったのでは?」


兄達か。または、私に不信感を感じた父親か。


「ルビー・リッティ様から本日伺いたいとのご連絡が。どうされますか?」


ルビーと言う名の女の子は、ペリドールの幼なじみらしい。正直、彼女とは葉月として初めて会うのだ。自分のマナーは限りなく不安だし、友達なら、尚更私がペリドールでも中身は微妙に違う葉月だと知られたら?


「会います。でも、まずは目元を冷やしてから」



✻ ✻ ✻



「ペリー、元気そうでよかった!」

「うわっ!」


赤い髪でピンクの瞳に涙を浮かべた美少女は、いきなり抱きついてきた。勢いがすごかったので一瞬後に倒れそうになるも、なんとかこらえた。


「ふー、危なかった」

「ふふ、ごめんなさい。久しぶりだからつい」



腕を緩め身体を離した私は、彼女を見て固まった。


「何処か痛い箇所はございますか?」


ぼんやりの反応なしの私に、彼女が本気で心配し始めた。返事をせねばと思うのだが、まだ目がそこから移動できない。


「……貴方も攻略対象者」



そう、ルビーの頭上には、好感度の隣にピンクのハートマークがあったのだ。


これ、パッケージの顔を思い出さないと本格的に不味いわ。


──性別も関係ないのか。いったい、対象者は何人いるの?




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