2.状況整理をしなければ
「ペリドール、体調は?」
「ご心配をおかけし申し訳ございません。熱も下がり問題ございません」
「そうか」
外見も場所も全く違う場所で目を覚まし五日が経過した。私は、ペリドール・カルデリアという名の少し病弱な子供で年齢は十二歳。
ちなみに中身の私、葉月は二十五歳である。
「明日から家庭教師との勉強を再開するというのは熱が完全に下がったとはいえ、早くないか?」
斜め前にいる金髪に緑の瞳のやたら整っている男の子は、ジェード・カルデリア。年齢は15歳でペリドールの兄。
「ならば、明日はジェードも受ければよい。確か学園は祭日で休みだったはず。近くにいればペリドールの体調の変化にすぐ対処できるだろう」
一見、睨まれているのかというくらい険しくも凛々しい人の名は、デマントイド・カルデリア。年齢は二十一歳。第一騎士団に所属する、ペリドールの兄であり長男だ。
「明日は、学ぶ時間をいつもより少し減らす予定です。また、無理をしないように気をつけます。お父様、デマントイドお兄様にジェードお兄様、心配して下さり、ありがとうございます」
にっこり笑みを浮かべれば、なにやら兄二人は未だ心配そうにしながらも照れながら何かを呟いているが聞きとれなかった。
しっかし、名前からして舌を噛みそう。ペリドールの記憶があって本当に助かった。
* * *
「無理なさらないで下さいね」
「わかってるわ。ありがとう」
目覚めた時にお世話をしてくれた女性は、私付きの相談役でもありお姉さん的な存在の侍女のガーネットだと頭に入ってきた。
「紙は、これね。あ、ちゃんとボールペンや鉛筆だ。羽ペンとかだったら書きづらいから嫌だなって思っていただけに地味に嬉しい」
一人きりになった私は、おやつにとお茶と小さな器に載せられたミニケーキをテーブルの奥に移動させ引き出しの中にあるペンと紙を取り出した。
「まず、私は何故かゲームの世界にいる。そして葉月としての人格もありつつ、奥にはペリドールとしての知識や感情もある」
お父さんやお兄さんに対して、どうやら気を遣っているのは、お父さんの再婚相手が今は亡き母で、その二人から生まれたのがペリドール。前妻の子供の兄達とは血が半分しか繋がっていない。
「血が繋がっていようがなかろうが、仲が悪いなんて沢山あるよ。むしろあのお兄さん達は、貴方を溺愛しているし」
どうして目覚めて五日ではっきり言い切れるかというと。
「皆の頭の上にある好感度と書かれた数字が見えるから」
ちなみにジェードは110%でデマントイドは120%。ついでにお父様は130%である。
「好感度のマックスは100%じゃないって事かな」
そして気になる事はまだまだあるけど、そのうちの一つとして。
「乙女ゲームって、好きな子を選んで落とすっていうので正解なのかな。この世界が、あの貰ったゲームの中だとしても困ったな」
私は、パッケージのいわゆる表紙しか見ていないのよ。
「しかも描かれていた女の子は、どうみても十二歳より年齢は上だった」
せめて、あらすじだけでも目を通していれば!
「あぁ、極めつけが二十五歳から一気に十二歳なんて無理だわー!」
この数日間、前向きにと呪文のように唱えていた葉月だが、流石に頭を抱えるのだった。