14.驚きと落胆
「急に伺ってすまない」
「そうですね」
ちょっとお兄さん!上司にそんな態度で大丈夫?!
「ふっ、悪い」
お?笑うと幼い。ではなくて、副団長さんって日本人なの?
これまたゲーム仕様のせいか、いやに整った顔立ちだけど切れ長一重に黒っぽい目に髪はまさに。
だけど次の瞬間、私は彼の頭上を見て驚きと落胆を同時に受けた。
「獣族の方なのですね」
彼の黒髪から出ている三角の耳とマントが濃紺で気づかなかったけど腰あたりに揺れているのは長い尻尾。本に書かれていた獣族に間違いない。
──日本人じゃなかった。
「ペリィ?大丈夫か?」
「あ、挨拶もせず申し訳ございません。私は、ペリドールと申します」
兄の声で、現実に引き戻された。しかも私ったら自己紹介もしていなかったし、ベッドの上で肩に羽織っているけど、いわゆるパジャマだ。
正直、露出もなく病人扱いの今、恥ずかしいとも思っていないんだけど、とりあえず謝っておくのが正解だろう。
「いや、礼儀を欠いているのは私だ。貴方が完全に回復してからと思っていたが、気になる事があってね。デマントイド、悪いが席を外してもらえないか? 彼女と二人で話がしたい」
なんか、寒い?
「それは命令ですか? 妹は病み上がりですし、そもそも妹が未成年とはいえ、いきなりいらして二人きりとは非常識では?」
なんと、クールな兄がキレている!
「あのっ、ディーお兄様も一緒でしたら話を伺います!」
睨む兄と余裕な黒豹。怖いし、絶対二人は魔力を出しているでしょ!病み上がりには、真冬のような寒さはキツイんですけど!
「私は構わないが、貴方にとってはどうなのか」
黒豹、いや違う副団長さんは、私を気遣うような視線を向けてきた。
あれ? やっぱり優しい人なのかな。
「兄は、ディーお兄様は信頼できます。違うのですか?」
逆に問う。デマントイドは、信用できる人間なのかと。
「ふっ、そうだな。貴方が良いなら構わない」
見つめ合っていた目をそらしたのは副団長さんだった。しかも、少し楽しそう。というかデマントイドの頭上の数値がまた上がった。
私は、マイナスも何が起こるか不安だし、かといって兄とは恋愛はしたくない。
ヴァン
「外にいる者たちに聞かれないようにしただけだ」
聞き慣れない音を拾ったら、副団長さんが教えてくれた。魔法って便利だなぁ。私は、魔力のコントロールが上手く出来なくて現在は使用禁止。なので、サッと実践している姿に惚れるわ。
「さて、一つ伺いたい。ペリドール嬢は、テンイ、テンセイ、またはバグと言う言葉に心当たりはありませんか?」
「……へ?」
間抜けな顔をしていた私は、悪くないと思うの。