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13.お城って広いわ

「あぁ、どうせおとぎ話の中だろうと軽く見ていたな」


上の兄、デマントイドから城内で一般人向けに期間限定で開放されている図書室に行くかという誘いに悩んだ末に興味のが勝った。


「絶対ゲームのイベントが来るかと戦々恐々だったんだけど」


体が重い。違う、ペリドールの体重は健康診断を受ければ要経過観察と言われるであろうくらいに軽い。


「お城ってこんなにも広い必要あるのかな?」


一人では絶対に迷子確定なので騎士団に書類だけ置いてくるから動くなという言葉に素直に従うも。


「立ってるのすら辛くなってきた。あ、あそこなら騎士団の入り口から見えるしいいかな」


引きずるように足を動かし、なんとかベンチに辿り着いた。


「なんか、葉月と変わんないな。というか来年から学校に通えるのかな」


言うことをきかない身体がもどかしくて、不安な気持ちが増していく。


「ペリドール、貴方は何で閉じこもっているの?」


私が貴方になってしまったのは何故?


「風、気持ちいいな」


サワサワと葉の音と時折遠くから聞こえる話し声。夕方になりつつある少し冷たい風が火照った頬を冷ましてくれる。


ゆっくりと眠りに引き込まれていった。



***


『遅くなったね。どうせ明日も課題が出るんだよ』

『こなしても増えていくよね』


ああ、学生の時の夢だ。


講義からの帰り道。図書室で課題をしていたせいで、空には既に星がチラチラと見えていた日。


『葉月?』

『はは』


いつものメンバーで駅へと向かう途中、私の足が動かなくなった。いや、頑張れば動く。


『ゆっくりいこ』


乾いた笑いしかでない私に皆は気遣い足を止めた。慣れているはずなのに情けなさと悔しさで心が一杯になっていく。


あたしの足、動け。ただ歩くだけなんだから。


『あは、ごめん』


どう声をかけていいのか悩んでいる皆は優しい。でも、私は、自分の目から涙が溢れないように、堪えるのが精一杯で。笑いながら謝ったけど、心は崩れていく。



悔しい、悔しい。



「夢だから、悲しくない」


突然、声がした。


「大丈夫」


何が大丈夫だっていうのよ。知りもしないくせに。


「……起きているのか?」


煩いなと思っていたら、霞む視界に顔がある。


「ああ、懐かしい色」


ぼやけながらも見えたのは、黒髪に黒っぽい目の若い男の人。この世界ではいないと思っていた顔立ち。


「皆、元気かな?」


会いたいな。


そう口にしようとしたのに、また強い眠気に襲われた。



***



「疲れが出たら直ぐに言うように何回も忠告したのだが」

「うう、すみません」


お城に行った日、まんまと熱を出して下がるまで三日もかかってしまい、未だにベッドから出るのが禁止されている。


「探してもいないし、副団長が偶然通りかかったからよかったものの。次の開放日は見合わせだ」


どうやら待つように言われた場所は反対の出口のほうだったらしく、うたた寝をしていた私をデマントイドの上司の副団長さんが不審に思い近づいてみたら、具合が悪くなった人と判断され医務室へ連れて行ってくれたらしい。


「え、というか次の開放日には流石に治っていると思います」


なんだかんだで図書館はかなり楽しくて、時間切れでまだ見たい本も沢山あったのに!


「こんな状況になるのなら一人きりにしておけないだろう?」


ギロッと睨まれた。


「う。でも」

「でもじゃない」


コンコン


あ、救いの手が!


「はい!」


元気よく返事をすれば、侍女のシトリンが少し困惑気味ながら伝えてきたのは。


「ペリドール様にお会いしたいと、モリオン・グラシアル様がいらしております」


誰だ?


すぐさま心の中にいるペリドールに問いかけるも返答はなしでどうするかと思っていれば、ふと兄の様子がおかしい。


「副団長が? 私ではなくペリィに?」

「はい」


いや、お兄さんの上司って、今聞いた私を運んでくれた人って事?


二人共困惑しているけど、これって一択しかないよね?





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