1.目覚め、また眠る
「まだ熱がありますのでお休みください」
「……ええ。ありがとう」
温和な二十代後半くらいの女性は、私のベタついた身体を拭き肌触りのいい服をあっと言う間に着せると綺麗なお辞儀をして去っていった。
「私は、どうしてこんな事に」
横にある小さな鏡には波打つ黒い髪に緑の瞳の少女が映っている。その小さな顔は、クシャリと泣きそうな表情になる。
そう、今の私の気持ちを現しているかのようだ。
「従兄弟が暇つぶしにと誕生日に送ってきたゲームソフトの絵にそっくりな顔よね」
私の顔じゃない!
「私は、宮前 葉月で、スーパーの中にある揚げ物屋で働いている。そしていつものように帰宅して……」
そこから曖昧だ。
「それに、何で頭の上に数字が見えるの?」
よくわからないけれどゲームの中なのか。いや、これは夢なのか。
「もし、これは現実で、あのゲームの世界だとしても、私にはどうしょうもないような」
何故ならば。
「まだ開封さえしていないゲームだなんて終わっている」
どうしよう。どうしたらいいの?
「脳が許容範囲を超えた」
実際、頭痛までしてきたので半身を加減をせず後ろに倒おせばボフッと音がした。
「とりあえず寝る! それしかない!」
目をつぶり両手を投げ出し力を抜けば、こんな状況なのに、ゆるりと意識が沈んでいった。