気づいたら異世界 ~美女と二人で異世界旅行~
気がつくと、俺は、空を見上げていた。
なんで空? 俺いつの間にか外で寝たのだろうか?
不思議に思いながらも、体を起こすと、
「おはようございます。」
「えっ!!」
声がした方向に顔をむけると、背中まである綺麗な黒髪、アメジストのような淡い紫色の瞳、透明感溢れる白い肌、そしてとてもよく似合っている黒と白を基調とした着物を来たとても美人な女性がそこに座り込んでいた…
その女性を見ながら、現実感がない俺は、着物汚れないのかなぁなんて、考えていた。
「そ…そんなに見つめられたら、恥ずかしいです…」
「す…すみません!!」
俺は、慌てて、目をそらす。
すると、体の中に何かが入り込んでくる感覚に、急な倦怠感と突然の眠気に襲われた…
座ってられなくなった俺は、その場に寝転ぶ…
「どうぞ、ごゆるりとおやすみ下さい。」
あの美人の女性の声を最後に、俺の意識は途絶えた。
◇
「ごゆるりとおやすみ下さい。」
主様が、寝たのを確認して、主様に近寄る。
「す…すみません、失礼します。」
そう言って、私は、主様の頭を膝の上にのせる。
「ふふふふふ。」
お慕いする主様の髪を撫でながら、嬉しさのあまり声が漏れてしまう。
「いけない、いけない。しっかりしないと。」
自分に活をいれるも、主様の顔を見ると、ついつい頬が緩んでしまう。
主様が起きるまで、今の幸せを噛みしめた。
◇
「!?」
私は、何かに反応して、辺りをキョロキョロ確認する。
「どうかされましたか、聖女ルミナ?」
教皇様の声で、私は我にかえる。
「す…すみません、教皇様。」
「大丈夫ですよ。それにしても、突然辺りを見渡して、どうかしましたか?」
私は、感じたことを教皇様に伝える。
「わ…私にもよく分からないのですが… 突然何か、大きな力がこの世界に誕生したような不安に襲われまして…。」
「大きな力ですか… それは無視できないですね。」
「はい…」
「まぁ、気にしすぎるのも良くないですね。聖女ルミナもまた何か感じたら、教えて下さいね。」
「分かりました…」
何故か、私は、今後何かがこの世界で起こるであろうと確信していた。
◇
微睡んだ意識をハッキリさせながら、目を開けると、眠る前にみた、あの美人な女性と目があった。
「えっ!!」
「おはようございます、主様。」
「お…おはよう?」
あ…主? 俺は、戸惑いながら、挨拶をし今の状況を確認する。
頭の裏が、や…柔らかい…
はっ!! まさか!!
ばっと、体を起こす。
「あっ…」
俺は立ち上がり、彼女から、少し距離をとった。顔は熟れたトマトのように真っ赤になっている気がする…
「あ…あの、貴方は?」
彼女も立ち上がり、深々とお辞儀をしながら、言葉を発する。
「私に名前はありません。私は、貴方の手足となるべくして、生まれてきた存在です。」
頭をあげると、彼女は、とびきり眩しい笑顔だった。
「・・・」
はっ!! 彼女の笑顔にやられて、思考が停止していた。
「あの、どういう事ですか? それに、ここは?」
「そのまま、意味です。私は貴方の力によって造られた存在です。ここは、嘆きの戦場跡地と呼ばれている場所になります。」
「俺の力? 嘆きの戦場跡地?」
何のこっちゃ…
俺の力ねぇ… 俺ってそんな力あったのか…
それに、聞いたことのない場所…
それになぜ、俺はこんな場所にいるんだ…
覚えている範囲で、自分の記憶を辿ってみる…
思い出せない… 名前や地球の知識は思いだすのに…
その他の事は、急に靄がかかったかのように思い出すことが出来ない…
「大丈夫ですか、主様? 顔色が優れないようですが?」
「だ…大丈夫… そういえば、なんで主様?」
「私は、主様に造られ存在です。私の身も心も全て貴方様に捧げています。だから、貴方様は、私の主様なのです!!」
またしても、とびきり眩しい笑顔。
「そうですか…」
俺は今までのやり取りで、ここが地球ではない別の世界だと、直感で悟った…
ん、まてよ別の世界… !? まさか…
地球での特殊な知識を呼び起こし、ある言葉を唱える…
「す…ステータスオープン。」
名前:一之瀬 新
Lv1 種族:人間 性別:男 年齢:18
HP500
MP20000
スキル: 呪神法 呪具作成 全鑑定 呪霊召喚 言語理解
称号:復讐神
目の前に、ステータスが書かれている透明なボードが現れた。それにしても、本当に出た。これで、ここが別の世界である事の 可能性が高くなった。
それにしても、いまいち分からないスキルだな。
スキルの使い方は、知識として理解している。
でも、一応確認しておこうかなと、スキルの詳細を見てみる。
呪神法 ・・・ 特殊な魔法を使う事が出来る。魔法耐性、耐性道具関係なく、魔法を行使できる。
呪具作成 ・・・ 魔力を消費し、呪われた道具を創る事が出来る。
全鑑定 ・・・ 声に出さなくても、全ての人、道具などを見ただけで、鑑定する事が出来る。
呪霊召喚 ・・・ 取り込んだ、負の感情を統合強化し、呪霊として召喚する事が出来る。
言語理解 ・・・ 知らない言語も理解出来る。
ついでに、気になる称号の詳細も確認する。
復讐神 ・・・ 全てを恨んだ者に与えられし称号。称号効果で、全ての負の感情を己の中に取り込む事が出来る。また、その際、その者の有していた知識なども一緒に取り込む事が出来る。
まぁ、何と言うか… 俺、ちゃんと使えるかな?
てか、何だよこの称号? 全てを恨んだ者って、全く覚えがないんだけど…
ん、そういえば、彼女は俺に造られたと言っていたが、この呪霊召喚で彼女を創ったって事か? 創った覚えはないんだけど…
そういえば、彼女は… 彼女を探すと、彼女は俺のすぐそばまで近寄っており、立っていた。
「!?」
「どうかされましたか、主様?」
「い…いや、驚いただけだよ。」
そうだ、彼女に今後どうするのか聞いてみる。
「貴方は、今後も、俺と一緒に来てくれるってことで、いいのかな?」
「はい!! 主様いるところに私ありです!! ですから、口調も崩して下さって大丈夫ですよ。」
「そっか、分かった。それにしても、主様は何か落ち着かないから、新で良いよ。」
「お…お名前をお呼びしても宜しいのですか?」
彼女は驚いた顔をしている。
そこまで、驚かなくてもいいと思うんだけど…
「あ…あぁ、いいよ。」
「では、アラタ様とお呼びさせて頂きます。」
別に、様もいらないのだが、彼女は喜んでいるようなので、まぁいいか。
「それにしても、今後も一緒にいるのなら、名前あった方がいいよな。俺がつけた方が…」
「ぜひ、お願いします!!」
「わ…分かった。ちょっと待ってね。」
俺は、彼女の名前を考える。
「紫縁…シエンなんてどうかな?」
「シエン…」
「そう、君の綺麗な瞳の紫と俺との出会い…縁の縁をとってシエン。ダメかな?」
彼女をみると、泣いていた。
「だ…大丈夫。そんなに気にくわなかった?」
「違います。嬉しくて… 嬉しくて… 勝手に涙が… アラタ様、素敵な名前をありがとうございます。」
シエンは、丁寧にお辞儀をしてきた。
「気に入ったのなら、良かった。」
俺は、姿勢をただし、
「改めて、俺は一之瀬新です。シエン、今後も俺と一緒にお願いします。」
はっ!! 言って後で、気づいたのだが、何だがプロポーズみたいだな…
シエンも少し、頬を朱に染めながら、
「私は、シエンと申します。末永くよろしくお願いします。」
先程みた笑顔より、さらに眩しい笑顔に俺も、頬を染めてしまう。
◇
「そういえば、シエンのステータスってどんな感じなの?」
「私のですか? 少し、お待ち下さい。ステータスオープン。こちらになります。」
シエンは、俺の横につき、一緒にスキルボードを確認する。
名前:シエン
Lv100 種族:幽鬼の女王 性別:女 年齢:??
HP55000
MP88000
スキル:呪霊纏 家事 料理 実体化 魔力譲渡 闇魔法
称号:復讐神に造られし者 主人を仰ぐ者
あれ? 俺より強くね…
それにしても、見ても分からないスキルがあるな。
「シエン、スキル何かの詳細を見せて貰ってもいい?」
「分かりました。」
まずは、種族とスキルを見せて貰った。
幽鬼の女王 ・・・ 造られた、ユニークモンスター。全ての幽鬼の頂点。幽体時、物理攻撃完全無効。
呪霊纏 ・・・ 呪霊を自身に纏うことによって、その呪霊のスキルを十全に扱う事が出来る。
実体化 ・・・ 体を持たないものが、体を持つことが出来るようになる。
魔力譲渡 ・・・ 相手に魔力を渡す事が出来る。
次に称号だ。
復讐神に造られし者 ・・・ 復讐神に造られた唯一無二の存在に与えられし称号。身体能力特大アップ。
主人を仰ぐ者 ・・・ 決して主人を、裏切ぬ事のない者に与えられし称号。
「ありがとう、シエン。」
「お役に立てて、光栄です。」
復讐神ってやっぱり、俺の事だよな…
それにしても、シエンは、ユニークモンスターだったのか…
まぁ、シエンが何者であろうと一緒にいることに代わりはない。
俺たちは、出発する前に、スキルを使ってみることにした。
まずは、あれを使って装備品でも作ってみるか…
「呪具作成。」
すると、両手に1つずつ指輪が出来上がる。本当に、作れた。
俺は、早速鑑定を使う。
自滅の指輪 ・・・ 呪われた指輪。装備時、自身が使用する魔法攻撃の際、相手に当たる寸前でその攻撃が全て自分に跳ね返って来る。
俺が思っていたのと反対の効果が付与された指輪だった。
まぁ、呪われた装備だし、当たり前か。
俺はこの指輪に更に、呪神法を使う。
「呪神法"反転"。」
黒みがかった指輪は白みがかった指輪に変化していた。
鑑定を使う。
反射の指輪 ・・・ 装備時、自身の周りに不可視の結界を作り出し、その結界に触れた魔法攻撃を相手に反射させる。
よし、成功だ。そのまま、もう1種類装備品を作る。
「呪具作成。」
首飾りを2つ作る。
物理皆無の首飾り ・・・ 呪われた首飾り。装備時、相手から受ける、物理攻撃ダメージ量がかなり増加する。
「呪神法"反転"」
物理耐性の首飾り ・・・ 装備時、物理耐性を得る。
俺はその装備を装備し、シエンにも手渡す。
「シエンも、これを装備しておいてね。」
「わ…私にもですか!!」
「そりゃそうだよ。シエンは大事な仲間なんだから。」
「!?」
みるみるうちに、シエンの顔が真っ赤に染まりながら、涙を流す。
「あ…ありがどうございまず…大切にじまず。」
シエンは、受けとると胸の前でギュッと握りしめた後、装備する。
「ふふふ、アラタ様と同じ装備品…」
泣き止んだ、シエンは左手の薬指にはめた指輪を見て、悦に浸っている。まぁ、喜んでくれて、良かったよ。
その後も、呪霊召喚を試したり、シエンを正気に戻して呪霊纏を使って貰ったりして、とうとう出発する事にした。
「そういえば、シエンって俺が創ったんだよね。」
「はい!! アラタ様の神がかった力によって今の私がいます。」
「それで、シエンのその知識って、どこから得たものなの?」
シエンは少し考えた後…
「憶測になって申し訳ないのですが、アラタ様から得た知識だと思います。」
「俺から?」
どう言うことだ?
「はい。アラタ様が1度目を覚ました際、私には、大量の負の感情がアラタ様の中に入っていくのを感じました。」
「え、俺そんな事なってたの?」
「はい。それで、アラタ様には、大量の知識が流れ込んで来たんだと思います。そのせいで、頭が耐えられずに、眠ってしまったんだと思います。」
「だから、眠くなったのか… でも、俺この世界の知識とかないけど?」
「たぶん、その知識が私の中に流れ込んで来たんだと思われます。」
「なるほど… それなら、ここから1番近い街とかわかる?」
「はい。ここから1番近くですと、聖国テンプルムか帝国領の貴族が治める街イーブルの2ヶ所ですね。どちらも2週間ほどかかります。」
「聖国か帝国領か?」
名前的に、帝国は何か物騒なイメージがあるから、聖国にしようかな。
「シエン、聖国は、どっち?」
「聖国は、あちらですね。」
「ありがとう。それじゃあ行こうか、シエン。」
「はい、アラタ様!!」
俺たちは、聖国へむけて、出発した。
◇
俺は、旅を効率よく進めるために、更に何個かの呪具を作成した。
時進めのポーチ ・・・ 呪われた道具。ポーチ内に入れた物の時をかなりの勢いで進んでいく。また、収納量制限。収納重量増加。
⬇️ (反転)
時止めのポーチ ・・・ ポーチ内に入れた物の時を止める。また、収納量無限。収納重量皆無。
鈍足の馬型ゴーレム ・・・ 呪われたゴーレムの1種。移動速度激減。耐久力激減。
⬇️ (反転)
俊足の馬型ゴーレム ・・・ 移動速度激増。物理・魔法耐性。
強調の腕輪 ・・・ 呪われた装備品。装備時、自分の存在が相手に判明しやすくなる。
⬇️ (反転)
索敵の腕輪 ・・・ 気配を敏感に感じとる事が出来る。
状態異常のテント ・・・ 呪われた道具。テント内にいるもの全てに状態異常をかけ続ける。また、モンスターに襲われやすくなる。テント内範囲縮小。
⬇️ (反転)
癒しのテント ・・・ テント内にいるもの全てを肉体、精神共に癒すテント。モンスターに襲われなくなる。テント内範囲拡張。
これら道具のおかげで、旅も順調に進んでいる。
途中、盗賊たちに襲われたが、何なく撃退した。その際に、初めて、人を手にかけたが、特に何も感じなかった。
今は、道中倒したモンスターやキノコなどをシエンの料理して貰い、食べていた。
「シエン、いつも、美味しい料理ありがとうね。」
「お役に立てて、光栄です!!」
食べ終えた俺たちは、テントに入る。テント内はかなりの広さなので、シエンの意思も尊重し、一緒のテントで寝ている。家具は、テントを作った際に、一緒に出来ていた。ベッドはちゃんと別々だ。
「それじゃあ、おやすみシエン。」
「おやすみなさいませ、アラタ様。」
俺たちは眠りについた。
◇
起きた俺たちは、早速聖国にむけて、出発した。
俺の後ろに乗っているシエンから声がかかる。
「アラタ様、もうそろそろ聖国領に入ります。」
「了解。それじゃあ、ゴーレムだと目立つから、そろそろ降りて、歩こうか。」
「はい…」
俺がゴーレムを止めると、シエンは、腰にまわしていた腕に力を込め、ギュッと抱きつき、少しして、ゴーレムから降りる。
俺も、少し顔を赤くしながらゴーレムから降り、ポーチに入れる。
「そ…それじゃあ行こうか、シエン。」
「はい!!」
俺たちは、今度は歩いて、聖国にむかう。
◇
ん、この先に、人の気配を感じる。
「アラタ様、あちらの方で人の気配がします。」
どうやら、シエンも感じたようだ。
このまま、進むと少しして、遭遇するだろう。
「あぁ、そうだね。でも気しても仕方ないからこのまま進もうか。」
「分かりました。」
シエンと進んでいくと、3人の黒装束に身を包んだ人たちと遭遇した。
むこうもこちらに気づいているようだ。
「!? 隊長。」
「あぁ、あの女は上玉だ。任務のついでに捕らえるとしよう。」
「男の方はどうしますか?」
「男はいらん。殺れ。」
「分かりました。」
どうやら、あいつら、俺を殺して、シエンを奪うようだ。横目でシエンをみると、ゴミでも見るような目であいつらを見ていた。
「アラタ様、ここは、私が。」
どうやら、シエンは、かなり怒っている。
「いや、俺がいこう。俺の大事なシエンを狙ってきたからには、生かしておけない。」
「だ…大事なシエンなんて…アラタ様ったらぁ…」
シエンの顔は真っ赤になっていた。すぐに気を取り戻し、
「そ…それじゃあ、お願いします。」
「あぁ、ちょっと待っててねシエン。」
はい!!
早速俺にむかって来ている、黒装束にむけて呪神法を使う。
「呪神法"麻痺"」
すると、全ての黒装束がその場で動きを止めた。
「な…なんだこれ…か…体が動か…ねぇ」
「ま…まさか…麻痺か…」
「ば…馬鹿…俺たちは…状態異常耐性の装備を…つけているぞ…」
さて、これで、しばらくは動けなくなった筈だ。
それより、気になる事がある。
こいつらに会う前から感じていた、強い負の感情。
気になった俺は、先にこいつらがやって来た方に行ってみることにした。
「俺、ちょっと、奥見に行くけど、シエンはどうする?」
「お供します。」
俺は、シエンと一緒に、負の感情が強い方向へ歩いていく。
それは、すぐに見つかった。
そこには、目を見開いたままの、みるも無惨な女の子の死体が転がっていた。俺はその女の子に近づいていく。
右足の健は切られており、右腕には矢が刺さっている。
他にも、無数の切創痕や火傷の痕…
俺は、女の子の側に座り込み、額に手をのせる。
すると、女の子の負の感情が俺の中に流れ込んでくる。
全て吸い込み終わると、そのまま目を閉じてやる。
「君の恨みは確かに、受け取ったよ。シエン頼んでもいいか?」
「分かりました。」
それだけで、シエンは俺の意図を読み取ってくれた。
俺はスキルを発動する。
「呪霊召喚"幽鬼の聖女"」
1人の呪霊が現れる。この前も呪霊召喚を試したが、どうやら、話すことは出来ない。シエンはやっぱり、特別な存在のようだ。
「呪霊纏。」
呪霊はシエンの中に入っていく。
そのまま、シエンは、魔法を行使した。
「回復魔法"完全回復"」
女の子の体から傷が全て消えた。だけど、生き返ったわけではない、傷が消えただけだ。
「ありがどう、シエン。」
「勿体ない、お言葉です。」
俺はポーチからシーツのようなものを取り出して、女の子の死体をくるみ、ポーチの中に入れる。
「シエン、そのままの状態で戻るよ。」
「分かりました。」
あいつらの元に戻ると、まだしっかり麻痺がかかっていた。
「き…きざまら…ただで済むと…思っているのか…」
隊長と呼ばれていた男が、俺たちを見てまだ、あんなことを言っている。
「シエン、俺の前に結界をお願い。」
「分かりました。神聖魔法"聖結界"」
俺の前に、光の結界が現れる。
「ありがとうシエン。それじゃあ、俺の後ろへ。」
「はい。」
シエンが、後ろに回った事を確認して、俺は、呪神法を使う。
「呪神法"四連爆血"」
すると、隊長と呼ばれていた男の両腕、両足の付け根が爆発した。血が飛び散るが、シエンの結界のおかげで、血がかかることはない。
「う…腕がぁ… 足がぁ…」
隊長は、四肢を失い、地面で倒れている。このまま放っておいても、死ぬのだが、これでは終われない。
「シエン、回復お願い。」
「はい、回復魔法"回復"」
止血だけで、行ってもらう。残りの2人も同じようにする。
「ゆ…ゆる゛ざねぇ」
「いでぇ~ いでぇ~よ」
「ご…殺す…」
俺は更に、こいつらを地獄に叩き落とす為、アイテムを作成する。
侵食の丸薬 ・・・ 呪いの道具。服用した者の胃の中で発動する。丸薬が溶けきるまで、服用者の体を蝕む。
⬇️ (反転)
回復の丸薬 ・・・ 服用した者の胃の中で発動する。丸薬が溶けきるまで、服用時の体の状態まで回復し続ける。
俺は、それを無理矢理飲ます。
「「「「グギャギャギャ」」」」
おっ、グッドタイミング。
「アラタ様、殺りますか?」
「いやいいよ、シエンも呪霊纏解除していいよ。」
「分かりました。」
ゴブリンたちは、俺たちに攻撃してきたが、まだ効果の残っている聖結界のおかげで、触れることすら出来ない。ゴブリンたちもその事悟ったのか、倒れているあいつらの群がり出した。
「「「だ…たずけで~~」」」
あいつらは、ゴブリンに喰われるそばから回復の丸薬のおかけで回復する。
それを確認して、俺たちはその場を後にする。
◇
「アラタ様、この後は、どうされるのですか?」
「ん、このまま、聖国に行くよ。それに、聖国に用も出来たしね。」
「分かりました。」
そんな話をしていると、丁度城壁が見えてきた。
「シエン、あれが聖国?」
「はい、あれが、聖国テンプルムの城壁です。」
「結構、人がならんでるね。俺たちも並ぼうか?」
「はい。」
列に並び、身分証の代わりに、入国料を払い、問題なく入国できた。
「まずは、宿をとろうか… シエン、もしかして、おすすめとか分かる?」
「はい。それらも知識も有しております。」
「本当!! なら、案内お願いしてもいい?」
「分かりました。こちらになります。」
シエンについていき、路地裏に入り、少し古びた宿屋にたどり着いた。
「こちらは、宿屋ハイドになります。一応、聖国の隠れた名宿になります。」
「へぇー、それじゃあ入ってみようか。」
◇
一言で言うと、この宿屋は正解だった。接客は丁寧で、部屋も綺麗だった。料理も申し分ない。無いのだけど、シエンの料理の方が美味しい思う。
今は、日が沈み、かなりの時間がたっていた。
「アラタ様、行かれるのですか?」
「ん、あぁ。シエンは…」
「お供します。」
「了解。便りにしてるよ。」
「はい!!」
その後、少し計画の話し合いをし、宿を出る。路地裏にある隠れ宿のおかげで、人の目につくことはない。この事も考えて、シエンはここにしてくれたんじゃないかと思う。
宿を出る前に、シエンは幽鬼の盗賊王を纏っている。
「俺は、真正面から行くから、シエンは、さっき言った通りにお願い。」
「分かりました。」
その言葉を残して、シエンは、消えた。たぶん、盗賊王の能力だろう。
「それじゃあ、俺も行きますか。」
俺は、迷うことなく、そこを目指す。
◇
そこにむかっている最中、目の前で、フードを目深に被った女の子?が酔っぱらいに絡まれていた。何気に道を塞いでいて邪魔だ。でも、あそこを通ると、絶対俺も、絡まれるよなぁ。
「す…すみません急いでいるので、そこを退いて下さい。」
「いいじゃあ、ねぇ~か姉ちゃん、ちょっと、付き合えよ。」
「俺たちについてきたら、良いことがあるぜぇ~。」
はぁ~。
「呪神法"麻痺"」
「がぁ!!」 「な…なんだこれ…」
「ちょっと、通るよ。」
男たちの間を通り、目的地へ行こうとすると、
「あ…あの、ありがとうございます。貴方の魔法ですよね。」
振り替えると、さっき絡まれていた女の子がお礼を言っていた。顔は、フードで隠れていて、よく見えない。
「あぁ、気にしなくてもいいよ。それにしても、君、急いでいるんじゃあ無かったの?」
「あ!! 教皇様に呼ばれていたんだった。わ…私は、ルミナって言います。また、後日お礼させて頂きます。」
「俺は、新。別に、気にしなくても良いのに。」
「いえ、後日させて頂きます。」
「分かった。期待せずに待ってるよ。」
「すみません。それじゃあ、私はここで。」
「あぁ。」
ルミナは、急ぎ足でどこかにむかった。
さて、俺も、いくか。
◇
「ここか。」
目の前には、大きな屋敷があった。門の方へ、歩いていく。一応、顔は隠してある。
「おい、そこのお前止まれ。ここから先は、枢機卿の1人、トラッシュ様の屋敷だぞ。すぐ引き返せ!!」
「知ってるよ。」
ちらっと門兵の顔をみる。
「君は違うね。呪神法"麻痺"」
「がぁ!!」
俺は、門兵を麻痺させ、門を潜り、屋敷へむかう。
途中、次から次へとここの兵がやって来るが、ひたすら麻痺させ続ける。
ん、あの顔は…
「やっぱり、お前は対象者だ。呪神法"毒"」
「がぁぁぁぁぁ!!」
麻痺を最初にかけているので、男は叫ぶことしか出来ない。
すぐに全身に毒が回ったのか、 男はすでに死んでいた。
その後も、対象者は殺し、関係の無いやつは麻痺をかけ放置しながら、先に進んでいく。
「ここだったよな…」
躊躇いなく、扉を開けると、中にはいったい、いくら使ったのか分からないほど豪勢な調度品が置いてあった。その中央のベッドには、丸々と肥えた豚が待ち構えていた。
「ほう、ここまでやって来るとは、大したもんだ。だが、ここまでだ。おい、お前たち。」
後ろに控えていた、スキンヘッドの大男と長髪のヒョロい男が前に出てきた。
「一応、生かしておけ。誰からの手先か吐かせる。」
「へいへい。」 「分かりました。」
確か、2人ともあの豚に雇われた殺し屋だったかな… なら容赦はしないでいいな。とりあえず、
「呪神法"麻痺"」
「う゛」 「がぁ」 「ぐぅあ」
ついでにあの豚にも、かけておく。
あっ、あの豚気絶しやがった。殺し屋たちも、何か話そうとしてるが、いまいち聞き取れないので無視しておく。
「アラタ様、只今戻りました。」
「!? あぁ、シエンか。目的は済んだ?」
シエンが、音もなく戻ってきていた。
「はい。アラタ様に言われた通り、メイドたちは、別室に隔離しました。」
「ありがとう、シエン。」
そう、シエンには3つの事を頼んでいた。1つは、この件に無関係なメイドたちを別の部屋に隔離して貰うこと。執事はここに来る前に、殺している。復讐対象はもうこの豚だけだ。そして、2つ目は…
「それで、彼女は?」
「はい。この屋敷の地下部屋の方で、言われていた通りの特徴らしき女性は見つけたのですが…」
「手遅れだったか…」
「はい… すみません。」
「シエンが謝ることはいらないよ。シエンは良くやってくれたよ。」
「ありがとうございます。」
俺は、とりあえず殺し屋の元へむかう。
「呪神法"縛蛇"」
すると、漆黒の大蛇が現れる。大蛇は殺し屋の元にむかい、体全身に巻き付き、徐々に力を込めさせ、骨を粉々に砕いていき、最後には、絞め殺す。
「よし。それじゃあ、シエン、地下部屋に案内をお願い。」
「分かりました。こちらになります。」
俺は、気絶した豚を引きずって、シエンの後に続いていく。
◇
「ここになります。」
そこは何もない、壁の前までやって来る。
シエンは、壁の横に飾っていた花瓶を動かすと、
ゴゴゴゴゴ
壁が無くなり、階段が現れた。
「この下になります。」
シエンに続き、階段を降りていく。
「ぐうぇ ぐうぇ ぐうぇ ぐうぇ」
階段を降りるたびに、引きずっている豚から声が漏れる。
階段を降りると、そこは薄暗い牢屋部屋だった。
牢屋の中をみると、何人かの、女性が牢屋に入れられていた。
耳を澄ますと、微かに呼吸音が聞こえてきたので、生きてはいるようだ。
「シエン、彼女は?」
「こちらになります。」
そこには、体全身に痣や火傷、顔は原型をとどめていないほど腫れ上がっている女性が横たわっていた。つね日頃から暴行を受けていたのだろう。
「シエン、鍵を開けてくれ。」
「はい。」
シエンは、懐から、鍵束を取り出し、牢屋の鍵をあける。
「呪霊召喚"幽鬼の聖女"」
シエンは、俺が言わなくても、すぐ今纏っている呪霊を解除し、今召喚した呪霊を纏ってくれる。
「回復魔法"完全回復"」
顔の腫れ、痣や火傷が治っていく。
額に手をのせる。負の感情が流れ込んでくる。
「そっか… 逃がしたせいで、こうなったのか…」
俺は、ポーチからシーツのようなものを取り出して、彼女をくるみ、ポーチの中に入れる。
「シエン、ここにいる女性たちを治してから、上の部屋に移動させてくれ。」
「はい。」
さてと、こっちも取りかかりますか。
下に寝ている豚を蹴り起こす。麻痺は、既にといてある。
「おい、起きろ。」
「ぐうぇ… ここは?」
「起きたか… 呪神法"四縛鎖"」
壁から伸びてきた鎖が、豚の両手足に巻き付き、豚を宙を浮く。
「いぎっ!! お…おい、今すぐ私を降ろせ!!」
俺は、豚の声を無視して、呪具を作成する。
「おい、聞こえているのか!! いくらだいくら欲しい。貴様の欲しいだけの額を払うぞ。」
よし出来た。
即死の呪符 ・・・ 呪われた道具。呪符を貼られた相手は、1時間のうちに剥がさなければ、即死する。即死が発動後燃えて無くなる。
⬇️ (反転)
即死耐性の呪符 ・・・ 呪符を貼られた相手は、1時間の間、即死攻撃を受けても、死ななくなる。1時間経過すると燃えて無くなる。
減人化の飲み薬 ・・・ 呪われた道具。飲んだ後から、1時間の間、全ての体感速度が遅くなる。
⬇️ (反転)
超人化の飲み薬 ・・・ 飲んだ後から、1時間の間、全ての体感速度が早くなる。1分=438時間
「さてと、準備は出来た。」
超人化の飲み薬を豚の口に突っ込み飲ませ、呪符を貼り付ける。
「これで、終わりだ。 呪神法"死呪"」
豚の体に黒い痣が全身に浮かび上がる。
「!!」
「この声がいつお前に届くか分からないが、一応説明しておくぞ。死呪は、1時間の激痛を感じた後、死ぬ魔法だ。彼女たちの分も苦しんで死ね。」
牢屋を出た後、こいつが助けられたら困るので、更に呪神法を発動しておく。
「呪神法"黒箱"」
豚がいる牢屋全体を覆う黒い箱が出現する。
「よし、これで、すぐ助け出させることは無い筈だ。」
丁度終わったところで、シエンが戻ってくる。
「アラタ様、終わりました。」
「おかえりシエン。こっちも丁度終わったよ。それじゃあ、最後にやる事やってから帰ろうか。」
「はい。」
俺たちは、そのまま地下部屋を後にする。
◇
~数時間後~
「教皇様、ご報告が。」
「どうかしましたか?」
「そ…それが…」
「それが?」
「トラッシュ枢機卿の屋敷に賊らしき者が侵入したそうです。」
「賊らしき者ですか… それで、被害状況は?」
「それが、今現在調査中なのですが、既に、数人の死者が発見されております。枢機卿ご本人はまだ、発見出来ていないそうです。」
「数人ですか?」
「はい。枢機卿の腹心らしき者数名と指名手配されている殺し屋2名です。その他は、兵たちが麻痺された状態、メイドたちは、気絶した状態で発見されております。」
「そうですか… それにしても何か、おかしいですね。」
「おかしいですか?」
「えぇ、何故全員殺していないのでしょうか?」
「!? 確かにそうですね。」
報告を受けている間に、トラッシュ枢機卿の訃報が知らされた。
「地下の隠し部屋にあった黒い箱を壊すと、痩せ細って毛が白くなったトラッシュ枢機卿が見つかったのですか…」
私はこれが、聖女ルミナが言っていたように、不吉な事の始まりじゃないかと思っていた。
◇
俺たちは、宿屋に戻り休んだ後、朝一で、聖国の近くの湖に来ていた。彼女らの思いでの場所のようだ。
俺たちは、少し離れたところに、穴をほり彼女ら…姉妹を埋めてやる。
「安らかに、眠ってくれ。」
シエンと黙祷を行い、その場を後にする。
「殆ど、聖国内を回れなかったけど、別の国に行こうかシエン。」
「はい。私は、アラタ様についていくだけです。」
「ありがとう。それじゃあ、行こうか?」
「はい!!」
俺は、ポーチから馬型ゴーレムを出して、次の場所へと出発した。
今回の件で、お金に余裕が出来たので、次の場所では、ゆっくりしようと決めた。
3つ目の頼み事は、トラッシュ枢機卿の財宝の場所の調査でした。