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05:セシルの旅立ち


 母親ケイトの墓の前で、セシルとカートは祈りを捧げていた。ケイトが生きていたら、何と言ってくれただろう。やはり、父と同じように泣きながら送り出してくれただろうか?


 病弱だったが、とても優しかったケイトの事を思い出し、セシルはまた泣きそうになった。


「必ずここに、帰ってくるんだよ……いいね?」


 何度も、念を押すようにカートはセシルに言った。華奢で弱弱しく見えるセシルが心配なのだろう。セシルを見つめるその目は、旅立つのを拒んでいた。


 だが、セシルの決心は変わらない。夢の言葉もあるが、セシルはランディを助けたかった。


「ランディ……か」


セシルは自分でも不思議だった。確かにランディとは生死を共にし、絆もできた。口は悪いが良い人だし、一緒にいると勇気が湧いてくる。どんな絶望に直面しても、ランディとなら立ち向かえる、そんな希望を与えてくれる人だ。


(たった一日……いや、半日一緒にいただけでここまで思えるなんて……不思議だな)


 まるで出会う前から知っている間柄のようで。何か運命を感じるのだろう。そうセシルは思う事にした。


「あれぐらいしっかりして、年上の女の子の方がセシルにはピッタリかも……いや、尻に敷かれすぎるか……」

「もう! お父さん何言ってるの……お母さんの前で変なこと言わないでよ……」

「ギィさんも一緒だしな……あぁ! ますます不安だ!! ケイト、セシルを見守ってくれ!!」


 大げさだなぁと小さく笑いながら、セシルはこの旅が危険で不安に満ちた旅になりそうだと予感していた。


 このままアイオ村にいれば、一生平和で幸せに暮らせるかもしれない。いや、きっと後悔する。そしてその結果は、最悪な未来に繋がると何かが告げていた。


「お父さん、待っててね。絶対生きて帰ってくるから……これからも、僕はお父さんの子どもだからね」


 そう言うと、カートはそうだ、そうだと頷いた。


(本当のお父さん……か)


 本当の父親は生きているのだろうか。そういえば、ランディも父親を探していた。


(どんな事があっても、僕のお父さんはお父さんだけだからね)


 カート以外の父親など、考えられない。もちろん母親もだ。優しかった母を思い出し、セシルはぎゅっと手を握り締めた。




 村の入口に、ロンはいた。セシルの旅立つ姿を見てポカンとしている。


「何だよその格好……どこ行くんだよ……」

「ランディのお手伝いをしに行くんだ。ロン、元気でね」

「セシルが……? お、お前なんか弱っちいくせに行ったって足手まといになるだけだろ、カッコつけんなよ!」


 動揺しカッとなったロンの言葉は、セシルを傷つける。だが、セシルはロンに言葉を返さず、父の方を向いて最後のお別れをした。


「じゃぁ、行ってきますお父さん。元気でね……!」

「必ず生きて帰ってくるんだよ……!」


 二人共涙腺が緩みかけて、お互いの手を強く握り締めた。当分帰ってこれないだろう、父の顔も再び見れるかもわからない。それでもセシルは旅立った。ランディを助けるため、己の道を切り開くだめに。


 父の手を離し、セシルは西の方角に向かって歩き出した。目指すはトド山だ。


 ランディ達はさすがに今日は山越えをしないだろう。途中で夜になってしまうからだ。山にはアイオ村と違って人を襲うモンスターが潜んでいる。だから山の入口でおそらくキャンプをして、明日トド山に入るはずだ。


(必ず僕はここに帰ってくる。またね、アイオ村)


 セシルが振り返ると、カートとロンが手を振っていた。涙腺が緩む。しかし、こんな所で立ち止まっている場合じゃない。


 セシルはちぎれんばかりに手を振り返した。それから想いを断ち切るように走り出した。





第一章旅立ち終了です!第二章に続きます^^

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