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03:森の聖域


 セシルの手の中の光石がポォッと暖かくなり、眩い光を放つ。すると目の前を遮っていた何かが消え、木々で遮られているように見えていた場所に道ができた。


 その道を進むと広い草原に出た。草原の中央には石碑が立っており、その前にはグロテスクで巨大な髑髏がぷるぷると震えながら浮いていた。


「うっ……何だアイツ……吐きそうだぜ……!」


 大きな頭蓋骨からはうじがうねうねと這いまわり、穴から触手のように出ている。その気持ち悪さにおもわず手で口をおおうランディ。セシルは顔面蒼白でそれを見ていた。


「親父はいなさそうだな……あの声はコイツだったのか? セシル、ずらかるぞ!」


 髑髏のモンスターは敵意を放っており、今にも襲いかかってきそうだ。こんな気味の悪いのと戦いたくないランディは元来た道を引き返そうとした。


「なっ……!? 道が消えてるだと!?」


 道は木々に阻まれ、消えていた。それでも進もうとしたが、見えない壁に阻まれて進めない。


「セイイキ アラスヤツ シネ タカラ ワタサナイ」


 モンスターは怒気を孕んだ声を出しながら、プルプルしている。


「宝なんていりません! 聖域に入った事は謝ります!」

「セシル! 危ない!!」


 ランディがセシルの襟を掴みひっぱる。セシルの足元にドロリとした液体が広がった。しゅわしゅわと液体は草を溶かし、胃液のような悪臭が立ち込める。二人は顔をしかめ、鼻をつまんだ。


「何この臭い……!」

「オエッ! セシル! また来るぞ!!」


 今にも倒れそうなセシルに、ランディは声をかける。あんな液体かけられたら、一生臭いが取れなさそうだ……。


「気持ち悪い! ファイアー!!」


 セシルは必死で避け、すかさず火の玉を連続してぶつける。心なしか、火の威力も強くなっているような気がした。


「ユルサナイ セイイキアラスヤツ ユルサナイ!」


 髑髏が液体を吐き散らす! 二人は悪臭に顔を顰めながら必死で避けたが、セシルのブーツに当たってしまった。

「う、うわぁ、お気に入りなのに!」

「今はそういう事言っている場合か!」


 液体のかかった部分に穴が開き、セシルの靴下が見えている。


「当たれ!」


 ランディも矢を放つが、決定的ダメージにはならない。


「コイツを倒さないと、出られないのか……チッ!」


 セシルの放つ火の玉は多少効いているらしく、動きが鈍くなってきている。プルプルと震え禍々しいオーラを放ちながら毒を撒き散らす髑髏。どうしたらこんなヤツに自分の矢が通じるのだろうか。


 その時ランディの脳裏にあの女神像が浮かんだ。


「頼む、女神よ。俺に力を!」


 女神に祈りながら、ランディは渾身の一撃を放つ。すると矢は白く輝きながら髑髏に突き刺さった。


「ガァァァァァァァァ!!!」


 突き抜けるような悲鳴が響き渡り、髑髏が放つ禍々しいオーラが浄化されていく。


「スゴイよランディ!」

「何かよくわかんねぇけど、まだだ! セシル、止めをさせ!」

「うん! ファイアー!!」


 セシルが唱えると、突如火の玉はぶわぁぁと大きな火の塊に球速回転していった。


「え、何で?」


 火の塊は回転をやめるとサラマンダーへと姿を変え、髑髏に襲いかかる。サラマンダーが激しい火力で髑髏を締め上げると、髑髏は膨らんでいき、突如ポンッ! と弾け飛び、無数のプルン達が空からバラバラと落ちてきた。


「プルン達が合体して、巨大モンスターになっていたのか……驚きだぜ」

「プルン達にこんな能力があっただなんて……」


 草の上に落ちたプルン達はぷるぷると微かに震えていた。


「もう大丈夫だよな?」


 皆もう攻撃する意思がないようで、ランディが突いても何の反応もない。

 その光景を呆然と見ていた二人だったが、ふと石碑の横に宝箱があるのを発見する。


「こんな聖域で守ってる宝箱だ、きっとスゴイもんに違いないぜ!」

「え? 開けて大丈夫かなぁ」

「大丈夫だろ、髑髏倒したんだし!」


 二人は銀色に輝く宝箱に近づく。ランディは喜々として宝箱のふたを開けた。中身を見て、二人の顔が凍りつく。


「「う、うわぁぁぁぁ!!?」」


 そう叫ぶと、二人は慌てて飛びずさる。セシルは腰を抜かし、尻餅をついた。


「く、く、首だ……!」


 宝箱の中身はお宝でも何でもなく、人のものと思われる頭部が入っていたのだった。


「マ、マヂかよ……」


 驚きながらも、ランディはじりじりともう一度宝箱に近づき、覗き込む。すると、中に入っている頭部の目がカッと見開き、すーっと浮かび上がったのだった。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


 転がるようにセシルの元へ逃げるランディ。セシルは恐怖で口を戦慄かしていた。


「やぁ、助かりました。あなた方が私を出してくれたのですね。ありがとうございます、困り果てていたのです」


 耳障りの良い、優しそうな声で頭部はお礼を言った。どうやら助けを求めていた声の主はこの浮かぶ頭部だったらしい。


「モ、モ、モンスターめ! かかってこい! 俺が相手だ!」


 ランディが勇ましく弓を構えると、横でドサっと何かが倒れる音がした。


「セシル!?」


 精根尽き果てたセシルは気絶してしまったようだ。


「大丈夫ですか??」

「大丈夫じゃねーー!! おい、セシル、セシル! しっかりしろ! 俺を一人にするなーーー!!」


 ぺちぺちとランディはセシルの両頬を叩くが、セシルは目を開くことはなかった。そうこうしている内に頭部はランディの真横まで近づいてきていた。


「心配ですねぇ」

「うわっ! 何普通に近づいてきてんだよ!? あっち行けーー!」


 遠のく意識の中で、セシルはランディの叫びを聞いていた。


(ランディ……大丈夫、あの頭部はそんなに悪いものじゃないよ……)


 不思議と、セシルはそんな気がした。どこかで見たような気がする。


(どこだっけ……あぁ、女神像だ……)


 女神像の慈悲深い顔を頭部の顔と重ねて、セシルの意識は深く沈んでいった。





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