着物姿の。
誰かに守られているーーそう、きっと。
気のせいだろうと思っていた。
率先して聞くことはなかった。
知りたくもない。
母親が妾だったとか、そんなのは。
彼女は若くして、その関係からつま弾きにされる。
だって、しょせん余所者だったから。
きっと、親族一同から厄介なのであったのだろうか。
なのに、周りの世話を託された。
血の繋がらない者達を敬い、時には厳しく躾る。
明日など地獄にしか過ぎない。
それでも歯を食い縛り、やがてワタシが生まれた。
「ねぇ、このひと、だあれ?」
時代が合わない。
背景にはそぐわない。
どこか安らぐ、その佇まい。
夥しく流れ落ちる滝をバックに。
着物姿の似合う、朗らかな笑顔。
それが祖母だとはまったく思いもよらずに。
「おばあちゃんよ」と。
母が告げた。
最近になって母親からその写真を「失くした」と。
……奉れよ!!