優しさ
そう。第7代皇帝 醒月は女である。
醒月の言葉に有鄰は微笑んだ。
「よかれと思ったからです。」
「それは答えになってない!!!それに人に見られたらどうするんだ!」
「あら、大丈夫ですわ。ここは私が使っていた別棟ですし頴達殿以外にはおりません!人払いもしております。それに…
勿体のうございます。18の娘といえば着飾り、浮かれる頃ですし、貴方は国一番の美姫と呼ばれた、今は亡き母君によく似ていらっしゃるそうではないですか。」
「…兄上の方が母に似ていた。」
「いいえ、貴方と兄君は瓜二つであったと聞いております。…だから兄君、醒月様に成り替わることができたのでしょう?」
醒月は生まれた時から男として育てられた訳ではなく2歳上の兄である本当の醒月の死後、醒月となった。
亡くなったのは己が妹姫として。
「…そう憐れむな。私は別に満足しているし、後悔している訳でもない。」
有鄰は苦い物を飲み込むような顔をしておし黙る。
「それに私は貴方のような美しい姫を妻にできたし、ほーらこんなに可愛い娘もできた。」
醒月は傍らですやすやと寝ている有鄰の娘に目を向ける。
「しかも私は…」
「私は?」
「こうしていた方が性に合ってるんだ。走り回れることがうれしい。何しろ元おてんば公主だからな。でも衣の重さは変わらないな。」
やけに真面目な声で言ってやるとぷっと有鄰は吹き出す。
「貴方はこれだから…出すぎたことを申しましたわ。」
「じゃあこれ脱いでいい?」
「だめです」