第74話 新サービスの考案。
その日、御影はクラリスの一件の後始末を終え、メイド喫茶へと出勤していた。
「うーん。チェキみたいなサービスやりたいよな」
御影はボソッと呟いた。
御影の居た世界では、好きなメイドさんと一緒にチェキが撮れるサービスが存在した。
「何ですか、チェキって?」
同じくバックヤードに居た杏が御影に尋ねて来た。
「ああ、絵がすぐに描ける魔法の道具って感じかな」
この世界にチェキというものは存在しないため、御影はそう答えた。
「へぇ、そんなのがあるんですか。面白そうですね」
「そうなんだよ。好きなメイドさんと一緒に一枚の紙に描けたら、サービスとして、成立するんじゃないかと思ってな」
「なるほど。いいと思いますそれ」
杏は賛成してくれた。
「でもな、その道具はもう、手に入れないんだよな……」
「そうなんですか。御影さんの魔法でも何とかならないんですか?」
「あ、その手があったか。それは試したことが無かったな」
御影は自分の魔法で絵を描くなど、考えてもみなかった。
「ちょっと、試してみるか」
「はい、是非!!」
「そうだな。とりあえず、杏を描いてみよう」
『ドローイング』
御影は近くにあった紙に杏の姿を転写するイメージで魔法をかけた。
すると、真っ白だった紙にまるで写真かのような杏の姿が転写されていた。
「凄い、私が映っています! 成功ですね!!」
「ああ、そうみたいだな」
我ながら、本当にできてしまうとは……
魔法はイメージ次第だと言うが、本当にその通りなのだろう。
「これなら、メニューにも新しいサービスとして載せられますね」
「ああ、そうだな。しかし、」
これには問題点があった。
「この魔法、俺しか使えないんじゃないか?」
御影が使ったのは咄嗟に考えたオリジナル魔法である。
これを他の人間が同じように使えるかと行ったら、まず不可能であろう。
「あ、確かにそうですよね。御影さんが出勤している時の限定サービスになってしまいます」
「まあ、それでもいいんだが、せっかくならいつでも描いて渡せるようにした方がいいよな」
「そうですね」
「また、誰でもドローイングが使える魔道具開発するか」
御影はそう言って小さなため息をついた。
「いいサービスだと思ったんだけど、問題は山積みだな」
「あんまり、無理しちゃだめですよ」
杏が気遣ってくれた。
そして、メイド喫茶の営業時間が終わると、表に出してある看板を片付けると杏と共に帰路に就いた。
屋敷に戻ると、御影は部屋に籠り、チェキの代用となる、魔道具の開発に取り掛かった。
「魔法石はまだあるな。だったら、ドローイングの魔法式を組み込んだら出来るんじゃないかな」
御影は少し大きめな魔法石を取り出し、魔術式のプログラムに取り組んだ。
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