第68話 身請けを申し出ます
御影は夕霧の居る遊郭へと向かった。
ちょうど昼過ぎくらいの時間だ。
「よし、ここだな」
数十分歩き、昨日の遊郭の前まで到着した。
中に入ると数人の遊女たちが居た。
「あら、お兄さんこんな時間からお遊びですか?」
一人の遊女が尋ねてきた。
「いや、ここの楼主に会いたいんだが、いいかな?」
「お兄さん、お名前は? まだ若そうだけど」
「叢雲御影だ」
御影の名前を聞くとその遊女の表情が変わった。
「すぐに呼んで参ります」
そう言うとその遊女は奥へと入っていった。
玄関でしばらく待たせてもらうと40歳前後の中肉中背の男が出てきた。
「お待たせして申し訳ございません。ここの楼主をしておりますレインと申します」
「叢雲御影だ。少し話があって来た。突然の訪問になってしまい、申し訳ない」
「とんでもございません。さあ、どうぞこちらへ」
御影は和室の応接間と思われると所に通された。
「それで、お話というのは?」
「単刀直入に言わせてもらう。夕霧を身請けさせてもらいたい」
その言葉に楼主は驚いた表情をした。
「正気ですか? いくら最強賢者様と名高い御影さんでも、夕霧はうちのトップの遊女です。身請け金もかなりの額になると思いますよ」
「分かっている。金ならいくらでも払ってやる。そうだな、王金貨で50枚くらいでどうだ?」
「お、王金貨!?」
王金貨とは白金貨の上の硬貨であり、王金貨50枚は日本円にしたら5億円くらいになるだろう。
「それで足りないようなら言ってくれ。言い値で払おうじゃないか」
「いやはや、御見それ致しました。流石は最強と名高い方だ。交渉の仕方を知っている。分かりました、身請けを許可しましょう」
「ありがとうございます」
「身請け金は王金貨30枚ということで構いません。それでは夕霧を連れて参ります」
そう言うと楼主は部屋を後にした。
それから数分後、楼主は夕霧を連れて戻ってきた。
「あら、昨日のお兄さんじゃない。ばっちり決めてどうされたのですか?」
「こちら、お前を身請けしてくださる、叢雲御影さんだ」
「私を、身請け……」
夕霧は信じられないという表情をした。
「では、御影さんよろしく頼みます」
「ああ、もちろんだ。これ、約束の王金貨30枚な」
御影は懐から革の袋に入った王金貨を楼主に渡した。
「え、今ですか。しかも一括とは……」
「分割とか後払いとか色々面倒だからな」
「私の身請け金をポンっと出すなんて……」
夕霧はこの時確信した。
この男だけは敵に回したらヤバイということに。
「今日から連れて帰ってもいいのか?」
「もちろんでございます。身請け金も頂いてますから」
「ありがとう。じゃあ、夕霧行こうか」
「は、はい!」
「今後ともご贔屓に」
御影は楼主に見送られると遊郭を後にした。
「今日からよろしくな、夕霧」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ところで、あなたは一体何者なんですか?」
「叢雲御影、最強と言われた男だ」
そう言うと御影は夕霧に向かって微笑みを浮かべた。
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