第67話 遊女を辞めさせる為には。
それから、御影も自分の部屋で眠りについた。
「おはよう」
三時間ほど寝たであろうか、御影はリビングへと降りて行った。
「おや、いつの間にお帰りになられたのですか?」
執事のロランが不思議そうに尋ねてきた。
「御影さんは朝帰りしたんですよ」
御影が答える前に杏が不機嫌そうに言った。
「そうでございましたか。旦那様もたまには良いと思いますよ」
ロランは優しい笑みを浮かべた。
「それで、ロランに相談したいことがあるんだけどいいかな?」
朝食を食べ終わるとロランに尋ねた。
「何でございましょうか?」
「遊女を辞めさせっ手自分のところで働いてもらえるようにする方法ってないかな?」
「無いことはございませんが……」
「教えてくれ」
「かしこまりました。遊女には身請けという制度がございます。これは遊女を買うということになりますので、その遊女がこれから稼ぐ予定だった金、借金などお支払わなければなりませんので莫大な金がかかります。特に人気の遊女なら料金も高くなります」
ロランは身請けの制度について説明してくれた。
花魁や遊女たちは農村などのお金がない家庭から遊郭に売られてくる者がほとんどだった。
売られてきたときの身代金はそのまま遊女たちの借金となる。
また、借金の利子が高額で、どれだけ働いても借金が減らないのだ。
そのため、年季が明ける前に借金を返し終わることはないとされていた。
「その身請けをするにはするにはどうしたらいい?」
「まずは、店の楼主に遊女の身請けをしたいということを相談する必要がございます。許しが出ればお金を支払い、身請けすることは可能だと思います」
「わかった。ありがとう。早速行ってみるか」
「もう、行かれるのですか?」
「善は急げだ。早いに越したことはないだろう」
御影は白シャツに三つ揃えの黒スーツに紺のネクタイ、白手袋をはめた。
髪型もばっちり決めていた。
「あれ、御影さん、あんなに気合入れてどこ行くんですか?」
「そうね、白手袋まではめるなんて珍しい」
御影が白手袋をはめるときは決まって特別な時とされていた。
「遊女を身請けされるそうですよ」
杏とクラリスの疑問にロランが優しい声で答えた。
「また、この屋敷に女を増やす気ね……」
杏はため息をついた。
「まあまあ、そう言わずに。旦那様のことですきっと何か考えがあるのでしょう。あの方が何の考えも無しに動くとは思えません」
「前から思っていたんですけど、ロランさんは御影さんを過大評価していませんか?」
杏が尋ねた。
「とんでもない。僭越ながら、私は杏様達より長いこと旦那様を見てきました。あのお方は普段はロクでなしなことも度々ありますが、やるときはやるお方です。なにせ、テロリストをたった一人で相手してしまうようなお方ですから」
「ま、それもそうですね。すみません」
「いえ、出過ぎたことを申しました」
三人は屋敷の中に入ると昼食を食べるようであった。
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