第66話 御影が泥酔しました。
今夜、御影は珍しく公爵家で公爵様と酒を酌み交わしていた。
「いやぁ、御影くんとこうして酒が飲める日が来るとはなぁ」
「ええ、僕も驚いてますよ。公爵様から誘って頂けるなんて」
この時、御影は調子に乗ってかなりの量の酒を飲んでしまった。
「じゃあ、遅いですし、そろそろ帰りますよ」
「おぉ、もうこんな時間か気をつけてな」
「ありがとうございました」
御影はフラフラしながら屋敷までの道を歩いている……はずだった。
「あれ? どこだここ」
どうやら反対方向に歩いてきてしまったみたいだ。
「あ、ここはマズいな……」
そこは王都一の歓楽街。
娼館や飲み屋が建ち並んでいる。
「お兄さん、凄いカッコいい。どう? 私と朝まで遊ばない?」
「あれ? お兄さん最強賢者様じゃない? そんな女より私とどう?」
二人の綺麗なお姉さんに言い寄られた。
二人とも綺麗目な和服姿であった。
いわゆる、遊女というやつであろう。
「私が先だったでしょ?」
「賢者様は私がいいよね?」
御影はだいぶ酔っていた為か最初に声を掛けてきた女の子の誘いに乗ってしまった。
遊女に連れて行かれた先は和室の個室であった。
「改めまして、夕霧と申します。よろしくお願いします」
夕霧と名乗った彼女は綺麗に挨拶をしてくれた。
「お兄さん、さっき最強賢者様って言われていたわよね?」
「ああ、まぁそう呼ばれていたかな」
「へぇ、そんな凄い人がこんな所ウロウロしてたんだぁ」
「今はただのメイドカフェのオーナーだよ」
「え、じゃあ、セルヴァントってお兄さんのお店なの?」
「まぁな」
そこから夕霧と何があったかは説明するまでも無いであろう。
気づくと御影は上裸の状態で目が覚めた。
「ここは……? 俺は何してる?」
「あれ、やだ、お兄さん忘れちゃったの? 昨日は凄かったのに」
「てか、今何時だ!? 朝……だよな?」
「ええ、もう朝だけど」
「帰らなきゃマズい!!」
御影は急いでスーツに袖を通すと屋敷まで全力で走った。
屋敷の前まで着くと玄関の鍵を開け、そーっと中に入り、階段を登ろうとしていた。
「御影さん!!」
後ろから杏の声がした。
「は、はい!?」
「朝帰りとはいいご身分ですね? 今までどこで何してたんです?」
「そ、それはちょっと友達と飲んでて」
「正直に言いなさい! 御影さんは嘘が下手なんです!」
杏はいつも御影の嘘を簡単に見破ってしまう。
「酔った勢いで娼館に……」
「はぁ、そんな事だろうと思いました」
杏は呆れた顔をしていた。
「いいですか、別に御影さんがどこで何をしてようと子供じゃないんだから文句は言いませんけど、帰らないなら帰らないと連絡くらいしてください。どれだけ心配したと思っているんですか?」
「すみません……」
何故か杏には頭が上がらない。
「私は寝ます!」
「あ、ああ、おやすみ」
杏は階段を上がり、自分の部屋へと入って行った。
「あの子、何か引っかかる……」
御影は相手をしてくれた女性が何となく気になっていた。
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