第59話 アラベル、メイド卒業。
いよいよイベント日当日となった。
今日は二号店を臨時休業とし、本店で卒業イベントが行われる。
アラベルがピンクの黒のフリルが付いたドレスを着てお店に来た。
「おはようございます。これ、凄く可愛いですね」
「おはよう。うん、よく似合っているよ」
「ありがとうございます」
今日はアラベルの最後のお給仕ということで、朝から行列ができていた。
「アラベルちゃん、メイドさん辞めちゃうの?」
「うん、そうなの。ちょっと、王都を離れることになってね」
「そっかぁ。それは寂しくなるな」
アラベルを推していたご主人様方は残念だろう。
「じゃあ、最後にアラベルちゃんのオリジナルカクテルをお願いしようかな」
「本当ですか! ありがとうございます」
アラベルはその注文を取ると、嬉しそうにカクテルを作り始めた。
「はい、お待たせいたしました。卒業記念カクテルです」
「おお、ありがとう」
ご主人様はオリジナルカクテルを一口飲んだ。
「うん、これ、凄くおいしいよ」
「それはよかったです」
その後もご主人様方が途絶えることは無かった。
なんとか回して、閉店の時間が近づいた。
「よし、これで最後のお客さんだね」
「そうですね」
御影たちは最後のご主人さまがご出発なさるのを見届けた。
「今日もお疲れ様」
御影は外の看板をcloseにしてからアラベルたちメイドさんに言った。
「「「お疲れ様でした」」」
こうして、アラベルの最終お給仕は幕を閉じようとしていた。
「最後に、アラベルからひと言お願いしてもいいかな」
「はい、わかりました」
御影に促されてアラベルが一歩前へと出た。
「えー、皆さん、急な話になってしまってごめんなさい。短い間でしたが、皆さんと一緒にお給仕できたこと、遊びに行けたこと、友達ができたこと、凄く嬉しかったです。また、王都に戻ってきた時は遊んでください」
そう言ってアラベルがペコリと頭を下げた。
「もちろんよ」
「私たちも楽しかったです」
「また、一緒にカフェ巡りしたいです」
皆、それぞれアラベルへの想いを語った。
「御影さんも、こんな私をここで働かせてくれたこと、感謝しています」
「おおよ、またいつでも戻ってきていいからな」
そう言って微笑んだ。
「あ、それと、これが今月分のお給料ね。お疲れ様」
「ありがとうございます」
そして、それぞれが帰路に就いた。
あれから一週間が経過した。
アラベルが王都を離れる当日である。
「アラベルー!!」
御影は杏とクラリスと共に、アラベルの家の前に来ていた。
「あ、御影さん、来てくれたんですね」
「うん、見送りくらいさせてよ」
すると、家の中からアラベルの父親と母親が出てきた。
「これは、賢者様、娘が大変お世話になったようで。ありがとうございました」
夫婦そろって頭を下げた。
「いえ、こちらこそですよ。どうか、頭を上げてください」
その言葉で夫婦は頭を上げた。
「元気でね」
「また会いましょ」
杏とクラリスがアラベルの手を取った。
「皆さんもお元気で」
「おう、またな」
こうして、アラベルは王都から離れて行った。
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