第58話 アラベルの卒業イベントの準備です。
アラベルから事情を聞いたその日の夜、クラリスと杏にアラベルがメイドさんを卒業する事を話した。
「そうなんですね……」
「アラベルさんとは仲良くしていたので、寂しくなりますね」
二人はそっと目を伏せた。
「それで、アラベルの卒業イベントをしようと思うのだけど、協力してくれるか?」
「「もちろんです!」」
「ありがとう。じゃあ、明日アラベルをうちに呼ぶか」
翌日、アラベルに叢雲家の屋敷に来てもらった。
「おぉ、わざわざ来てもらってすまんな」
「ここ、御影さんのお家なんですよね?」
「そうだよ」
「凄く大きくてびっくりしちゃいましたよ。なんか、緊張しますね」
「まあ、とにかく入ってくれ」
御影はリビングに招き入れた。
「いらっしゃい!」
「お待ちしてました!」
杏とクラリスも既にリビングで待機していた。
「杏さん、クラリスさん、急な話で申し訳ありません」
アラベルがペコっと頭を下げた。
「いえいえ、聞いた時はびっくりしましたけど、最後くらいは盛大にやりましょう!」
「ありがとうございます」
そして、御影たちはイベントの相談を始めた。
「んー、当日はアラベルさんだけ違う衣装がいいと思うですよ」
「なら、呉服店の店主に作らせよう」
「あとは、アラベルさんのオリジナルカクテルなんてどうでしょう?」
「お、それもいいな!」
続々とイベントへのアイディアが出て来た。
「オリジナルカクテルを頼んでくれた人には特典も付けるか。何がいいかな」
「手書きのメッセージとかでいいのではないでしょうか?」
「そうだな、それで行くか!」
その日はだいたい三時間ほど打ち合わせをして解散となった。
杏がアラベルのオリジナルカクテルを考えてくれるという。
杏は絵も得意だし、お酒にも詳しいので適任だろう。
翌日、杏がスケッチブックを手に部屋から降りて来た。
「こんな感じでいかがでしょうか?」
それは、ピーチリキュールをオレンジジュースで割って、上には生クリームとさくらんぼが乗っている、シンプルなものだったが、アラベルのイメージにも合っているのではないかという見た目だった。
「うん、いいと思うよ。これでいこうか。このメニュー、アラベルに伝えといてもらえるか?」
「はい、分かりました」
そして、御影は屋敷を出ると呉服店へと向かった。
「いらっしゃい。お、御影先生ご無沙汰です」
「ああ、久しぶり。繁盛してるみたいだね」
「ええ、おかげ様で。それで、今日はどういったご用件でしょうか?」
「それなんだが、こういう服を作ってもらいたい」
ピンクと黒のフリルが付いたお嬢様のようなドレスのスケッチを見せた。
「分かりました。これでしたら明後日にでも出来上がると思います」
「それは助かるよ。よろしく頼む。」
これで、あとは、当日を待つのみというところまで準備が整った。
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