第47話 最強の護りし者。
クラリスの二号店の店長が決まったその日、御影は自分の部屋で就寝する準備をしていた。
「お、そろそろ寝ないと明日まずいかもな」
時刻は午前0時を回っていた。
その時、執事のロイクがノックしてきた。
「旦那様、少々よろしいでしょうか？」
ロイクがこんな時間にわざわざ来るのはよほどの事なのだろうと察しがついた。
「入っていいよ」
「失礼致します」
「それで、何かあったの？」
「はい、メレーヌ様がまだお戻りになられていません」
「何！？ 通信機は？」
「鳴らしてみましたが、反応がございません」
おかしい。
普段のメレーヌならメイド喫茶の勤務が終われば直帰する。
22時過ぎくらいには戻ってきていいものなのだが。
「どうやら、何かに巻き込まれた可能性が高いな。俺、ちょっと探してくる」
御影はパジャマ姿からいつものスーツに袖を通した。
そのまま、玄関から飛び出した。
「あれ？ 御影さんどこか行かれたのですか？」
物音により、クラリスが目を覚ましてしまったようだ。
「ええ、メレーヌ様を探してくると急いで飛び出して行かれました」
「え！？ メレーヌさんまだ帰ってないんですか？」
「ええ、私も心配で旦那様にお伝えしました」
「私たちにも何か出来る事は……」
「今、私どもに出来ることは旦那様を信じて待つ事ですよ」
「でも、」
「心配要りません。私の仕える方はいくつもの修羅場をくぐってきた方です。私は今まで、あの方のお傍におりましたから。信じましょう」
「はい」
その頃御影は王都全体に探索魔法を展開していた。
本来であれば、広くとも数十メートルが限界だが、御影の魔力にかかれば王都全体を囲む事も造作もない。
これで、メレーヌの命が途絶えてない限りは見つける事ができる。
「俺を舐めるなよ」
御影の目から笑みは消え去っていた。
「見つけた」
そこはセルヴァントの店舗がある表通りから外れた裏通りの廃墟であった。
「急ぐか」
御影は転移魔法を展開し、廃墟の前へと転移した。
「相変わらず治安が悪いなここは」
後ろから睨まれた奴らに殺気を飛ばし、御影は廃墟の中へと足を踏み入れた。
「近いな」
メレーヌの気配は確実に近くなっていた。
「ここか」
目の前にはコンクリートのような壁と鉄の扉があった。
扉に手を掛けたが、開く気配は無かった。
「ああ、もう、面倒だなぁ」
御影は扉を思い切り蹴り破って中に入った。
そこには縛られたメレーヌと数人の男たちの姿があった。
「何やってんだお前ら」
「御影さん！！」
メレーヌは今にも泣き出しそうな顔をした。
「遅くなって悪かったな。迎えに来たぞ」
「い、今、御影って言わなかったか？ ヤバイぞこいつ」
男たちは御影の名前だけは知っていたようだ。
「うちのメレーヌが世話になったみたいだな。覚悟は出来てるな？」
御影の目に怒りの灯火が灯った。
「お前ら、ビビるな！ やれ！」
男たちがナイフを抜き襲いかかってきた。
「雑魚が」
男のみぞおちに一発入れ、もう一人の方にも回し蹴りをお見舞いした。
「お前もやるか？」
リーダー格の男に問う。
「ひぃぃぃ！」
男はガタガタと震え、とても抵抗出来る状態では無かった。
「ごめんな。怖かったよな。もう大丈夫だから。帰ろう」
御影はメレーヌの手を取った。
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