第23話 エルフの里へ行く準備をします。
とりあえず、レイシャとエマに一通りの事情を聞き、今日の泊まる場所も決めていないとのことだったので、御影は自分の屋敷へと招待した。
「ここです。まあ、入ってください。」
「ここ……ですか。大きい」
レイシャとエマは御影所有の屋敷の広さに驚いているようであった。
王様や公爵様の屋敷に比べたら、全然大したことはないのだが。
「ただいま」
「おかえりなさいませ。旦那様。おや、今日はまた大勢でご帰宅ですね」
「ああ、ロイク。この二人はレイシャとエマだ。クラリスと同じエルフの里、出身の子たちだ。今日はうちに泊めようと思うからよろしく頼む」
レイシャたちは執事の存在にも驚いたようであった。
「かしこまりました。クラリス様のご友人とは。私、叢雲家の家令を務めております、ロイクと申します。それではお二人のお部屋にご案内いたします」
ロイクが二人を客室へと案内した。
みんなで夕食を食べ終え、御影はロイクと話していた。
「明日からしばらくエルフの里へ行って来る。その間、屋敷の管理とうちのメイドカフェをよろしく頼む」
「承知いたしました。旦那様が不在の間、このロイクがお屋敷をお守りいたします」
「ありがとう。助かるよ」
こういう時に優秀な執事が居ると本当に助かる。
翌朝、みんなが起きてきたタイミングで昨日、ロイクと話したことを皆に伝えた。
「ということで、俺はクラリスとレイシャ、エマとエルフの里に向かう。その間、家のことはロイクさんに、メイドカフェの事は杏に任せる」
「承知いたしました」
「分かったわ」
「みんな、ありがとう。迷惑かけるな」
御影は軽く頭を下げた。
「旦那様の暴走は今に始まったことではございませんから、迷惑などと思っておりませんよ」
「あなたの、世の中の理不尽や人のために本気で怒れて、行動できる人、私は尊敬しております。私、初めてこの人についていきたいと思えたのですから」
二人のその言葉に御影は思わず目頭が熱くなった。
「私どもの旦那様は元最強の賢者といわれた方なのですよ。どうぞご存分に」
御影はしばらく王都から離れることを王様と公爵様に伝えた。
「ほう、面倒ごとを嫌うお前さんがそこまで熱くなるとはな」
「うちの副店長に関わることは、うちの店にも関わりますし、トラブルの芽は早めに摘んでおくことに越したことはありません」
「まあ、うちとしてもそんなふざけた儀式を放任するわけにもいかないしな」
「存分にやってこい」
エルフの里も一応は国の一部なので王様たちも快く承諾してくれた。
「ありがとうございます」
御影は王宮を後にした。
屋敷に戻り、王様たちからも了承を得たことをレイシャたちに話した。
「王様ともお知り合いとは。御影様なら本当に何とかしてくれるかも」
「それで、エルフの里まで馬車を出してもいいが、それだと時間がかかりすぎる。エルフの里の正確な位置は分かるか？」
「分かりますが、それでどうなさるおつもりなのですか？」
「テレポートする」
「「「テレポート？！」」」
テレポートの本質は転移魔法と同じだが、転移魔法は一度行ったことのあるところにしか移動できないのに比べて、テレポートは正確な位置さえわかれば一瞬で移動することが出来る。
「そんなことが出来るのですか？」
「俺もやったことはないからわからんが、宮廷魔法師から教わった魔術式を組み替えれば五人くらいなら移動に差支えはないはずだ」
「魔術式の組み替え……もう、驚きませんわ」
こうして、御影たちがエルフの里へ行くことが決定した。
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