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第四話 パパが再婚!

 ママと瑶葵が亡くなってから半年が経った。あたしは高校二年生になり学生生活を楽しんではいられなかった。あたしはいまだにパパが許せなかった。だってひどいじゃない。留学のことはパパが勝手に学校に乗り込んできて、白紙になったの。

 次の日曜日にパパは、あたしに紹介したい人がいるというので、レストランへ行ったの。

「いやー、待ったか?」

 約束していた時間にちょうどレストランに着いたの。

「いいえ。さっき着いたばかりよ。その子が娘さん?」

「ああそうだ、双子の姉の駒葵だ」

「よろしくね、駒葵ちゃん」

 この人、あたしがパパの会社に行った時、パパと腕を組んでいた人だったの。でもなんで? まさか……パパこの女の人と……。

「よろしくってどういう意味なんですか?」

 あたしは嫌々にこの女の人に尋ねた。

「あら~、ごめんなさいね。馴れ馴れしかった? あたしは田村柚衣(ゆい)。あなたのお父様の会社で秘書をしているのよ」

と、本当に馴れ馴れしく言ったの。と、そこへ料理が運ばれてきて、あたしたちは食べることにしたの。料理は美味しかった。でも、この田村柚衣さんと一緒に食べているあたしはすごく嫌な雰囲気だった。

「駒葵、どうかしたのか?」

と、パパがあたしに言った。

「え? 別に。この料理美味しいよね。ねえ、あたしすっごく疑問なんだけど、どうしてパパは田村さんをあたしに紹介したの? だって秘書だからといって、紹介されるようだとは思えないけど……」

 確かに変だ。パパはなぜなの? パパが答えずに逆に、田村さんが言ったの。あたし初めは聞き間違いだと思ってた。でも田村さんは正直にあたしに向かってこう言ったのだ。

「あら、お父様から聞いてなかったの? あたしたち、結婚することになったの」

「け、結婚? パパ、どういうことなの?」

 あたしがパパに聞いてもパパは何も言わなかったの。突然すぎたことだったので、あたしはテーブルの上にあるグラスをじゅうたんに落としてしまったの。一瞬のうちにこのレストランにいる人たちがあたしたちのほうを見たの。

「駒葵ちゃん落ち着いて。今すぐに結婚するわけじゃないのよ。だいたい、奥さんと双子の妹さんは、半年前に交通事故で亡くなったのでしょう? まだ生きていたらなら、問題になるけど、死んじゃった人にはもう何も関係ないわ。そうよね、勇太さん?」

 この人、平然としてしゃべっているのよ。

「信じられない! パパ、ひどすぎる!」

 あたしは相当頭にきていたため、この田村柚衣に水をぶっかけてやったの。この際、呼び捨てでも構わないわ。そしてレストランから飛び出して近くの公園まで走って行ったの。

 一体どういうことなの? 結婚するって? パパはずっと前からママに内緒で、あの女と付き合っていたんだ。それで、ママが死んじゃったから関係ないですって? パパの帰りが遅くなっていたのもすべてあの女のためなんだ。留学のこともあの女のためだ、きっと。パパは一言も再婚するなんて言っていなかった。それなのに急に言われて……しかもパパ本人が言ったんじゃなくて、あの女が自ら言うなんて……。こんなときあたしはどうすればいいのよ! 空を見上げてあたしは瑶葵に聞いてみた。答えてくれるわけがないのにあたしは聞いてみたの。

「駒葵ちゃん。こんなところで何してるの?」

と、突然男の人の声がしたの。振り返ってみると川澄先輩だった。

「先輩こそどうしたんですか?」

「俺は塾の帰り。それにしてもお譲様だね~」

 先輩はあたしの服装を上から下までじっくりとみて言ったの。

「今、父と食事をしてきたんです。なんか久しぶりで……。あの、あたしこれで失礼します。さよなら」

「あっ、ちょっと待ってよ。駒葵ちゃん!」

 家に帰ってみるとパパはまだ帰っていなかった。それにしてもパパは一体どういうつもりで、田村柚衣と再婚なんてするんだろう。ママたちが死んでから半年。この半年間は何事もなかったように過ぎ去っていったのに……。本当なら夏休みに、ホームステイに行く予定だったのに。あんな事故が起こったので、行く気にもなれずキャンセルをしてしまった。

 朝方、玄関の開ける音がしたので目が覚めた。時刻は六時だった。眠気眼で下へおりていくと、パパが居間で新聞を読んでいた。パパがあたしに気がついて、

「あれ、起こしちゃったかな。すまん。朝ごはんはパパが作るからまだ寝ていなさい」

 けろっと言うパパ。

「パパ、昨日のことどういうこと? あたしにきちんと分かるように説明してよ!」

 朝からこうやって怒るのって一日が台無しになっちゃうけど、そんなことかまやしない。

「言わなかったのは、駒葵をびっくりさせたかったんだよ。でも仕方がないんだ。パパは田村柚衣さんと再婚する。もちろん駒葵には迷惑かけないつもりでいる」

 人が怒っているというのに、どうしてのんきに新聞なんて読めれるわけ?

「あのね! あたしが言いたいのは、ママたちが死んでからまだ半年しか経っていないのになんで、再婚なんかするのよ!」

と、あたしはパパが読んでいる新聞を投げ捨てたの。そしてパパが言った言葉は、

「駒葵、パパは時期に社長になるんだ」

 社長? そんな話聞いてないよ。もしかして会社のためだとか?

「駒葵と瑶葵は女の子だ。結婚する相手はどちらかが婿養子となる。そんなのおまえたちだって嫌に決まっているだろうし、相手の男の子も嫌だと思う。柚衣さんと再婚すれば、男の子が生まれるじゃないか」

「信じられない! パパの会社はその生まれてくる赤ちゃんと田村柚衣さんになるわけ?あたしはどうなるの? だいたい、生まれてくる赤ちゃんが男の子だという確証はないのでしょう? あたし、再婚なんて反対! 絶対に許さないから!」

 そこでまたあたしは、投げ捨てた新聞をパパに投げつけたの。それでもパパは、

「もう決めたことなんだ。パパは田村柚衣さんと再婚する。別に駒葵を追い出すことなんてないんだよ。それに来週から家政婦が来る」

 そう言うとパパは、朝ごはんも食べずに会社に出かけていったの。

 それにしても、ほんとに信じられない。再婚だなんて……。家政婦が来るということはこれから家事の仕事をやらなくてもいいのかぁ……いいわねぇー。ううん、そんなことはどうでもいいのよ、この際。

 家政婦が来る前の一週間は、パパとは一言も話さなかったの。学校に行っても、つまらなかったし、図書館に寄るのもおっくうになってきちゃったの。あ~あ、今日の夕食はなに食べようかなあ? と、考えてもあたしの場合は、近くのコンビニエンスストアに行ってお弁当。このところ毎日お弁当だから何か他の食べ物が食べたくなってきちゃったの。お昼は学食で済ませているから多少は大丈夫かな?

 そしてとうとう一週間が過ぎた。

「……ということで、今日から我が家に住み込みで働く竹田さんだ」

 竹田さんは簡単に自己紹介を済まして、家中を掃除し始めちゃったの。あたしとパパは邪魔なので庭に追い出されてしまったの。そこであたしたちは初めてパパと会話を交わしたの。

「駒葵、これからは竹田さんが何でもやってくれるから、助かるな。それにパパは、無事に社長になれたんだ。今日は、社長就任のパーティーと婚約披露パーティをホテルで開く。もちろん駒葵も出席する。夜の六時からだから余裕があるからどこかへ遊びに行ってきなさい」

「はぁーい。分かりました」

 遊びに行くといっても、別にどこにも行きたくなかったから、久しぶりにCDショップに出かけた。

 社長就任のパーティーねぇ。ふぅ~ん。これなら納得いくけど、婚約披露パーティーって一体どういうつもりなの? となると、あの女も来るわけ? 最悪もいいところだわ。まあそれなら正々堂々とあの女と闘おうじゃないの。ママが買っていた数々のブランドコレクションで一番綺麗な服を着ていくわ。一人ホクホクと笑っていたあたしは、通りがかりの人たちから避けられていたの。

 家に帰ると何もかもがピカピカだったの。あたしの部屋も綺麗に整頓されていて、竹田さんはベテランだわと思ったの。ママの洋服が置いてある部屋に行き、どれにしようか?と迷い込んでいた。

 ホテルに着くとものすごい人たちであふれていたの。まさかテレビ関係の人たちまでいるとは思っていなかった。会場となっている部屋へ行くと、これまたすごい人だかり。

「お譲様、とっても綺麗ですよ」

と、家政婦の竹田さんが言った。

「あら? 本当? うれしいわ」

 あたしは今まで見せたことがなかった笑顔いっぱいに竹田さんに言ったの。パパが近くに来たので、

「パパ、どうこの服? ママの服なのよ」

 あたしはくるっと一回転してみせたの。

「……そうだなぁ、似合っているよ。でも……」

 ママの服よ、と言ったのが効き目かしら? そこへあの女が来たの。

「勇太さん、おめでとうございます。これで会社も安心できますわね。そうよね、駒葵ちゃん?」

「当たり前のこと聞かないでよ。馴れ馴れしくあたしの名前、呼ばないでください」

「ごめんなさいね。でも、いずれはそう呼ばなくちゃね」

「いずれって? 百年も先のことかしら? あなたがなんと言おうとしても、あたしは許しません。失礼します」

 あ~、ムカツク! 何なのあの女は? もう、今日はやけ酒だ~! とりあえず、廊下へ出てバッグを振り回していたら、グシャ! と変な音がしたの。何か柔らかいものでも当たったのかしら? と思い振り返ってみると、ケーキだった。しかも特大のケーキ。バッグを見ると、白い生クリームが……。ケーキは? ……まあいいか。ううん全然良くないの。これってもしかして、かなりヤバイ? 周りを見るとみんな和気あいあいとしゃべっていたの。誰も見ていないよね? と、安心していたところに、

「お譲様、何をしているのです? パーティーが始まりますよ」

と、竹田さんがあたしを呼びに来てくれたの。そこで竹田さんは、

「あっ~! ケ、ケーキがぁ~!」

と、叫び出したの。竹田さんはあたしのほうを見たの。

「ケーキがどうしたというの? まあ! 誰がこんなにグシャグシャにしてしまったの?」

と、とぼけているあたし。もちろんバッグは隠して。ケーキは代わりのものがなかったので、仕方なく、あまり目立たないように会場へ運ばれていったの。ケーキもグシャグシャになったことだし、婚約披露パーティーもぶち壊そうかしら? ……なんて考えたあたし。

 そして、盛大な拍手があっちこっちと叩かれ、パパがマイクの前に立った。パパがマイクの前にいると同時に拍手はピタッと止まった。

「え~、本日お忙しい中、お集まりいただきどうもありがとうございます。我が社もこれからますます、発展することを願っております。一年前に妻と双子の妹を亡くしてしまい悲しい気持ちがまだありますが、わたくしは一ヵ月後に田村柚衣さんと再婚することとなりました。娘もこのことについては賛成しておりますので、三人で仲良く暮らしていきたいと思っています。ここで、娘から一言です」

 な~にが賛成してるですって? あたしは断固、反対だわ! でもここで本当の気持ちを言ってしまったら、おしまいだし、まあ控え目にということで、

「今日は、父のために集まっていただき本当にありがとうございます。母と妹が一年前に亡くなりとっても悲しいと思っていましたが、こうして父と柚衣さんが婚約し、来月には再婚する予定でうれしく思っております」

 はぁー。なんであたしが心にも思っていないようなことを口から言わなくちゃいけないのかしら? 結婚式まであと一ヶ月かぁ……。それまでに何とか考えなくちゃ。パパの前では、決してボロを出さないように注意しなきゃいけないし。あの女の場合も一応そうしておかなくちゃいけない。結婚してから追い出そうかしら?

 あたしはまだ未成年にも関わらず、赤ワインを少々飲んでしまったの。うーん、この味がなんともいえないのよね。お酒が体中にまわったところで少し気分が悪くなったの。酔いが覚めるように外へ出て行ったの。外の空気はおいしかった。風もちょこっとあって涼しかったの。近くに椅子が置いてあったのでそこに座った。いい気分に浸っているところへあの女があたしの隣に座ったの。

「駒葵ちゃん、来てくれてありがとう。あたし、もしかして駒葵ちゃん来てくれないかと思ってたから。でもよかったぁ。あのね駒葵ちゃん、あたしはあなたのお母様、楓さんが大嫌いだったの。なんかブランド品で着飾っていたところがあたしにとっては、すっごく嫌いだった。楓さんとは何度かお会いしたわ。でもあたしと勇太さんのこと一言も言わなかったのは覚えているわ。あの人、ずっと前からあたしたちの関係知っていたのよね。でもそれをあえて言わなかったのも嫌いになった理由かしら? あたし残念。だって死んでしまったもの。これでは納得がいかないのよね」

 それだけ言うと柚衣さんは片手に持っているワイングラスを口へ運んだの。

「へぇー、大嫌いだったんですか? それならあたしのことも嫌いなんですよね? あたし、柚衣さんのこと綺麗だと思っているし、尊敬しているのに……」

 もちろんこの言葉は作り言葉。そんなことも知らずにまんまと引っかかる柚衣さん。

「駒葵ちゃんのことは大好きよ。あたしの妹みたいだもの」

「本当ですか? 兄弟はいるんですか?」

「ええ、いたわ。あたしが小学校六年生の時までは……。両親が離婚しちゃって別々の親戚に引き取られたの。弟なの。歳はけっこう離れていたわ。そうね、駒葵ちゃんより一つぐらい年上だったと思うの。今はどうしているのかな? って時々思うけど、全然会ってもいないし、どこに住んでいるのかも知らないの」

「ごめんなさい、変なこと聞いちゃって」

 柚衣さんは一気にワインを飲み干したの。そして変なことをあたしに尋ねたの。

「別にいいのよ、ねえそれより、駒葵ちゃんは彼氏作らないの?」

 そこであたしは一気に酔いが覚めちゃったの。

「瑶葵ちゃんはいたんでしょ? 双子だったらいるのかなって思っていたけど、いないって勇太さんから聞いたから」

 瑶葵は家族に内緒ねって言ってたのに、パパは知っていたのか。そこであたしは一言、柚衣さんに言ったの。

「あたし、男嫌いなんです」

「え~、なんでまた? だったら仮に男の子にでも告白されたらどうするつもり?」

と、笑いながら言うの。あたしムットきたわ。やっぱりこの女とは仲良く暮らしていけないと……。

「告白されることはこの先もありません。あたし、クラスメイトからは嫌われていますし」

「嫌われているの?」

と、さらにまた笑い出したの。何でいちいち笑うのかしら?

「どうしてそんなこと聞くんですか? あたしのプライベートはあなたなんかに関係ありません! 柚衣さん、あなた本当にパパと結婚するつもりなの? やめておいたほうが身のためだと思いますけど。それでは失礼します」

 パーティー会場に戻るとパパはテレビ局の人にインタビューを受けていたの。あたしは皿を一枚手に取り、料理を食べた。最後にあたしがグシャグシャにしたケーキを食べたの。

そういえばこのケーキ、竹田さん以外にも誰かバレちゃっているのかなぁ?

 パーティーが無事に終了されて家に帰ったの。パパが、

「駒葵、柚衣さんとは仲良くしているのか?」

 やっぱり聞くと思ったわ。

「ええ、もちろん。柚衣さんまだ若いのに、パパと再婚するなんてもったいないぐらいだとあたしとしては思うんだけどな」

「そうかもな。それより、来週から柚衣さんが家に来る」

 家に来るだと? そんな話聞いてないわよ!

「え? なんで? まだ結婚もしていないのに」

「花嫁修業だとさ。くれぐれも失礼のないようにするんだぞ」

「はぁーい、分かりました」

 あー、もう何もかもうんざり! だいたいなんであの女のために仲良くしなくちゃいけないの? 花嫁修業ですって? いい加減にしてよ! そんなの自分の実家にでも行ってやってこればいいじゃないの。あたしの身にもなってよね!

 翌日、学校に行くとクラスの男の子が、

「大塚の家ってさー、親父さんが再婚するんだって? なんか相手の女の人、めっちゃ若くないか? やっぱり社長となると跡取りが必要なんだな。それでわざわざ再婚したんだもんなあ。まあ、大塚は社長令嬢になったわけだし、いいよなぁ」

「な、何で知ってるのよ?」

と、あたし。

「今日の新聞、見なかったのかよ?〈社長就任&婚約披露パーティー〉って大きく載ってたぜ」

 嘘でしょ……。何で新聞なんかに……あっ、そういえば昨日、テレビ局関係の人たちがたくさんいたんだっけ? それで新聞に載ったんだ。あたしは今日の朝、遅刻しそうになったから見る時間がなかったのよね。ということは、、全校生徒知っているわけ?

 あ~、どうしよう?


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