13歳
上沢翔子、13歳です。南浜第二中学校に通っています。
……何、その顔。予想してたよりも私が冷静で驚いた?
ねぇ、刑事さん。私をただの中学生だと思わない方がいいわよ。まぁ、孤児院出身って時点で普通の子供だとは思ってないだろうけどね。
……急に黙っちゃってどうしたの? 取り調べしなきゃいけないんでしょ? 今日は気分が良いから、何でも答えてあげるわよ。
……うん。要するに、私の身の上話が聴きたいのね。いいわよ、知っている限り話してあげる。
私は13年前の春、上沢市のある教会の前に捨てられた。
年老いた修道女がタオルにくるまれた私を見つけ、病院に届けて下さったのだと聞いたわ。“上沢翔子”という名前は、その方が付けたの。
発見した場所の地名を取って上沢、これから大空へと飛翔出来る様にという願いを込めて、翔子。平凡だけど良い名前よね。私にはもったいないくらい。
その後、私は南浜市の児童養護施設に送られる事になった。そんな訳で、私は物心ついた時から施設にいたの。
別に施設に住んでるからと言って、特別不幸な境遇だと思った事は無かったわね。普通の子と同じ様に小学校にも通ったし、ちゃんと今時の服も着れたし。
まぁ、一般の家庭よりは厳しい教育を受けた事になるんでしょうね。なにせ親がいないから、ご飯の支度も洗濯も、基本は全部自分でしないといけない。でも、それも慣れればどうって事無かったわ。
私はそんな施設の中でも比較的器用な子供だった。しかも、暇さえあれば近所の図書館で本ばかり読んでいたせいか、無駄に知識がついていたの。きっと可愛げのない、生意気な糞餓鬼だったのね。
子供達はそんな私の事を恐れている様だった。乱暴で、何かあるとすぐ殴り合いで解決しようとする子も多かったけれど、私は腕っぷしも強かったし。
だからと言って皆が私に近寄らなかった訳じゃなくて、私の事を尊敬して話し掛けてくれる子も何人かいたの。子分的な存在ね。
そうやって私は、その施設の餓鬼大将として取り巻き達と仲良く暮らしていたのよ。そんな生活でも結構楽しかったし、今でもあの時の事を振り返ると温かい気持ちになるわ。
だから、里親を探してもらおうなんて事はこれっぽっちも思っていなかった。そんな普通の人生より、ここでの暮らしの方が数段良いと思ってた。
でも、考えが変わったの。小学4年生になった時、前田悠太郎君に出会ってから。
あの年の春、初めての席替えで悠太郎君の隣になった。
私はそれまで、彼みたいに優しくて非の打ちどころの無い子は嫌いだったの。だってそんな子は、大抵人の痛みを知らないんだもの。甘い汁だけを吸って生きてきた様な子ばかり。
彼も例外では無かった。そこそこ裕福な家に生まれて健やかに育っていった、そんな子だったわ。でも何故か、私は彼の事を嫌いになれなかった。
彼に優しくされると、とても幸せな気分になれるの。今まで人に好意を向けられたって、何も感じなかったのに。
どうしてだろうと悩んでいたけど、ある日その気持ちの正体に気付いたの。
“あ、コイだ”って。ベタな話よね。
『あの人を見ていると胸が締め付けられるの、どうして?』
『お嬢ちゃん、それが恋ってものなんだよ』
くだらない三文小説のやりとりを思い出して苦笑したわ。なんだ、私って案外普通の女の子なのね、って。
でも、普通の人は施設の子供達の事を普通だとは思わないでしょ? だから施設の大人に里親を探してくれる様に頼んだの。悠太郎君に似合う、普通の女の子になる為に。
里親候補の人には何回か会ってみたけれど、どの人もくだらない大人だったわね。
施設で育った不幸な境遇の子を救いたい。誰もがそんな身勝手な正義感をふりかざして私に会いにくるのよ。私が施設でどんな生活を送ってきたかなんて、本当はどうでもいいんじゃないかしら、あの人達。
兎も角私は、そんな人達と面談しては“虫が好かない”という結論に至るという事を繰り返してきたの。そうやって1年が過ぎて、いつの間にか私は5年生になっていた。
繰り返される意味の無い面談に飽き飽きしていた頃、私は富田夫妻と出会ったの。
いつもの様に施設の職員にセッティングしてもらって、私は彼らと面談をした。夫の富田孝司さんが大企業の社長で、相当リッチな夫妻であるらしいと職員が面会前に耳打ちしたわ。それを聞いても、私の意識は今までと対して変わらなかった。
けれど、彼らが今までの人達と明らかに違う――お金がどうとかじゃなく、内面的に――という事は、一目見るだけで分かった。
おふたりとも、優しい目をしていたけれど、微笑んでいるという訳ではないの。この人達となら対等な関係を結べる。私は期待に胸を弾ませたわ。
そして彼らは私の期待を裏切らなかった。彼らは「私達は訳あって子供を作れないんです」と言い、あくまで彼らの事情だけで私を欲する理由を説明したの。それがとても嬉しかった。
初めて富田夫妻のお屋敷に足を踏み入れた時は、軽く眩暈がしたわね。
映画のセットなんじゃないかと思う程、立派な西洋風の建物でね。住み込みの家政婦さんに各部屋を案内してもらったけれど、把握しきれないくらい広かったわ。
こんな所に住む私を想像すると、それはもう私でなくなっている気がした。いくら普通の生活をしてきたと言っても、所詮私は施設の育ちだからね。
けれど、物怖じしていちゃいけないと思った。これからはご夫妻の子供でいられる様に、気を引き締めなきゃいけないんだって。
そして私は彼らの養子となり、お屋敷の空き部屋を自分の部屋として生活する事になったわ。今までの自分の荷物を入れても、全然スペースが埋まらないくらいには広い部屋だった。
そんな私の部屋も、家政婦さんが隅から隅まで綺麗に掃除してくれたわ。掃除だけじゃなく炊事も洗濯も、全て彼女が「仕事ですから」と言ってそつなくこなしていた。
あの人はお喋りで、よく私にも話し掛けてくれたわ。たまに鬱陶しく感じる時もあったけれど、良い人だった。
旦那様と明美奥様は反対に物静かな方だったけれど、お優しい方々なんだという事は常々感じていたわね。旦那様は夕食の時いつも、「翔子さん、学校は楽しかった?」と声を掛けて下さるし、奥様はよく私にホットケーキを焼いて下さったわ。家政婦さんがいたら「お料理は私が」と言って聞かないから、彼女がいない時を見計らってこっそりと。
そんな彼らとの生活は、まさに私が1年間ずっと願っていたものだった。最も、考えていたよりもはるかに良い暮らしだったけれど。
そんな毎日にも慣れてきて、私はいつのまにか、本当に“富田翔子”として生まれてきたかの様な錯覚に囚われていた。
でも、そうじゃなかった。私がご夫妻の真の娘ではないという現実をつきつけたのは、他でもない旦那様ご自身だった。
ある夜、私は就寝前に小説を読んでいたの。既に寝間着に着替えた後で、もうそろそろ寝ようかしらなんて考えていた時、ドアがノックされたのね。
こんな遅くに誰だろう。一応私は予想してみたけれど、まさかドアを開けた時、そこに立っているのが旦那様だとは思いもしなかった。
私が呆然としていると、旦那様は「こんばんは」と先に挨拶をして下さったの。私も慌てて挨拶を返して、彼を部屋に招き入れたわ。
彼は悠々と部屋の中を横切り、当然の様にベットに腰掛けた。そして私に、隣に座る様促したの。
私が指示通り旦那様の隣に来ると、彼は机の上に置きっ放しにしてあった文庫本を一瞥して「本を読んでいたのかい」とおっしゃった。私がそうだと答えると、「えらいねぇ。君みたいな賢い子は好きだよ」とおっしゃい、私の頭を撫でてくれた。
私はその時、彼の表情がいつもと違う事に気付いた。普段はお優しいお顔立ちだけれど、常にポーカーフェイスなの。それなのにあの時の旦那様は、口角をくっきりと上げて、笑っていらした。
一体どうなさったんだろう。良い事でもあったのかな。私は彼の変化をそれぐらいに捉えて、自分も微笑んでみる事にした。
するとね、さっきまで私の頭を撫でていた旦那様の手が、するすると体の方に伸びていくの。それもごく自然に。
そして今度は、私の体の色んな所を撫でているのね。旦那様でない男にそうされたなら、きっと悲鳴を上げていたと思うわ。
でも、私は困惑していながら声一つ出さなかった。ただ、彼の手がなめらかに移動するのを、黙ってじっと見ていたの。
そしたら、自分でも驚くくらい変な気分になってきてね。体を撫でられたり、服のボタンを外されたりするのなんて嫌に決まってるんだけど、何故か抵抗出来なくなっていたの。
それが、旦那様との初めての夜だった。
後の事はもう……大体想像がつくし、刑事さん達は知ってるでしょう? 先に家政婦さんから聞いただろうから。
私は何回かに渡って旦那様との夜を経験した。最初は上だけ脱がせて、触ったり舐めたりするだけだったけど、私が感じる様になると更に……という風に。
旦那様はとても優しくしてくださったわ。それもただ優しいだけじゃなくて、この歳の女の子に効果的なやり方だったのね、あれ。
兎に角その日から旦那様は、私にとってのお父さんではなくなってしまった。けれど、悪い気はしなかったわね。だって、憧れの人の女になれたんだもの。それって、憧れの人の娘になるよりもずっと素敵な事じゃない。……違うの?
何にせよ、人は様々な過程を経て大人になっていくわ。私は色んな事が重なって、同年代の子達よりも早く成長していった訳だけど。
それでも、悠太郎君への恋心は消えなかった。社会というものを知れば知る程、無知で純粋な彼の事がより愛おしくなって、あの人と結ばれればどんなに幸せだろうと夢見ていた。
旦那様に抱かれる様になってから数週間後の休日。私は奥様と2人で昼食をとっていたわ。
旦那様は会社の用事があって出掛けられていた。いつもなら昼食を作ってくれる家政婦さんも、その日は風邪で寝込んでいたの。だからご飯の支度も、私と奥様が自分達でしたのよ。
お料理作るのなんて久し振りだから、面白くってしょうがなかったわ。奥様もその日は珍しく、くすくすと声を上げて笑ったりしていたの。
そうして出来たお料理を食べて、その後お茶を飲みながら感想を言い合ってた。
でもね、そうやって一通り談笑した後に、奥様が急に黙りこくったのよ。
私は何か不穏な気配を感じて「奥様、どうされましたか?」と尋ねてみた。奥様は黙って私の腕を掴み、こう言ったのよ。
「寂しいの」って。私、奥様のあんな声聞くの初めてだった。震えがちで、それでいて甘美で、誘惑する様なあの声。
私は体が熱くなるのを感じた。あの一言だけで分かってしまったの。旦那様が奥様を抱いていらっしゃらない事を。そして奥様が今何を考えているか。
奥様はそのまま私の手を引き、私を自分の寝室に誘導した。
奥様は旦那様よりも少し遠慮がちだったわね。だから私は、あまり慣れていらっしゃらないのだと思って、自ら攻める側に回ってみたりもしたの。
彼女は私の手が触れるたびに、びくっと体を震わせて、とても切なそうな顔をするの。それが可愛らしくて仕方がなかった。
今思えば、奥様はわざと慣れていない様な手つきで私に迫ってきたのね。彼女は攻められるのが好きだったのよ、きっと。だって、慣れていらっしゃらない訳が無いんだもの……。
私はその様にして、一組の夫妻との複雑な関係を保ちながら、中学生になった。
成績は相変わらずそこそこ良かったし、部活のバレーボールでもキャプテン候補だったから、まぁ順風満帆な学生生活のスタートだったんでしょうね。
でも、私は学校なんて別に好きでも何でもなかった。一応見かけだけの友達もいたけれど、一度だってあの子達に心を許した事は無いわ。
家で富田夫妻と話している時の私こそ、本当の自分だと思ってた。私は彼らの様な、聡明な大人を欲していた。だから彼らが求めてくる事には何だって答えた。
私は――彼らの為なら、死んだって構わないと思っていた。
でもね、あの日全てが変わったのよ。悠太郎君と再会したあの日。
その日は夕方に部活が終わって、私はひとり家路についていた。夏の終わり頃でね。ユニフォームの上からジャージを着込んだ、色気の無い恰好で帰ったの。
今日も疲れたなぁ、でももうすぐ大会だから頑張るか、なんて普通の部活生みたいな事を考えながらとぼとぼ歩いて、ふっと前を見上げた。
そしたらね。普段誰も通らない裏道なのに、少し先に誰かがいたのよ。
珍しいなと思って目を凝らしたら、見覚えのある顔だったのね。
彼もほぼ同時に気付いたんだと思う。顔をほころばせて、大急ぎで駆け寄ってきた。
「やっぱりしょうちゃんだ。久し振り、元気?」
「うん、元気だよ。前田君も相変わらず元気そうだね」
「止めろよ、前田君なんてよそよそしい。小学校の時は、ゆうくんって呼んでくれてたろ?」
そういえばそうだったな。小学校では、クラスの皆があだ名で呼び合ってたっけ。今思えば、皆仲の良い学校だった。
そんな温かな思い出と共に彼の顔を眺めていた。卒業してからまだ数ヶ月しか経ってなかった訳だから当たり前だけど、彼の容姿はほぼ変わっていなかった。強いて言うなら、少し顔の輪郭が丸くなった程度。
「じゃあ、ゆうくんって呼ぶよ。ゆうくんは運動部に入らなかったの? サッカー、得意だったのに」
「えっ、何で分かったんだ? そうなんだよ、俺サッカー止めちゃってさ。何か面白くなくなっちゃったんだよね」
「へぇ。じゃあ、部活はやってないの?」
「いや。漫画研究部に入ったんだ。オタクばっかの部活だけど、意外とそいつらと意気投合しちゃってさ」
……その時、私が思い描いていた彼と、目の前の彼にズレがある事に気付いた。
彼はその後、私に今流行っている漫画の情報を得意気に語り出した。私はそんな彼の姿を見るのが辛くなって、目を背けた。
「――でさ、今ハマってるその漫画ね、ヒロインが可愛いんだよ。ツインテールでツンデレで、でもサブヒロインも清楚でクーデレで中々――」
違う。私が求めていた彼は、こんなのじゃない。私の初恋の対象としての彼は常に純粋で、何色にも染まっていない。彼が私にくれる視線の中には、私の闇を受け止めてくれるかの様な慈悲深さが含まれていて、彼は太陽であり、月であり、だから彼はこんな人間になってしまっては――
「ずっと好きだったの」
そう言って、私は彼を抱き締めていた。
仕方がなかったの。あの人を綺麗なままにしておくには、私が傍にいる以外の方法が思いつかなかったから。
私が彼に降り掛かる問題を全て追い払っていれば、彼は純情を失わずに済む。だから私はあの日、彼に告白した。
勿論、彼の為に生きるという事は簡単な事じゃない。私の場合、たくさんのものを失わなければならなかった。
不思議よね。そうまでしてでも守りたいものなのよ、初恋って。……本当に不思議。
さてと。やっと、刑事さんが一番聞きたい事を話せるわね。
悠太郎君との再会から、一か月後ぐらいだったかな。私は、富田孝司と富田明美を殺した。
……罪の意識なんてないわ。だって仕方がなかったんだもの。
得体の知れない金持ち夫婦に抱かれているふしだらな体じゃ、悠太郎君の隣にいる資格が無い。彼と一緒になる為には、夫妻との関係を断つしかなかった。
それともうひとつ。刑事さんもご存知の通り、あの夫妻は身寄りの無い少女達と代わる代わるセックスをし、大人になったら殺す、猟奇的殺人鬼だったの。
私、覗いちゃったのよね。あの大きなお屋敷に隠された、鍵付きの地下室を。だから夫妻の正体を知る事が出来たのよ。
あの部屋の床には、明らかに人間の物であろう骨が雑然と散らばっていた。中には、まだ肉が残っている遺体まで――背筋が凍ったわ。
あれだけの数の人間とその未来を潰して、よくもまぁ表社会では平気で社長夫妻を気取れるものよね。私は怯えると共に、これまでに無いくらい激しい憤りを感じた。
その部屋を見せてくれたのは家政婦さんだった。彼女は屋敷を掃除している際、富田孝司が落とした地下室の鍵を偶然拾い、この部屋に辿り着いたんですって。
可哀想に、彼女は恐怖で震えながらもこう言った。
「お嬢様、どうかお逃げ下さい。私は……私は……」
私は彼女の背中をさすってあげた。大丈夫よ、私が何とかする。そう囁きながら。
夫妻の殺害には勿論、家政婦さんに協力してもらったわ。
まず彼らの夕食に睡眠薬を仕込んだ。そして完全に眠ったところをロープできつく縛り上げた。線の細い富田明美だけなら兎も角、小太りの成人男性である富田孝司を縛り上げるなんて女性が簡単に出来る事ではないけれど、そこは私の腕力の強さを生かして完璧に縛ってやったわ。
彼らをすぐに殺さなかったのは、最後に話がしたかったからよ。殺人犯とはいえ、私は彼らを心から慕っていたからね。悠太郎君の事が無ければ、のちに殺されると分かっていても、彼らとずっと一緒にいたかも知れないくらいだし。
私は彼らが目覚めると、地下室の事を問い詰めた。返答によっては殺すと脅しながら。彼らはあっさりと自分達の犯行を認めたわ。まぁ、私みたいな小娘に命乞いするくらいなら、死んだ方がましだったんでしょうね。
計画通り私は彼らをナイフで刺し、地下室に放り込んだ。彼らが命を奪った、未来ある少女達と共にいられる様に。
この殺人計画は驚く程上手くいったけれど、私の人生計画は無茶苦茶になってしまった。
とりあえず、家政婦さんと逃げるつもりだったのよ。富田夫妻の金で新しいお家を買って、しばらくそこでゆっくりして、次のステップに進むつもりだった。
兎に角お金だけはあったの。あの夫妻が持ってた、馬鹿みたいに膨大な額のお金が。だから、あの犯罪さえバレなければ、あとはどうとでもなると思ってたの。
……馬鹿よね、私。あんな大企業の社長が死んだら、すぐに周囲が気付くに決まってるのに。
だけどその前に……身近なところに潜んでいた敵が、私を刺した。
その身近な敵が、家政婦さん――小西京子。
あぁ、名前を呼ぶだけでもおかしくなりそうだわ。本当に憎くてたまらない。そうよ、あいつが、あいつが通報さえしなければ、自首なんてしなければ!!
……でもまぁ、いいでしょう。私はまだ13歳。少年法が適用される年齢だもの。
本で読んだ事があるわ。14歳未満の子供は少年院に入れられず、施設送りになるんですってね。あーあ、また施設の糞餓鬼に逆戻りかぁ。
ううん、でも構わない。私、施設を出たら悠太郎君と結婚するの。
彼に恋人がいたって関係無いわ。だって、その時には上手く人を殺せる様になってる筈だもの。
だって私――13歳で人を殺したんだから。