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3rd コネクトッ!  作者: 綾部 響
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長閑に日々は移ろい行く

 高校生接続師、不知火龍彦と八代利伽は、化身のビャクと蓬と共に、日々修練に励んでいた。


 ……そう……。


 地獄のような日々を……。

 浅間(あさま)宗一(むねかず)の事件から1ヶ月……。

 俺……不知火(しらぬい)龍彦(たつひこ)八代(やつしろ)利伽(りか)、化身のビャクと(よもぎ)は、いつも通りの朝を……強制(・・)させられとった!

 

「あんたら―――? いつまで死んだふりしてるんや―――?」

 

 死屍累々……道場で倒れて動かれへん俺等に、俺の実祖母である不知火(みそぎ)は、なんとも朗らかな声でそう声を掛けた。

 鬼とゆーんも生ぬるい、魔神のようなシゴキをしといてこの言い方……。

 ほんまに、えー性格してんで……。

 

 ばあちゃん……ゆーても、見た目は20代前半……悪くても半ばって感じや。

 着てる着物はばあちゃんらしく地味な留め袖やけど、多分利伽が着てる様な服装でも似合うやろ。

 

「ほらほら―――。もう動けるはずやで―――。そんなに寝ときたいんやったら―――目覚められへん様にしたろか―――?」

 

「……くわっ!」

 

 その声を聞いて、俺は力を振り絞って立ち上がった。

 それに続いて、利伽、ビャク、蓬も体を起こす。

 ばあちゃんのゆー通り、この道場におる間は(・・・・・・・・・)疲労の回復速度が尋常やなく、どれ程“霊力”を消耗しても、瞬く間に回復しおる。

 

「なんや―――。立てるやない―――。ほなら―――ちょ―――っと厳しめにいっとこか―――」

 

「ちょっ、まっ! ……どわっ!」

 

 俺の制止を全く無視して、再び……いや、新たに鬼神の修行が再開された……。

 

 

 

「は―――い。ほなら―――今日はこれまで―――。あんたら―――しっかり勉強してきーや―――」

 

 俺等に課した修行も常軌を逸してるけど、それにも増して驚愕なんは、俺等4人を相手にして汗一つかいてないばあちゃんの方や。

 

「はぁ―――……」

 

 期せずして、俺と利伽は同時に深いため息をついた。

 でもその後に、互いに顔を見合わせてニヤリ……なんて、定番行動なんかする気力もなかった。

 ほんまにしんどいから、ため息をついたんや。

 ……いや、ため息やなくて、深く息を吐き出したっちゅーのが正解やろな。

 

「ああ―――そうや―――。あんたら―――学校終わったらウチとこ来ーや―――。話があるさかいな―――」

 

 俺たちは、のっそりと首だけをばあちゃんに向けて視線を送った後、頷くことなく再び部屋に向けて行軍を開始したんや……。

 

 

 

「お兄ちゃん、最近修行がきついんとちゃう?」

 

 登校準備を済ませて、玄関でもたもたと靴を履く俺に、妹の神流(かんな)が眉根を寄せて声を掛けて来た。

 

 ま―、兄貴の俺が言うんもなんやけど……神流のこう言った表情も……可愛い!

 

 あ―……因みに俺はシスコンやないし、神流もブラコンやない。ほんまや。

 

「そやな―……。俺等から言い出した事やーゆーても……ちょーっときついなー」

 

 俺は、神流には嘘をつかんことにしてる。

 ……っちゅーか、嘘付いてもすぐにバレるんや。嘘をつくだけ無駄やろ?

 

「大丈夫なん? 利伽さんも、なんや毎朝疲れてるみたいやし……。『お勤め』を派遣されてきた人達に変わってもらう程なん?」

 

 お勤めっちゅーたら、毎晩この“不知火山”と“八代山”で寝ずの番をする事や。

 理由なんか分からんかったけど、兎に角、代々俺等の家系では子供が10歳になったら、この山を出るか神職に就くまで続けなあかん決まりになっとるんや。

 

 ……まぁ、今はもう理由も知ってるけどな。

 

「なんや俺と利伽は、何か特別な祭事やらなあかんよーになってなー。その為に必要な修行やからな―……」

 

 うん、これは嘘やない。我ながら、中々良くできた言い訳や。

 

「でも……。そうや! 私がおばあちゃんに、もうちょっと手加減するようにゆーたるわ!」

 

 満面の笑みで、そんな提案してきた神流は……可愛いな!

 玄関で腰かけて靴履いてる俺に話しかけるため、やや前屈みになった神流の髪がサラ―ッと流れる。

 中学から伸ばし出した髪は、もう随分長くなってる。

 神流は……間違いなく美人になるっ! いや、もう既に美人やっ!

 

「まぁ……ゆーといて」

 

 どーせあのばあちゃんが、神流に言われた位で手加減する筈もないけど、折角の神流が出してくれた提案や。

 俺は僅かに笑顔を作ってそう答え、

 

「うんっ! 任しときーっ!」

 

 神流は満面の笑みでそう答えたんや。

 

 

 

「おはようっ! 利伽さんっ!」

 

「おはよう。神流ちゃん」

 

 御山の麓で、俺達と利伽達はいつも通り合流し、美少女二人がいつも通りに挨拶を交わす。

 そんな光景を毎朝見れるんや。

 はっきりゆーて、これほど人から羨まれる……いや、恨まれるポジションも無いやろ。

 

「……おはよう……ございます……。お兄さん……」

 

「おっ……おう……」

 

 そんな華やいだ雰囲気とは別に、俺は俺で毎朝定例の挨拶を交わした。

 相手は八代真夏(まなつ)……。利伽の弟や。

 声を聞いた通り、利伽とは正反対に引っ込み思案で無愛想。はっきりゆーて陰気な奴っちゃ。

 それから、俺の事をお兄さん……なんて呼ぶな。

 ……まぁ、長い付き合いやし、そこはもうツッこまんけどな。

 

「お兄ちゃんっ! 真夏―っ! 早よ行くで―っ!」

 

 いつの間にか先に進んでた利伽達が、立ち止まってこっちを振り返ってる。

 

「お―っ!」

 

 俺はそんな元気よく愛らしい神流に、出来るだけ元気よく声を返したんや。

 

 何べんもゆーけど、俺はシスコンやないからな。

 祖母、禊の過酷な訓練が日々続けられる中、それでも龍彦達は平穏と呼べる毎日を過ごしていた……のだが。

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