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転生黙示録  作者: 水色つばさ
1章  転生と出会い
7/63

5話 朝目覚め横にいる人物は?

 あれから服はすぐ乾いたが、ココナとの会話が楽しく夕暮れまで長話をしてしまった。そして、俺たちがオルレットに戻ってきた頃には夜になっていた。

 流石に長話しすぎたと思う。

  本来の予定ではこんな時間までなることは無かっただろう。しかし、ココナがもっと話をしないかと言って来たのだ、断る理由もないし、何よりココナが早く帰りたくないとそう訴えかけてきている様に思えたため、素直に頷きココナに付き合った。

  それから、辺りがだいぶ暗くなっているのに気が付き、ココナを家まで送り届けることにした。

  連続殺人事件もあるし、女の子一人で帰すことはできない

 

「ここまで送ってくれてありがとう」

「正直、ココナの強さなら不審者がでても撃退してしまいそうだけどな」

「酷いな、私だって女の子だよ? 不審者とか出たら恐怖で動けなくなっちゃうよ」


 などと言いながらニヤリとした笑顔を見せる。

  この様子見てると、恐怖で動けなくなるなんて思えないが、まぁそれは実際に遭遇してみない事にはわからないだろう。

 

「そうか、なら責任をもって家へと送り届けないとな」

「うん。頼りにしているよ?」


 俺の顔をのぞき込む様に笑顔を向けてくる。

  その笑顔から逃れるように顔を逸らす。

  そして、それから数分後、ココナの家に到着する。

 

「ありがとう、送ってくれて」

「いいよ。不審者に恐怖するしないはおいておいて、こんな時間に女の子を一人で帰すのは流石に男としてどうかと思うし」

「ふふッ。送ってくれて嬉しかったよ? 本当にありがとう」

 

  流石に素直に送ってくれたことを感謝されると少し恥ずかしい。

  何より俺は女性慣れしていないので、そんな事を言われると勘違いしてしまいそうになる。

 

「じゃあまた明日ね」

「ああ。また明日」


 そしてココナはお店の中に入っていくのを見届けてから、俺も宿屋に帰ろうと足を踏み出した瞬間――

 

「おいこらぁ! ココナ!! こんな時間までどこに行ってやがった!」


 ものすごい怒鳴り声が聞こえてくる。この声はおそらく、ココナのお父さんのものだろう。

  かなり怒っているみたいだが――この怒りは実の娘が何の連絡も無しに夜中まで帰ってこなかったための怒りなのだろうか?

  俺はなんとなく気になり、気配を殺しながらお店に近づき聞き耳をたて、窓から様子をうかがう。

  正直な話、俺はあのココナの父親を良く思っていない。もしかしたら、ココナに暴力を振るうかもしれない可能性だってある。俺があの大男に喧嘩で勝てるとは思わないが、ココナが暴力を振るわれるのは見たくない。最悪ココナを連れ出すくらいは覚悟する。

 

「…………別に? どこだっていいでしょ? それに何をそんなに怒ってるの?」


 ココナの声が聞こえる。

  しかし、俺はその声背筋が凍る。

 今聞いたココナの声は、さっきまでの明るいモノではない。とても、とても冷たい声だった。そしてどこか怒りすら籠っている様に感じる。

  あんなココナの声初めて聞いてかもしれない。


「いつもなら、私がどこで何してようが気にもしてないくせに」

「あぁいつもならどこで何してようが、俺には関係ない。だけどな、今日はお前に頼みたい仕事があったんだよ」


 仕事? 一体ココナになんの仕事を頼もうとしているんだ? あれだけ怒っているんだ相当大事な仕事なのだろう。それは、ココナしかできない仕事なのか?

 俺は一言一句聞き逃さないように、さらに集中して会話を聞く。

 

「……」

「ッ!?」


 俺が顔を出している窓にココナが視線を向けてきたため、咄嗟に隠れる。

  咄嗟に隠れたのは良いが見事に視線が合った気がする。

  窓を見る勇気が出ない。そのため、俺は静かに息をひそめて会話に耳を傾ける。

  もしバレたのなら何かしら足音でも会話でもするはずだ。

 

 

「まぁいい。今からでも間に合う。お前に頼みたかった仕事って言うのはな――」


 何もなかった様にココナの父が会話を続けようとしている声を聞いて安堵する。


「待った」

「あん?」


 そこでココナから静止が入る。

  俺はそこで本日二度目の背筋が凍る感じをする。

  やはりバレたか――

 そう思うのが先か足音が聞こえてくる。


「ッ!?」


 気が付かれた!? ここで姿を見せるか?

  いや――そうすると聞き耳していたことがバレる。そしてどう言い訳する……普通に怒鳴り声が聞こえてきてと言うか? だがそのあとどうする――

  俺がどうするか悩んでいる間にも足音が近づいてくる。

  ここは逃げる……か。

  そう思うと同時に俺は走り出す。ここまで全速力で走ったのは人生でも数回しかないだろう、それほど全速力で走った。

  走って走って走った。自分が今どこに向かってるのかすらわからないが、とにかく走った。

  しばらく走ると、見慣れた建物が見えて俺は足を急停止させる。


「はぁはぁはぁはぁはぁ……ここは?」


 そこは現在、俺が宿泊している宿屋だった。どうやら無意識に宿屋に向かう方に走っていたらしい。

  俺は辺りを見渡す。ココナもココナの父親もどこにも見当たらない事を確認する。

  どうやら逃げ切れたようだ。

  というか、追ってきていたのかすら、俺にはわからない。これで追ってきていないのならいいのだが、まぁどちらにしても、周りには見当たらないのだ、安心していいだろう。

 

  とりあえず、部屋に戻るか。

  そう思い俺は宿屋に入る扉に手をかける、すると一瞬誰かの視線を感じる。

 

「ん?」


 振り返ってみても誰もいない。そして辺りを再度見渡すが、怪しい人は特にいなかった。

 

「気のせいか」


 再び宿屋の入り口の扉に手をかけて扉を開き中に入る。そして、自分の部屋に向かう。

  部屋に入るとすぐさま鍵を閉めて、俺はベッドに倒れこむようにして、飛び込む。

 

「はぁ……疲れた」


 あれだけ全力疾走で走ったんだ、明日は筋肉痛かもしれない。

  しかし、仕事ってなんのことだったんだろか? 少ししか聞いていないが、ココナにしか頼めない仕事の様に感じたが。

  気になるけど、本人に聞くわけにはいかないよな。

  昨日、聞き耳立ててたのがバレる。

  もし明日会う事になったら、何事も無かったかのように普通に接しないと。

  そんなことを考えていると、だんだん瞼が重たくなって来る。

 

「ふわぁ」


 大きなあくびが出る。

  風呂入ってから寝ようと思っていたけど、これは無理だな。明日起きてから入るか。

  そして俺は眠気に従い眠りについた。

 

 

 ☆☆☆



 次の日の朝。

  俺は窓から差し込む光で目が覚める。そしてぼーっとする頭で起き上がろうすると、左側に何か柔らかい物が当たる。

 なんだろう、と思い左を見るとそこには――ココナが居た。

 

「なんだ……ココナか」

 

 そんなことを呟きながら、ベッドから出ようとしてその行動を止める。

  なんでココナが居るんだ? 俺は昨日は一人で寝たはずだ? 

  そして再びココナの方へ向く。目が合いココナは笑顔を向けてくれる。

 

 

「ココナなんでいる?」

「んー? 朝早く来てカエデ君を驚かそうと思ってたんだけど、あまりにも寝顔が可愛くて、添い寝しちゃった」


 チロっと舌を出す。

  寝顔が可愛かったとか、添い寝したこととか色々突っ込みは入れたいが、一番気になっていることを突っ込むことにした。

 

「俺、鍵閉めてたはずなんだが?」

「うん? 鍵なんて閉まって無かったよ? 不用心だから気を付けてね?」


 え――鍵が閉まってなかった? 

  確か昨日、鍵は確実に閉めたと思ったんだけど? 記憶違いだったか?

 

「本当に鍵掛かってなかったのか?」

「…………まぁまぁそんな事はいいから」


 何だ今の間は、結構気になるんだが。

 

「はぁ。気にはなるけど、まぁそこは置いておく」

「そうそう。置いておく置いておく」

「ああ、置いておくけど、ココナはしばらく部屋から出て行ってくれる?」

「え!? なんで!」

「寝起きで髪とかぼさぼさだから。何よりこれ以上寝起きを見られるの恥ずかしい」


 親とかなら何も気にしないけど、流石に他人とかに見られるのは恥ずかしい。そして、何より女の子に寝起きのみっともない姿は見られたくない。

 

「えー別に気にしなくていいのに」

「俺が気になるの! はい! 出ていく!!」


 俺はベッドから降りると、ココナの手を引いてベッドから降ろす。そして、背中を押して扉の前まで運ぶ。

 

「ちょちょちょ、お、押さないで、わかった、わかったから!」

「本当に?」

「本当本当! だから押すのやめてくれる?」


 俺は何も言わずココナの背中から手を退ける。するとココナはきびすを返して俺の部屋に戻ろうとする。

  しかし、俺はなんとなく予想がついていたため、すぐさま手を掴みそのまま部屋の外まで投げ飛ばす。

 

「きゃ! ちょっと女の子投げるなんて酷くない!?」

「はいはい。じゃあ下で待ってて直ぐに準備するから」


 俺は扉を閉めて、準備を始める。後ろから、別にいいじゃない。といった声が聞こえるが気にしない。

  さてと、まずはこの寝ぐせでぼさぼさの髪をどうにかしないとな……。

 部屋についている洗面台の方に足を運ぶ。そして蛇口を捻り水を出すと、手を水で濡らしそれを寝ぐせの部分につけて整える。

  それが終わると、今度は水を掌に溜めると顔に近づけて洗う。

  顔を洗った後は、横のタオル掛けに手を伸ばし、タオルを取ると顔を拭く。

 

「ふう。すっきりした」


 今度は歯を磨く準備をする。

  この世界は一応歯ブラシが存在している。まぁ歯磨き粉は無いけど。

  俺は歯ブラシを水を少しつけてシャカシャカと歯を磨く。

  だいたい二分くらいして、蛇口から水を出し、水を口に入れて口の中をすすぐ。

 

「よし」


 あとは、ちゃんと寝ぐせとか直せてるか鏡を見ながら確認する。

  左右に頭の上、そして見えない後ろは、手で触って確認する。

  どうやら、特に寝ぐせが残っている場所はないようだ。

  そして、俺はココナの元に向かおうとした時、ふと鏡に映る自分の姿に違和感を感じる。

  いや、姿というより首だろうか? 何かが流れた跡のようなものがある。

  俺はなんとなく首に触れてみる。

 

「いた!」


 首に触れた瞬間痛みが走る。よく見ると首のところが少し切れているようだ。


「いつ切ったんだろう? こんなところ」


 俺には心当たりが無かったが、昨日は色々あったし気づかないうちに切っていてもおかしくはない。

  だからそれほど気にしないことにした。

 

  それから、扉に向かいドアを開けるが、そこにはココナは居なかった。

  おそらく、下に降りたのだろうと思い、階段のある方に向かい階段を下りる。そして下りる途中で右側を見てみると、ココナが椅子に座っているのが見えた。

  俺は少し下りる速度を上げ、一番下まで来ると、すぐにココナの元へ向かう。

 

「悪い待たせた」

「いいよ。そんなに待ってないし」

「ならよかった」

「でも、やっぱり男の人は準備早いね、私なら、もっとかかってると思うよ?」

「そりゃーな。女の人と違ってやること少ないし」


 別に化粧するわけでもないし、髪も女の人に比べたら、短い。だから、そんなに時間なんてかからないものだ。

 

「そうなんだ」

「そうなの、ココナのお父さんだって準備に時間そんなに掛からないだろ?」

「そうだね。まぁお父さんの場合は、起きたら、顔洗って髭剃って歯磨きするくらいだけどね。髪の毛とか整えたりしないよ」


 あーなんとなく想像できるな。ココナのあのお父さんなら納得だ。

 

「ははは。まぁそれは良いとして、今日はどうするんだ?」

「んーそうだね。とりあえず昨日と同じ様に特訓と言いたいんだけ、その前に――」

「その前に?」

「カエデ君お腹空いてるでしょ?」


 まぁ空いてないか空いてるかで言えばお腹は空いているけど、別に朝抜くくらい問題はないだろう。


「空いていないわけじゃないけど……問題ないよ」

「ダメだよ? ちゃんと食べないと!」


 そう言い自分の隣の席の椅子を引く。どうやらそこに座れということらしい。なので、仕方なく座る。

  するとココナはテーブルの上に乗っていたかごの様な物を俺の前に持ってくる、確かバスケットだったかなこれ? 

  そして、そのバスケットからサンドイッチを出す。

 

 

「はい。本当はお昼にでも食べようかなって思って作ってきたんだけど、まぁ今食べても問題ないでしょ」


 そう言って卵やハムそしてレタスと色々な材料で作ったサンドイッチが出てくる。

  その色とりどりのサンドイッチを見ていると、俺のお腹の虫が鳴く。


「あはは。やっぱりお腹空いてるんじゃん」

「うるさいな。こんなに美味しそうなのが悪いんだ」


 パクッと卵サンドをひとくち口に入れる。あ。美味しい。

  見た目通りとても美味しかった。今までコンビニとかのサンドイッチしか食べたことなかったが、人が作った物も悪くない。

 

「本当に美味しそうに食べるね」

「まぁな。本当に美味しいから」

「ふふ。ありがとう」


 次々とココナが持ってきたサンドイッチを食べる俺だが、ふとココナの分がないことに気が付く。

 

「あれ? ココナの分は?」

「私の分は無いよ、朝は食べてきたから」

「そうなのか? なら、今全部食べるわけにはいかないな」

「なんで?」

「お昼ココナが食べる分無くなるだろ?」


 俺はこれだけ食べれれば充分だし。元々お昼で食べるために作ってきてくれたのだから。今全部食べるのは悪い。

 

「そんな事気にしなくてもいいのに」

「気にするの。何より俺はもうお腹一杯になったから」

「そうなの? 男の子ってもっと食べるものかと思ってた」

「もっと食べる人は食べるけど、俺はこれだけで十分だよ」

「そうなんだ」


 今のココナを見ていると、昨日のあの低い声は別人だったのでは? と思いたくなる。しかし、流石にいつも聞いている声を間違うほど、俺の耳は腐っていない。

  それから少し雑談をして、日課になりつつある、ココナとの特訓をするために特訓場所に向かう。

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