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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
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番外編 初詣

明けましておめでとうございます。今更過ぎますが、初詣のお話になります。なお、異世界の方には初詣なんてものはないので、楓くんが転生する前の現代でのお話となります。

  1月1日の午前8時過ぎ、俺は1人部屋で本を読んでいた。特に興味があって買ったわけではない本……。ドラマにもなっていて、ヒット作が並ぶ所に置かれていたため、なんとなく買った本だったが、これがまた予想以上に面白かった。そろそろ犯人を追い詰める終盤に差し掛かった所で家のインターホンが鳴り響く。

  俺はそのインターホンの音を聞き、本にしおりを挟み閉じる。そして、ソファーから腰を上げて玄関へと向かう。誰が来たのか確認しないのは、この時間でくる人物を知っているからだ。

  玄関まで来て扉を開けると案の定1人の少女が立っていた。少女は扉を開けた俺を見るなり笑顔を浮かべて喉を鳴らす。


「おはようございます。楓先輩。そして明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとう。沖田。」


 俺は沖田に笑顔を向ける。

 彼女はオレンジ色の瞳に水色のミディアムショートの髪。そして、サイズの合っていないぶかぶかのパーカーを着ている。


「さあ、先輩! 初詣に行きましょう!」

「え? 行かないけど?」

「え!? 昨日約束したじゃないですか!! メールで!」


 鼻を鳴らし、少し笑い声を出す。


「冗談だよ。でも、もう少し待っててくれ」


  俺のその言葉に首を傾げて不思議そうな顔をする。


「いや……言いにくいんだけど、なんか、リリーナがこれから来るって電話があってな」

「え……」


  リリーナと聞いた沖田は終始笑顔だったはずなのに、どんどん無表情になっていく。


「なんで?」

「い、いや。俺は一言言おうと思ったよ? でも、向こうが一方的に言ってきて、通話を切ったんだ」


  一瞬、俯いている沖田の方から舌打ちが聞こえてきたが、俺は聞こえなかったフリをしながら、会話を続ける。


「そ、それで。多分もうすぐ来ると思うから。待っててくれないか?」

「嫌です。先輩は一方的に言われたですよね?」

「あ、あぁ」

「なら、そんなの無視していきましょう。さぁ!」


  そう言いながら、俺の手を引っ張って歩き出そうとする。


「ま、待て待て、わかった、わかったから。せめて靴くらい履かせろ」


 そう言った時、透き通るような声が鼓膜に響いてきた。


「ダメですよ? 沖田さん。無理に連れて行こうとしては?」


 声のした方を見てみると、銀髪が綺麗な長い髪の少女が立っている。そして、沖田は歩き出そうとした足を止めて、その少女を睨む。少女はそれを無視して俺の方へ視線を向けて小さく頭を下げる。


「明けましておめでとうございます。楓さん。おまたせしてしまいましたか?」


 とても優雅に微笑む。少女ーーリリーナは沖田と同じで、俺と同じ学校に通う生徒でクラスメイトだ。そして、彼女の両親は母親がロシア人で父親が日本人のハーフだ。


「明けましておめでとう。リリーナ。一応、大丈夫だけど……」


 俺はチラリ、と。沖田の方を盗み見る。未だ彼女はリリーナを睨み続けている。小さく息を俺は吐いた。すると、リリーナは静かにこちらに歩み寄ると、俺の手を取る。


「さあ、初詣に行きましょう。楓さん」

「え?」


 そう言って、今度はリリーナが俺の手を引っ張り歩き出す。


「ちょ、ちょっと! どこに連れて行こうとしているの!」

「初詣なんですから。神社ですが?」


  何を当たり前のことを聞いているの、と言いたげな表情をしていた。

  なんでこの2人は仲良くできないんだろう……。


「楓先輩と初詣の約束したのはわたし!」

「私だってお約束しましたよ? 昨日」

「それは先輩から聞いています! でも、一方的だったらしいじゃないですか。なら、その約束は無効です」


  これが漫画とかなら、バチバチと火花を散らせているんだろうな。と呑気に俺は思っていた。


  最初の頃は俺も止めに入ったりしていたのだが、最近では止めても無駄だと悟り諦めて2人の満足するまで言い争いをさせている。


「無効……ですか。でも、楓さんは今拒否していませんでしたよね? つまり、私と初詣に行くことを望んでいるということなのではないですか?」

「楓先輩は優しいから拒否しないだけです! その先輩の優しさに漬け込んで、酷い人ですねリリーナ先輩は」

「そうですね……私は酷い女だと思います。でも、仕方ないじゃないですか? 私は楓さんが大好きなんですから。我が儘を言ってしまいます」

「リリーナ先輩のは我が儘じゃない! あと! 私の方が……………………その、なんでもないです」

「恥ずかしがることないじゃないですか? 沖田さんも私と同じで、楓さんが大好きなんでしょう?」

「う…………確かに好きです! でも、それは友達として!」


  リリーナは小さく息を吐いて「そういうことにしておきますね」と言った。

  そんな2人を眺めていて俺は朝から元気だなっと。考えていた。

  しかし、これ以上時間を食うのは流石に不味いので、そろそろ口を挟む。


「2人とも。その辺にしておいたらどうだ? 時間がなくなる」

「あ!? そうだった」

「私としたことが……。さぁ、行きましょうか楓さん」

「だ・か・ら! 私が最初に約束したのー!!」


 沖田は叫び、リリーナは俺の腕に抱きつきながら引っ張る。そして、その顔は笑顔を浮かべていた。


 ☆☆☆


 この街で1番大きい神社へ到着した。やはり年始ということもあり、人がたくさん往来している。


  大きい鳥居の近くまで来る。


「わぁー、やっぱり大きいな」

「そうですね……。圧倒されてしまいます」


  俺もそうだが、2人もこういう時でしか来ないため、鳥居の大きさに圧倒されてる。


  俺たちはゆっくりと鳥居をくぐろうとする。ふと、視界の端に鳥居を潜る前に、一礼をしている人を見た。もしかしたら、あれが本来の正しい神社の作法なのかもしれないと思った。しかし、2人は既に先を歩いているため、遅れるわけもいかずそのまんまくぐる。


「鳥居の前でも人は多かったですが、中もすご人の数ですね」


「そうですね。人混みが苦手ならリリーナ先輩は帰ってもいいですよ?」


「フフフ……ご冗談がお上手ですね。大丈夫ですよ? これでも、私はパーティーとかよく招待されていますから」


 そう。リリーナの家はお金持ちなのだ。俺も良く何故がリリーナに招待されることが多いが、俺はそんなパーティーとかの作法とか知らないのでいつも断っている。

  それでも、諦めず誘ってくるリリーナはすごい精神だとは思うが。


「なかなか前に進めないな」


 人が多すぎるため、前へ進むのにも一苦労。鳥居では先に歩いていた2人だが、この人の多さ、はぐれたら見つけるのにも苦労するので、俺の服を掴んではぐれないようにしている。

 個人的な意見を言わせて貰えば、リリーナだけはすぐ見つけられそうだ。彼女の容姿はそれほど目立つ。

 

「あ。やっと見えてきた」


 最初に声を上げたのは、沖田だ。そしてその視線の先には大きな鈴が付いていて、太い鈴緒が垂れ下がっているのが見える。そして、その前にはたくさんの人だかりだできていて、各々何かを投げている。

 そう――お賽銭をしているのだ。


「じゃあ、いくか」


 しばらくして、やっと大きな賽銭箱の前へ来た。そして俺たちは三人横に並んで、ご縁があるようにと、五円玉を下から上に手を振って投げ入れる。三人の五円玉は緩やかに放物線を描きながら賽銭箱に入っていった。その際にチャリンっと箱ので音がなる。

 そして俺たちはパンパンっと両手を叩き目を閉じてお願い事をする。

 どうか――沖田とリリーナが不幸な事がなく幸せでありますように。

 願い事を終えると、静かに目を開ける。


「ふう」


 俺と同じタイミングで沖田も願い事を終えたようだ。そして横を見てみると、リリーナがいまだに両手を合わせたままだ。

 随分と真剣な顔をしているな。そんな彼女を見ていると、リリーナの瞼がゆっくりと開かれる。そして、こちらに目線を向けて微笑んできた。


「お二人ともお待たせしました。それでは行きましょうか?」

「そうだね。他の人も参拝したいだろうし」


 俺も同意して、とりあえずその場から離れる。そして屋台などが並ぶ場所まで来た。


「すごく美味しそうな匂いが漂っているね」

「そうですね。でも何かを食べるにはまだ早いと思いますよ?」


 腕時計で時刻を確認する。俺の家を出たのが8時過ぎ。そして、現在の時刻は11時過ぎだ。特別早すぎるというわけでもないが、少し早い気がするのは確かだ。


「あれ? 上代くん?」


 突然、名字を呼ばれ俺はそちらに振り向く。すると、そこには四人の男女が居た。


「お前らは……偶然だな」

「そうだね。それで上代くんこんなところで何しているの?」

「1月1日でこんなところに来る理由なんて一つしかないだろ」

「あはは。そうだね」


 彼女は俺のクラスメイトの後藤だ。まさかこんなところで出会うとは思わなかった。後藤の後ろにいる3人のうちの一人は後藤の彼氏だなバスケ部で良く活躍しているの見たことがある。残りの二人は見たことすらない。


「ちょ、ちょっと。りん。この人誰?」


 後ろにいたもう一人の女子だ後藤の服を引っ張りそう言っているのが聞こえた。


「んー? あー上代くんのこと? クラスメイトだよ」

「く、クラスメイト? りんのクラスにこんなかっこいい人いたの!?」


 彼女の後ろにいる一人の男性がちょっとムッとした表情になる。あの子の彼氏なのかもしれない。


「しほ。彼氏くんムッとしているよ」

「いいのいいの。あとでご機嫌取りするから」

「それは聞こえないように言うべきなんじゃないか?」


 後ろの彼氏がそう言った。彼氏のそんな言葉を無視して、しほと呼ばれた少女はさらに後藤に詰め寄る。


「ねえ、クラスにあんな人いたのに、どうして狙わなかったの? りんなら心奪えたでしょ?」


 後藤は困った顔をしている。そして、こちらに一瞬だけ視線を向けてくる。


「私は見た目で判断したくないから」

「あーりんはそうだったよね。じゃあ性格最悪とか?」


 さっきの彼氏さんの気持ちが理解できる。それは本人に聞こえないように言うべきだぞ。しほさん。

 後藤はこちらに申し訳なさそうな顔を向けてきた。そして一言――


「あまりそういう事言うと。しほの事嫌いになるよ?」

「え?」

「別に上代くんは性格最悪じゃない。むしろ、優しいし、実際私の好みの人だよ」


 新年早々、とんでもない暴露話を聞かされているのは気のせいだろうか?


「じゃあなんで?」

「それは……」


 再びこちらに顔を向けてくる。しかしその視線の先は俺ではない。隣にいる二人に向けられている。そして俺も二人をみる――沖田とリリーナの二人を。

 二人は先ほどから一言もしゃべらない。まるで何かを警戒しているかのように。


「流石に勝ち目ないもん」

「あー。なるほど」


 しほと呼ばれていた少女は沖田とリリーナを見て。何かを納得した。


「それじゃ。お邪魔しちゃ悪いし行こうか」

「そうだね」

「上代くん。ごめんね、しほがバカな事言って。でも、この子根は良い人だから許してあげて」

「ごめんなさい」


 先ほどのことに関して謝罪の言葉を述べてくる。そしてしほさんも頭を下げた。一瞬驚いてしまったが、俺は笑顔を浮かべてこう言った。



「いいよ。気にしてないから」

「うん。ありがとう」

「しかし、二人とも仲良いんだな」

「うん、しほとは小学からの幼馴染なんだ。高校は違うところにいったけど、今でもたまに遊んだりするの」

「いいな、そういうの。俺も欲しいよそういう友達」

「じゃあさ。今は同じ高校だけど、大学とかいったり、社会にでたらさ。遊びに誘ってあげる」

「高校の時は誘ってっくれないのか……」

「あはは。冗談だよ、上代くんさえ良ければ、遊びにいこうね」

「あぁ、その時はよろしく。でも、その前に後ろの彼氏を俺に紹介してくれないか? さっきから後藤が俺に話しかけてきているから嫉妬しているみたいだし。誤解を解いておきたい」


 そう、後藤の後ろにいる、もう一人の男子がさっきから俺を睨みつけてきているのだ。ずっと睨み続けられうのは気分が良いものではないし。俺自身も後藤に気があるわけではないので、今のうちに誤解は解いておきたい。本当に後藤と遊びに行くときに修羅場とかになられてはたまったものではないからな。


「あー! ごめん。タクム! でも、タクムも知っているでしょ? 彼がタクムが心配するような人じゃないってことくらい」

「あ、あぁわかってはいる。上代にはバスケの練習相手になってもらったりしているから、話す機会も多いだけど――」

「後藤」

「ん?」

「俺にそんな気が無いとわかっていてもやっぱり心配なんだよ。女心が複雑な様に、男心も意外と複雑なんだよ。そこをわかってあげないと」

「んー私そういうの察するの苦手なんだよ」

「そうか。でも、たまにで良いから少しは考えてあげてくれ、俺はお似合いの二人が喧嘩して別れるなんてところみたくないし」

「お、お似合い?」

「お似合い……かな?」


 後藤とその彼氏は首を同時に傾げる。これは俺の本音だ。俺はこの二人が別れるなんて事になるなんて想像したくな。いや、むしろ想像すらできない。


「あぁ、めちゃくちゃお似合いだよ。だってバスケの時たまに話すけど、高確率で後藤との惚気話になるし、後藤も同じ様に口を開けば彼氏との惚気話じゃないか」


 二人の顔がみるみる赤くなっていく、そして二人とも顔を見合わせる。ほら、やっぱりお似合いだ。


「りん。顔、赤いぞ」

「タクムこそ……」


 顔を赤くして俯く。微笑ましい光景だと思う。


「そっちの二人も」 

「え?」

「二人の事は全然しらないけど。仲良くね。近くに理想の恋人関係の

 お手本がいるんだから」


 俺がそう言うと。二人は後藤達を見る


「ちょ、ちょっと上代くん!」

「上代お前!」


 俺は久々に大きな声で笑った。そして、俺の隣からも笑い声が聞こえ始める


「あはは。おかしい。先輩たち顔真っ赤」

「フフフ。後藤さんって結構面白い人だったんですね」


 その笑い声の主は沖田とリリーナだ。


「もう……」


 後藤はまだ赤い顔のまま唇を尖らしている。


「全く、ところで、上代」

「ん? なんだ」

「このさいだ。もしお前たちさえ良ければ、俺達と一緒に行動しないか?」

「え? 俺は別にいいぞ。沖田とリリーナは?」

「うーん。最初だったら嫌でしたけど、今ならいいですよ」

「私もかまいません。ご一緒させてください」

「良し決まりだな」

「ちょっと私たちまだ何も言ってないよ!?」

「え? 嫌なの?」

「全然OK!」

「じゃあ聞かないでよ!」


 再び俺達から笑い声が出る。こうして、俺たちは後藤達と共に行動することになった。そして、このとき俺は思った。きっと今年は良い1年になるだろう、と。


 ☆☆☆


 目が覚める。そして辺りを見渡す。木で出来た壁が目に入り。そして窓の外は暗かった。


「ゆめ……か」


 とても、懐かしい夢だった。あの頃は自分が死ぬなんて思わなかった。もう一度、後藤達に会いたいな……。俺の目が熱くなる。

 あれ? なんで俺は最初転生するとき、後藤達に会えなくなることに悲しみを抱かなかったんだ? そもそも。今のいままで後藤達の事を忘れていた。

 何故忘れていた? そう考えると、恐怖が俺を襲い始める。

 俺はゆっくりと少し硬いベッドから降りると洗面台に向かい顔を洗う。その後、窓の近くに向かい空を眺める。夜空の星空が綺麗だ。しかし、何故その星空よりお綺麗な俺の大切な思い出が、今まで消えていたのか……。そんな疑問が頭から離れずその日は朝までずっと起きていた。


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