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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
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20話 サナエという少女の独白

  わたしは二人が見えなくなるまで見送った。

  それから一人静かに微笑む。

  まさか、あんなことを言われるなんて……。

  「俺と一緒にルトガアの元へ行かないか?」か。少し言葉が違うけど、わたしはこの台詞を知っている。そして良く覚えている。

 

()()()君」


 彼の名前を呟く。

  わたしの大好きな人。

  わたしの愛しい人。

  わたしの初恋の人。

  楓君との思い出は全てわたしの宝物。

 

「くしゅんっ!」


 少し寒くなり、家の中に入る。それから、履物を脱ぎゆっくり奥へ向かう。

  一つの扉の前で足を止めた。

  そこは、わたしの師匠であり、もう一人の父親的存在だった、ルトガア・ヴェルデの寝室だ。

 ゆっくりと部屋の扉を開けると、そこにはわたしの部屋と違い殆ど何も置いていない。

  しかし、少し視線を左に向けるとそこには小さな机がある。その上に何枚もの羊皮紙がまとめられて置いてある。

  まぁまとめたのはわたしだけど。最初は机の上に散らばっていた。

 

「師匠……」


 静かに机に近づくと、羊皮紙を手に取る。そして内容に目を通す。

  そこに書かれているのは彼の――呪詛。

  わたしの師匠はこの町を魔物を恨んでいる。そしてこの世界すらなくても良いと思っていたようだ。

  何故彼がこれほど人を世界を恨んでいるのかは、この羊皮紙に全て書かれている。

 ペラペラと捲っていた手を止める。そこにはこう書かれている。

 

『俺はとんでもないことを知ってしまった。あまりにも信じられない事だった。だから、この気持ちを書き残しておこうと思う。俺の、俺の家族はこの町に殺された。あいつらは獅子の魔族に言われて俺の妻を、娘を差し出したのだ。許せない許せない許せない許せない許せない許せない、そして妻と娘のピンチに戦場で戦っていた自分も許せない』


 何度見ても心が痛くなる。

 

『この世界は争いをやめない、何故だ? 何故世界は争いをやめない? 争いが無ければ俺は家族を守れた。何故だ。何故だ何故だ何故だ何故だ!』


 ここで少し文字が滲んでいる。最初は気が付かなかったけど今ならわかる。師匠は泣いていたんだ。これを書いている時に……。

  自らの家族を失い、自分を責めて、レオーネに従うしかなかった町を恨み、争いをやめない世界を恨み泣いていたんだ。

  わたしの目頭が熱くなる。何度読んでもなれない。

  なんで一年も一緒に居て気が付かなかったのだろう。なんで、わたしは気が付いてあげられなかったのだろう。

  そんな自分が嫌になり引きこもってしまった。

  楓君が来なかったら今も引きこもってたかもしれない。そんな自分を想像して苦笑する。

 

「これ……楓君に見せるべきかな?」


 わたしがここに来たのは、その判断を下すためだ。

  正直、見せる必要があるかと言えば、無い、と思う。だけど、わたしの勘が何故か見せるべきだと言っている。

  自分自身の勘を信じるべきなのか……。

 

「……」


 あれから、何分たったのだろうか?

  一分、又は十分かもしれない。それでも答えは出ない。

 

「考えても仕方ないか」


 そして決断する。

  わたしはこれを――楓君に見せる。

  情報はなるべく共有をしておいた方がいいよね? それに、師匠がやろうとしていることはこの世界を壊すこと。それを止めないと。

  そして一枚の羊皮紙を見る。

 

『あれから数日。ゼルの孫のリリーが俺の元へ来た。そしてその目的は――世界を壊すこと。最初は何を馬鹿なことをと思った。しかし、話を聞いているうちにそれが本気だとわかる』


 リリー……楓君と知り合いぽかった人だよね?

  鏡越しでしか見れなかったけど、とても可愛らしい子だった。

  でも――怖かった。

 笑顔なのに闇がある。とても深い、深い闇が。

  憶測でしかないけど、楓君も勘づいている。だから、すぐに師匠に鏡を渡したに違いない。

 あの子は危険。楓君に近づけてはいけない人だ。

  でも……リリー、か。

  これも運命なのか、はたまた必然なのかわたしにはわからないよ。

 わかるのは彼女がとても危険だってこと。何故彼女と楓君は出会ってしまったのだろう。

  わたしは玄関の方へ足を進める。

  そして、玄関近くに飾ってある『刀』を見る。

 

「本当はダメなことだけど」


 刀を取り、引き抜く。銀色に煌めく刃が少しづつ姿を現す。

 『加州清光』それがこの刀の名前。

  今日からこの刀は楓君のためだけに振るう。彼がピンチなら何が何でも助けに行く。彼が人を殺せと命令するなら、それを遂行する覚悟はある。

  だけど……その前に彼がああなってしまった理由を知らなければ。

 今の楓君はとても危険な状態だ。

  彼との再会はとても喜ばしいことだったのに、彼のあの姿を見た時驚きもあった。

  わたしの知っている楓君じゃなかったから。

  あんなに優しい目をしていた楓君が、今はとても暗く儚い目をしている。

  あんな事になった理由を知らなければ、そして何とかして元の楓君に戻さなければ。

 

「そろそろ。戻って来るころかな?」


 刀を鞘に戻すと。元の位置に置く。

  今の日の傾き具合から推測して、たぶん、お昼の2時だろう。少し遅いかもしれないが、お昼ご飯を作らなければ。

  今日はまだ何も食べてないし。

  そしてわたしは台所へと向かい。昼食の仕度を始めるのである。

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