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転生黙示録  作者: 水色つばさ
1章  転生と出会い
6/63

4話 またもや命の危機?

 あれから、一週間が経過。

  ココナのおかげでこの知りたい事を知ることができた。

  まず、この世界の通貨の銅貨、銀貨、金貨だが、これは銅貨10枚で銀貨と同じ価値、そして銀貨10枚で金貨と同じ価値になるらしい。

  なので、俺は銅貨を100円、銀貨1000円、そして、金貨は10000円だと勝手に解釈している。

  まぁ、お金の価値の考えは多分これで問題ないだろう。

  そして、この町の名前はオルレットと言うようだ。

  あとは、オルレットで起こっている連続殺人事件の噂も聞いた。ただ、これはココナに聞いたわけではない。しばらく住んでいると自然と耳に入ってくるのだ。

  連続殺人事件は共通性はあまり無いみたいだけど、殺されているのは貴族の関係者が多いみたいだ、だけど貴族と関係のない人も殺されているみたいだし。本当によくわからない事件だと思う。

 

 そして、この1週間で一番驚いたことがある。

  それは――ココナが意外にもかなりの実力者だということ。

  これを知ったのは些細な事だった、俺がせめて自己防衛の為に少しは強くなりたいと言ったら、ココナが「だったたら私が強くしてあげようか?」と言ってくれたのだ。最初は冗談かと思ったが、結構真剣だったのでお願いしてみたのだが。

 

  まさかあそこまでの実力があるとは思わなかった。

  もちろん、リリーが見せた動き程ではないが、それでもかなりの腕だと素人の俺でもわかるほどにはあった。

  で、だ。現在、俺は非常にピンチな状態に陥っている。

  そう――何故なら、またゴブリン達に囲まれてしまっているのだ。

 

「あちゃーここゴブリンの縄張りだったか。前と違ってるな」

「前はどこだったんだ?」

「町から南東の方角だったんだけどね」


 なるほど……南東か――ん? 南東って俺がゴブリン達と出会った場所じゃないのか? まさかリリーがあそこで大暴れしたからゴブリン達もこっちに来たとか?

  だとしたら、俺が原因だなゴブリン達の縄張りが町に近づいたのは――。

 

「さてさて。負ける事は無いけど、カエデ君がいるからな」


 ココナには転生したことは伏せて、俺のこれまでの経緯を話している。そのため、ゴブリン達に襲われて動けなかった事とかを知っている。

 

「あまり見たくない物見せてしますかもしれないけど、我慢してね?」

「あぁ、それは大丈夫だ。なんかごめん」

「いいよ。今時魔物殺せない人いるの驚いたけど、それってカエデ君がとても優しいって証だと思うから」


 いや、ただ平和ボケしてるだけだと思う。

  こんな世界に初めから産まれていれば、魔物を殺すことに抵抗なんて無かっただろうから。

 

「カエデ君。そこから動かないでね、直ぐに終わらせるから」


 そう言うとココナは持っていたダガーナイフを構える。

  そして、身を低くして一気に一匹のゴブリンに近づくと首元を切り裂く。

  首を切られたゴブリンは一瞬のことで声をあげることができず、その場に倒れる。その場にどくどくと首元から赤い液体を垂れ流しながら。

  次にココナは標的を決め、そっちに向かって走って行く。そしてゴブリン達は仲間がやられたことで仇を討つようにココナを狙って集まっていく。

  次々と集まってくるのを見てココナは口の端を上げる。

  おそらくゴブリン達を自分に集めるのが狙いだったのだろう。

  そして、何故わざわざゴブリンを集めるたのか――それは俺からゴブリン達を離すためだろう。

  先程も言ったがココナはリリーほど人間離れな動きをしているわけではないが、的確に魔物の急所を狙って一撃で仕留めてる。

 

「あ! 危ない!!」


 一匹のゴブリンを仕留めたココナの後ろに、もう一匹のゴブリンが近づき持っている剣を振り下ろそうとしていた。

 

「ふッ!」


 しかし、ココナはすぐさま刺していたナイフを引き抜き、体を回転させながら背後に回り首を掻き切る。

 俺はそのあまりに華麗な動きに見惚れていた――しかしそれがいけなかった。

「グガァァァ!」

「しまッ!?」


 ココナに見惚れていたため、俺に近づいてくるゴブリンの存在に気が付かなかったのだ。

  やられる――そう思った瞬間、ナイフが俺の顔を通り過ぎゴブリンに刺さる。

  そして、ココナが走ってきて刺さったナイフを引き抜く。すると、そこから血が吹き出し、俺の顔にかかる。その鉄の臭いに吐き気が込み上げてくるが、ぐっと我慢する。

 

「大丈夫!?」

「あぁ大丈夫だ。しかし顔に血がかかった」

「あ。ごめん」

「問題はない。俺を助けようとしてくれただけだし、何より俺がぼーっとしていたのが悪い」


 そう、むしろ自業自得なのだ。いくらココナがいて心強いからといって、ゴブリンが俺の方を狙って来ないわけがない。むしろ、何もしてこない俺の方を狙う方が自然だ。

 

「まったく……なんでぼーっとしてたの?」

「ココナに見惚れてた」


 俺がそういうとココナが顔を真っ赤に染める。そして俺も自分が何を言ったのか理解して、顔が熱くなる。

 

「あ。その……」

「あはは。嬉しいこと言ってくれるね。ならもう少し頑張ってみますか」


 逆手にナイフを持つ。

  そして、腰に付けていもう一つのナイフを取り出し、それも逆手に構える。その動きは見事に様になっていた。

 

「ごめんカエデ君。今度は私の後ろから離れないでね。それと返り血沢山浴びちゃうかも」

「別に構わない返り血くらい。それを我慢するだけでこの場を乗り越えられるなら」


 今、周りはゴブリンだらけだ、先ほどまでココナを狙っていたゴブリンが全て集まって来たのだ。

  しかし、この数どうするんだろうか?

 

 

「グガァァァ!」


 一匹のゴブリンが飛び掛かってくる。ココナはそれを受け止めると。もう一つのナイフで体を切りつける、そして切り付けられて怯んだ隙を狙い、首を切り、遠くに蹴とばす。

  次は右に居たゴブリンが飛び掛かって来る。

  手を横にして誘導するように俺の体を押して、体を横にズラす。

  そして、ゴブリンの剣が先程俺達の体があった場所をすり抜けると、ココナは横に通り過ぎる瞬間を狙い、ナイフを首に刺す。

 


 ☆☆☆



「はぁはぁはぁ」

「はぁはぁ……これで全部かな?」

「みたいだな……」


 あれからココナは腕や手を使い俺が動くべき場所に誘導して、ゴブリン達から俺を守ってくれた。

  最小限の動き戦っていたため、ココナや俺は返り血まみれだった。

 

「あはは、お互い血まみれだ……近くに川があったはずだから、そこで少し洗い流そうか」

「そうだな……」


 流石にこれだけ血まみれだと、町の人たちは何事かと思うだろう。何故なら顔も手も体も足も血がべっとりとついているのだ。今まさに人でも殺して来たんじゃないかと思われても不思議ではない。

 

「それじゃ行こうか」


 俺はココナについて行くように歩く。

  ココナが言った通り川はすぐ近くにあった。するとココナが服を脱ぎ始める――

 


「て、何しているんだ!」

「ん? 何?」

「いや……何? じゃなくてなんで俺の目の前で脱ぎ始める」

「あ……ごめんごめん。じゃああっち向いて、誰か来ないか見張っててくれる?」

「あ。あぁそうする」


 そして、俺は後ろを向く。

  布の擦れる音を聞きながら、俺は考える。

  ココナって男の人の前で裸を見せるのは平気なのだろうか? それともお父さんと一緒に入っていたから、大丈夫とかそんな感じか? 

  いや――あの父親と一緒に入っているとか想像つかない。むしろ小さいころでも一緒に入っているとか、あの顔だと犯罪の気配するくらいだ。

  とりあえず、父親と入っていたから平気の線は確実に無いな。となると、男性に裸を見せる事に慣れてる? 

  いやいや。流石にないよな……ないよな? 嫌だよ。ココナがかなりのビッチとかだったら。

 

「カエデ君終わったよ」


 俺がアホな事考えている間にココナは水浴びを終えたようだ。

  振り向くと俺は目を見開く、なんと、ココナは服を着ずピンク色の下着の姿で立っていたのだ。

 

「な!? なんで下着姿!」

「だって、服も血が付いてるし。洗い流さないと」


 あ。確かに、流石に服も洗い流さないと、いけないか。

 だとしても、何か一言言って欲しかった、あとどうでもいいが、胸意外とあるな。


「ほら、カエデ君も洗い流してきなよ」

「あぁ、じゃあ行ってくる……覗くなよ?」

「はいはい。わかったわかった」


  これもうどっちが男でどっちが女かわからないな。本来、『覗くな』って台詞は女が言うことだと思うのに、なんで俺がその台詞を言うんだ……まぁ言った俺も俺だけど。

  まぁ、こう言っとかないと何かの拍子で見られそうだからな。

  とりあえず、俺は川の近くまで行き辺りを確認する。

  誰もいない事を確すると、俺はゆっくりと服を脱ぎ始めパンツだけ残して、他の服を俺はごしごしと洗い始める。

  それが終わると、顔を洗い返り血で付いているところをしっかりと洗い流す。水がとても冷たくすっきりする。

 

「はぁ……」


 俺は先ほどのゴブリン達との戦いを思い出す。

  最初襲われた時は何もできず、そして今回も何もできなかった。

  しかし、今回は震えは無かった……それが一番悔しい。何故なら、それはココナに守ってもらえると安心していたからだ。

  男なのに情けないな……。

  もう一回顔を洗う。今度は血を流すためじゃない、情けない自分を引き締めるためだ。

  ココナやリリーの様に強くなれなくても。せめて足手まといにならない程度には強くなりたい。

  でも――俺が動けないのは言ってしまえば平和ボケして、何かを殺すことを躊躇っているからだ……今回でそれを確信した。

 

「これは一筋縄ではいかないな」

「何が?」

「うおぁ!?」


 突然後ろから声をかけられて驚いてしまう。

  そして、後ろから声を掛けてきたのはココナだった。

 

「いきなり後ろから声を掛けてきたらびっくりするだろ!」

「だって、カエデ君いつまで経っても戻ってこないんだもん。心配しちゃって」

「あぁ悪い」

「……」


 何故か無言になるココナ。そして俺の体をまじまじと見る。そんなに見られると恥ずかしいんだが……。

 

「何? 俺の体、何か変?」

「ううん。ただ、結構鍛えてるなって」

「そうか?」

「うん。本当に鍛えてる人には劣るけど、腹筋とか引き締まってるし、全体的に普通に暮らしてる人よりは筋肉ある」


 そうなのだろうか? 確かに元の世界では部活とかには入っていなかったが、暇だったら顧問の先生から許可さえもらえば、スポーツ系の部活の練習の手伝いとかしてたからな。それでかもしれない。

 

「ありがとう。でも、あまりじろじろ見られると恥ずかしいから、やめてもらえるかな?」

「男の子でしょ? 堂々としてなきゃ。なんなら、下も脱いでも恥ずかしくないくらいには」

「いや、それただの変質者だろ!」

「あはは。ごめんごめん。ほら火を焚いたから、服を乾かそ?」


 どうやら俺が血を洗い流している間に焚火を焚いてくれたようだ。流石にまだ太陽が出てるとはいえ、下着姿でずっといるのは風邪を引いてしまう可能性あるからな、なるべく早く服を乾かす方が得策だろう。それに焚火の近くにいるなら、多少体を温めることもできるだろうし。

 

「あぁ。ありがとう」


 俺はココナにお礼を言って、焚火の元に向かう。そして近くに椅子の代わりになりそうな石があることに気が付く。

  おそらくココナが気を使って、その位置に焚火を焚いてくれたのだろう。

  俺は服を焚火の近くの木に掛けて、石の上に座り、手を焚火へと近づける。ココナも同様に石の上に座り、手を近づける。

 

「あったかいね」

「そうだな」


 それだけ言うとお互いに無言になる。だいたい1分くらい無言でいただろうか? その沈黙を破ったのはココナだった。

 

「ねえ。変な事聞くけどいい?」

「ん? なんだ?」


 ココナは少しだけ間を開けて口を動かす。

 

「今オルレットで起こっている連続殺人事件どう思う?」

「どうって……どうも思ってないけど。というか関わらない方がいいって言ったのココナだろ?」

「うん。そうなんだけど……」


 どうしたんだ? いつものココナらしくない。何よりなんでいきなり殺人事件の事なんて聞いてきたんだ?

 

  ココナはしばらく無言になる。そして、突然俺に飛びつき俺を地面に組み伏せる。

  目の前にココナの顔がある。その距離は今にも息がかかりそうなほどだ。

 

「ココ……ナ?」


  な、なんなんだ? 本当にどうしたココナのやつ……。

  ジッと俺の顔を見る。

  そこで俺は気が付く、ココナの目……その目はどこか暗い。

  リリー程ではないが、リリーに近い目をしている。

  何かに絶望し、恨んでいる目だ。

 

「もし……私が殺人鬼ならカエデ君は今ので死んでいるね」

「そうだな。だけど、もしココナが殺人鬼で俺を殺そうとするなら、それなりに抵抗はさせてもらうぞ?」

「魔物も殺せないのに?」

「別に殺しだけが抵抗することじゃないだろ? 何とか逃げようとすることも抵抗だと思うが」


 再び静寂が辺りを包む。

  そして、焚火がバチっと音をたてると同時にココナが口を開く。

 

「カエデ君に質問。もしカエデ君が大切な人を殺さなければいけない状況になったら、どうする?」


 一瞬冗談か何かなのかとも思ったが、その真剣な顔を見て、冗談という言葉を飲み込む。

 俺は戸惑いながらも、それを悟らせないように笑顔を作り答える。

 

「もしそんな状況になったら、俺は逃げる」

「逃げる?」

「あぁ……情けないかもしれないが逃げるな」

「逃げる事も許されなかったら?」

「それでも、逃げる方法を探す。俺は絶対に大切な人を殺す事だけはしない」

「無茶苦茶だね」

「無茶苦茶でもいいじゃないか。それが俺の選択なんだから。人って誰かに決められて動くものじゃないだろ? 自分で考えて動くものだ」


 その言葉にココナは目を見開く。その表情はまるでハトが豆鉄砲食らったかのように。

  しばらくして、今までで一番と言える優しい笑顔を浮かべる。

 

「誰かに決められて動くものじゃない……か。ありがとう。カエデ君」


 何故か俺はお礼を言われる。

  だが、俺はここでこう言わなければいけないと思った。

 

「どういたしまして」


 その言葉にココナは再び笑顔を見せる。

  そしてゆっくりと俺の上から離れ立ち上がり、かけてある服を確認する。

 

「服まだまだ乾くには時間かかりそうだし、適当に話でもして待ってようか?」


 そう言ってココナの目は先ほどと違い。どこか晴れた目をしていた。

 

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