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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
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12話 危機

 俺が倒れてから数日が経過した。

  あの時目が覚めると、アリアが俺の隣にいてびっくりしたが、サナエから事の経緯を聞きアリアに謝罪の言葉を述べた。

  しかし、サナエと話していて突然倒れた……か。

  何故だろうか? 何かかが引っかかる。

  しかし、近くにいたサナエがそう言うのだからそうなのだろう。

  まぁそれは置いといて、現在、日課になっているサナエとルトガアの家での食事なんだが。

  今日は何故か少し外が騒がしい。

  人が走っている音が先ほどからしている。

 

「今日はやけに騒がしいですね」

「そうだねー何かあったのかな?」


 サナエとアリアはそんな話をしている。

  俺も気にはなっている。いつものこの時間なら皆起き始めた頃だったりで、基本的には静かだ。

  ところが、今日に限って人が多く通り、慌ただしい。


「ん?」


 一言も話さず箸を進めていたルトガアが突然箸を止めた。

  一瞬どうしたのかと思ったが、その理由はすぐにわかった。

  ルトガアが箸を止めると同時に、この家の扉が激しく叩かれたのだ。

  ドンドンドンドンドン!

  とても激しい音だ。

  こんな早朝にこんな大きな音をたてれば近所迷惑もいいところだろう。

  しかし、朝からいつものヒダの町と違う雰囲気が流れているため、何か嫌な予感がした。

 

「なんだろ?」

「確認してこい」

「わかった」


 そう言ってサナエはゆっくりと玄関に向かっていった。

  扉の開ける音が聞こえると、すぐさま男性の声がこちらまで響いてきた。

 

「ルトガアさんは起きてるか!」

「え? えぇ、奥にいます」

「すまない。失礼する」

「あ。ちょっと!」


 そんな会話が聞こえてきたかと思うと、ドタドタと激しい足音が聞こえて来て一人の男性がこちらに顔を覗かせる。

 

「なんだ? 今は食事中だぞ」

「すみません……しかし、緊急事態なんです!」


 その男性の表情から只事ならぬ気配を感じルトガアも「言ってみろ」と言った。

 

「魔物の軍団がこのヒダの町に近づいています!」

「なるほど。だが、そんな事は前もあっただろう。何故そんなに焦っている?」

「今回のはただの魔物の軍団ではないんです! 獅子の姿をした魔族が率いているようなのです!」


 その瞬間――ルトガアの目が見開く。

 

「何だと!!」


 鬼の形相になり一気に立ち上がる。

  その際にテーブルに乗っていた食器などは倒れ中身がこぼれる。

  何だ? ルトガアの様子が何か変だぞ?

 

「間違いないんだな!」

「ひッ! は、はい。偵察に行った者の報告ではそう言っておりました」


 ルトガアのあまりの威圧感に報告に来た男性は怯えてしまっている。

  本当にどうしたんだ? 今までこんなルトガアは見たことが無いぞ。


「サナエ今すぐ出るぞ! 直ぐに準備をしろ」

「う、うん」


 語尾も全体的にキツイ物となっている。

  ルトガアは何かを焦っている。

  それは俺にはわからないが、報告にあった獅子の魔族――これが何か関係しているのは確かだろう。

  いきなりのルトガアの豹変に、アリアもおろおろとしている。

  サナエも同じ様にいきなりの事で戸惑いながらも、戦う準備を整えに行く。

 

「カエデ。お前はどうする?」


 正直、まだちゃんと剣術をマスターできてない。

  ここで、町を破壊されるのは困る。だから俺は――

 

「俺も行く」

「そうか、ならばすぐ宿屋に戻り準備してこい。そして準備ができたらここに戻って来い」

「わかった」


 俺はいまだ状況についていけてない、アリアの手を引いて立ち上がり宿屋へ戻る。

  それから、少しだけ状況整理をして戦う準備を整える。

  アリアには宿屋に残ってて貰おうとも思ったが、頑なに「一緒に行きます」と言い。言う事を聞いてくれなので仕方なく連れていく事にした。

  ルトガアの家の前に再び向かうと人だかりができていた。

  その中央に一際身長が高いガタイの良い男が立っていた。

 もちろん、その男性はルトガアだ。

 

「悪い遅れた」


 俺は近くにいたサナエにそう言う。

 

「ううん。大丈夫」

「何だの集まりなんだこれ?」

「師匠が珍しく自らが指揮するって言い出したの」

「え?」

「いつもは全く他人任せで、どっしりと家で構えているだけだったのに……本当にどうしたの師匠……」


 サナエは胸に小さく拳を作り。心配そうな顔でルトガアを見つめている。

  俺も釣られるようにルトガアを見る。

  彼は確かに体が大きく威圧感はあった。しかし、それでもどことなく温かさが見え隠れしていた。

  だが――今の彼からはその温かさは消えている。

  そして、その目は恨みと憎しみに包まれているのがわかった。

  町の人との話が終わったのだろう。各自班分けされたように一塊で散っていく。

  そして、その後一組だけが残り、ルトガアが俺達に気が付く。

 

「来たか。お前たちはこいつらと言ってれ」

「待って! わたし達まだ、何もちゃんと聞いてないんだけど!」

「各自チームを組んで戦う事になった。そして、お前たちのチームはこの第四チームだ」


 その言葉と同時に視線をそちらに向ける。

  第四チームの中には、先ほどルトガアに魔物の軍団が来ている事を伝えに来た奴もいた。

  その他にもガタイが良い奴。身長は普通だが、目が鋭くい男などがいた。

  流石はヒダの町と言った所だろう。

  一人一人が戦闘に慣れしている風貌だ。唯一違うのはルトガアに報告に来た奴だけだろう。こいつだけは何故だろうか? あまりに普通過ぎる。

 

「わかったら、さっさとこいつらと共に行け」

「師匠……」


 チラリとサナエの顔を見る。何かを言いたそうにしていたが、それを押し殺している様にだ。

  俺でも気が付けたくらいだ。ずっと前から一緒にいるルトガアが気が付かないはずがない。しかし、あえて何も言わない。

  それが尚更彼女を苦しめているか、唇を軽く噛んでいる。

 

「サナエさん?」

「ごめんね。アリアちゃん行こうか」

「はい……」


 サナエはアリアにそう言うと、第四チームに向かっていった。

  俺も直ぐにあとを追おうと思ったがルトガアの事が気になり、彼に少し話掛けてから向かおうと思い至った。

 

「ルトガア」

「なんだ?」

「何があった? いつもの貴方らしくない」

「……わかっている。俺が冷静さを欠いていることは……だがな今回はこの気持ちを抑える事ができないんだ。俺は魔物を、いや魔族を許す事ができないそして――」


 そこから先を口に出そうとして思いとどまったのか、半分まで開けた口を閉じた。

 

「どうした?」

「いや、何でもないさっさと行け」

「わかった」


 俺はその言葉に従いサナエ達の元へ向かおうとすると、後ろから小さく声が聞こえた――

 

「サナエを頼む」

「え?」


 振り返るが、ルトガアは反対方向に歩いて行ってしまっていた。

  サナエを頼む――か。

  その意味は良くはわからないが、歩いて行くルトガアの背中は修羅の道を歩こうとしているように見えた。

  俺は一瞬だけ瞑目して、再び足を動かす。

 

「師匠と何か話していたの?」

「あぁ少しだけな」

「何か言っていた?」

「いいや。特に何も……し強いて言うなら。自分が冷静さを欠いているのはわかってるって言ってた」

「そう――」


 ルトガアのあのセリフをサナエに言うべきか悩んだが、伏せて置くことにした。

  今のルトガアの状態にサナエも混乱している筈だ。そんな状態であんな事言われたと言えばさらに混乱を招いていしまいかねない。

 

 ☆☆☆


 俺達第四チームは、町から西に方角へと向かっていた。

  ルトガアに報告しにきた。ユミルさんが言うには魔物軍団は町を包囲するように進軍しているとの事。

  そして、その軍団の指揮を取っているのが獅子の姿をした魔族だとか。

  その魔族が居る方はルトガアが担当するらしい。

  やはりルトガアと獅子の姿をした魔族とは、何かあったのは間違いないだろう。

  彼が冷静さを失うほどの何かが……。

  サナエもその魔族には心当たりが無いと言っていることから、おそらくサナエすら言っていない事だ。

  俺が踏み込むべき問題ではないだろうが……。

  サナエの顔を見ていると、どうにかしてあげたいという気持ちが沸いてくる。

  恩を売りサナエをこちら側につかせる為に。

 

「もうすぐ、着きます」


 そんな声が聞こえ、俺は考える事をやめて目の前の事に集中することにした。

 

「ここで待っていればいいの?」

「はい。ここで魔物を迎え討つ段取りです」

「ふーん」


 サナエはあたりを見渡す。

  それに釣られるように俺もあたりを見渡す。

  確かにここはひらけた場所だし、地面もとくに動きにくいとかはない。

  戦うならこれほど良い場所は中々ないだろう。

  出来れば色々と策を考えてから迎え討ちたいとは思うが……そんな時間がない程に進軍スピードが速いようだ。

  しばらくして、何か大群の足音が聞こえる。

  そして、ここで初めてとある気配に気が付いた――


「ん?」

「なに……この気配」

「お二人とも。どうかしました?」

「ユミルさん。師匠の方に魔族が居るんですよね?」

「はい。報告によればそう聞いてますが……」

「……皆さん! 気を抜かないでください!」

「ど、どうしたんですか!?」

「その報告は間違えてる! 魔族はこっちに側にいる!」


 その言葉にあたりに緊張が走る。

  皆顔を強張らせ、ネズミ一匹の気配すら逃さないようにしながら、サナエに向かって口を開く。

 

「何故そんな事がわかる?」


 このメンバーの中で、一番ガタイの大きい人物が話掛けてきた。

 

「もう敵は近くにいる説明している場合は――」


 瞬間――

  強大な気配が一気に近づいて来て、真上にまで来る。

 

「上!」

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