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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
51/63

10話 夕食

「ただいまー」

「中に誰もいないぞ」

「もう、こういうのは気分の問題なんだから、野暮な事いわないで!」

「あ、あぁ悪かった」


 二人のそんな会話を聞きながらも、俺とアリアは中へと入っていく。

  それから、今朝案内された場所に来た。

  ルトガアは今朝と同じ場所に座る。

  おそらく、あそこがルトガアの定位置なのだろう。

  俺とアリアもなんとなく今朝と同じ場所に座る。

  そして、サナエは皆が座るのを確認して、口を開く。

 

「皆。何か食べたい物とかある?」

「俺はなんでもいい」

「俺も特にこれと言って食べたい物はないが、決めた方が楽か?」

「そうだね。決めてくれた方がこっちも楽だね。そう聞いてくれる楓君は流石だね、うちの師匠とは大違い」


 そんな発言をされたルトガアは、小さく「何でもいいから、何でもいいと答えたんだ」と言っていた。

  おそらく、サナエにも聞こえていただろうが、スルーする。

 

「アリアちゃんは何がいい?」

「えっと……私は……」

「あーそうか。アリアは高級料理の名前しか知らなかったな」

「はい……ごめんなさい。皆様の家庭的料理も素敵な物だとはわかってはいるのですが……」

「気にしなくてもいいよ。育ちの問題だろうからね。だとすると料理とかもしたことない?」

「はい……」

「ふーん」


 サナエは何かを考える素振りをする。

  そして、ぽんっと両手を叩くと、口を動かす。


「じゃあさ、料理、わたしと作ってみる?」

「え? 良いのですか?」

「うん」


 アリアの目が輝きだす。

 

「ありがとうございます!」

「随分、嬉しそうだな」

「はい! これで、私一度も料理をしたことが無かったので、一度してみたかったのです!」


 なるほど。

 しかし、これは勝手なイメージだが、アリアは料理が得意そうに見える。

  まぁ、先ほどの発言でアリアが料理したことが判明したのだから、得意や不得意以前の問題だが。

  だが、俺が意外だったのはサナエが料理を作れるという事だ。

 

「なるほどな。多少失敗しても、問題ないからな」

「酷いです!!」

「あはは。悪い悪い。しかし、サナエが料理作れるとは思えなかったな」


 俺のその言葉にムっとした顔をする。

  アリアの横を通り抜けると、俺に近づいて来る。

 

「もう! 楓君! なんでまたそんな事いうの!」

「あ、あぁ……わ、悪い」

「あ――ごめん。思わず熱くなっちゃった」

「いや、俺も悪い。それほど料理が好きだったんだな」

「いや――そういう訳じゃないんだ」


 じゃあ何なのだろうか?

  そんな疑問が頭に浮かんだが……。ズキリと痛みが頭に走る。

  その痛みに意識が行く。

  全くここ最近は無かったのに、何故いきなり。

 

「楓君? どうしたの?」

「あぁ、悪い、少し頭痛がしてな」

「…………そうなんだ」


 そう一言発すると、サナエは踵を返し歩いて行く。

 アリアの近くまで再び戻ると、こちらに振り返り、口を開く。

 

「夕飯楽しみにしててね!」

「――――あぁ」


 アリアも「頑張ってきます」と言って、サナエの後ろを追って奥へと歩いて行った。

 

「どうした?」

「なんでもない」

「うちの弟子にでも見惚れていたか?」


 見惚れていた部分で俺は目線を逸らす。

  その反応を見て、ルトガアは大口を開き笑い出す。

 

「あっはっはっは! そうか、そうか! 見惚れてたか」

「まだ、何も言っていないだろう」

「俺の目を見て反論しない時点で肯定しているのと同じだ」


 待ったっく仰る通りだと思う。

  しかし、それがわかっていても、俺はルトガアに目を合わせられない。

 

「まぁ師である俺が言うのも変だが、サナエの見た目はかなりのものだ。こんな町じゃなければ、男どもが放っておけないだろうな」


 確かに、サナエは容姿がすぐれている。

  ミディアムショートの水色の髪はとてもサナエの雰囲気に似合っている、そして、バストは小さいわけでもなく、大きいわけではない。ウエストも鍛えられていいるからなのか、細い。

  あ、でも、腹筋はごつごつしている感じではなかったな。

 

「まぁ楓お前ならサナエを嫁にとってもいいぞ?」

「はぁ? 何を言っているんだ……」

「だがな……もし、サナエに泣かすようなことをしてみろ? 師としてお前を殺しに行くぞ?」


 なんでだよ。

  というか、問答無用で殺されるのかよ。

  この師、怖すぎる。

  妹が大切な姉のメアリーに、自らの弟子が大好きな師匠。

  俺が関わる人は、どうしてこんな人たちなのだろうか?

 

「ひ、酷い」

「ふ、冗談だ」


 いや、あれは冗談に聞こえなかったぞ……あの目は本気だった。

 

  それからしばらくして、サナエ達が料理を持って戻って来た。

  アリア達で食べた物より高級感はない。

  しかし、まさに家庭の料理といった雰囲気が漂っている、この料理は俺は好きだ。


「じゃあ、さっそく食べよう!」

「はい!」


 サナエとアリアは両手を合わせる。

  俺も同じ様に手を合わせる。ルトガアも予想外に手を合わしていた。

  皆が手を合わせたのを確認すると、サナエは口を動かす。

 

「いただきます」


 その掛け声とともに俺も他の者も「いただきます」と言って箸を手に持って料理を食べ始める。

  焼き魚を小さく切り、口へ運ぶ。

  美味しい――

  俺は次に肉じゃがに似た物を口に運ぶ、これも美味しい。

  というより、これは味も肉じゃがに近い。

 

「あ。それ結構自信作なんだけど、どうかな?」

「あぁ美味しい。なんというか、肉じゃがに近い味がする」

「そうだね。わたしが頑張って肉じゃがに近い味付けにしたから」

「なるほどな」


 サナエは普段からマイペースな雰囲気を出しているから、料理は人並みかと思っていたが、結構料理に力を入れる人だったんだな。

 

「ん?」


 ふと、俺の横に座るアリアに目を向ける。

  アリアは箸をプルプルさせながら、一生懸命おかずを口に運んでいく。

  そうか……アリアはフォークやナイフといった物しか使った事がないのか。

  だから、箸で食べるのは一苦労するんだな。

 俺はサナエにフォークを持ってきてもらえないかお願いしようと、顔を前に向けるとサナエもアリアの方を見ていた。

  そして、視線をこちらに向けると、笑いながらうなずく。

 

「アリアちゃん、箸使いにくい?」

「え? はい……お恥ずかしながら、私は箸といった物を使った事がなくて」

「なら、フォークを持ってきてあげようか?」

「いえ! 大丈夫です!」


 アリアの予想外の発言に、俺とサナエは驚きの顔になる。

 

「え? なんで?」

「だって、この中で使えないのは私だけですから」

「そんなの、気にしなくていいんだぞ?」

「そうだよ」

「はい。でも、私はやっぱり皆さんと同じ様に食事を食べたいのです」


 アリアはいつもの様に笑う。

  その笑顔を見ると何も言えなくなる。

  何故かはわからない。しかし何も言えなくなったのだ。

  それはサナエも同じなのか、何も言わない。

 

「ふむ……箸を使えなくても困ることも無いだろうが、まぁ本人が使いたいと言っているんだ。それを止める事もないだろう」


 ルトガアがそんな言葉を発する。

  まぁ確かにその通りだ。と思った。

 

「そうだね……。うん。アリアちゃん、ゆっくりでいいからしっかり箸の使い方を覚えるんだよ?」

「はい! ありがとうございます」


 俺はあえて何も言わず、無言で箸を動かし始める。

  狙っていたわけではないだろうが、俺の後に続く様にアリアも箸を動かして行く。

  それから、ゆっくり、本当にゆっくりとアリアは箸を動かし、口に運んでいき食べる。

  食べるのに普通の倍は掛かってしまったが、なんとか全てを食べ終わる。

  ちなみに、俺やサナエはアリアと合わせるようにゆっくりと食べていた。

 

「ごちそうさまでした」

「はい。ごちそうさま」

「ごちそうさま」


 各々食事を終えた合図を口に出すと。食器を持っていこうとする。

  しかし――

 

「いいよ。あとはわたしがやっておくから」


 サナエの口からそんな言葉が出る。

 

「そうか――悪いな」

「うん。いいよ」


 そう言ってサナエは食器を片づけて持って行く。

  そのあと、ふと思い出したことがあり、アリアに聞くことにした。

 

「なぁアリア」

「はい? なんでしょう?」

「アリアは何を作ったんだ? どれを作ったか聞いてなかったから」

「あ――」


 アリアは少し恥ずかしそうな顔をし始める。

  そして、目をキョロキョロとさせて、言うか迷っているようだ。

  言う事を決意したのか、俺の目をしっかりと捉えると、口を開き喉を鳴らす。

 

「お恥ずかしながら……、私が作ったと言えるものはありません」

「え? どうしてだ?」

「いえ……ほとんどサナエさんが付きっきりで、教えて貰っていたのです」

「あぁ」

「それで……任されたおかずなどもあったのですが、失敗してしまいまして、サナエさんがフォローしてくれたのです」


 あぁなるほど。

  サナエがフォローしたから、作ったのは自分じゃない。だから、自分が作ったのと言える物はない、か。

 

「そんな事無いと思うぞ?」

「え?」

「確かにサナエのフォローは入っているかもしれないが、9割はアリアの力で作ったんだろ? なら、それはアリアが作った物だ」

「そう……でしょうか?」

「俺はそうだと思っている。だから、教えてくれないか?」

「はい……えっと、さばのみそ煮とサナエさんは言っていました。それを作りました」


 俺は記憶の中を探り、さばのみそ煮を思い出す。

  確かにあれだけ少し形が崩れていたな。

  なるほど、あれはアリアが作ったからだったからなのか。

 でも、一体何を失敗したのだろうか? 俺の記憶の中ではアレはかなり美味しかったが……。

 

「あぁ……あれか」

「うう、あんまり美味しくなかったですよね」

「そうか?」

「え?」

「俺はそんな風に思わなかったぞ? むしろすごくうまかったが」

「本当……ですか?」

「本当だ。だから、そんな顔するな」


 少し心配した顔で俺の目を見てくる。

  なので、少し頭を撫でてやることにした。

 

「はう……」


 撫でられて少し恥ずかしそうに俯くアリア。

  そんな姿をしばらく見ていたいなっと思った矢先、一つの声が部屋に響く。

 

「あーアリアちゃん、いいなぁー」


 その声の主はサナエだ。おそらく食器の片づけから戻ってきたのだろう。

  しかし、いきなり何を言っているのだ。

 

「あわわ、サナエさんこれは!」

「アリアちゃん抜け駆けずるいよー」


 抜け駆けって何だ、抜け駆けって。

 

「抜け駆けってなんだよ。というか、そんなに羨ましいか? 頭撫でるの」

「他の人だったら、嫌だけど。楓君に撫でてもらうのは羨ましい」

「あ、そ」

「なんか返事が適当……」

「じゃあ、俺は少し、外の空気吸ってくる」

「ちょっと!? 無視しないでよ!」


 俺はアリアから手を離すと、ゆっくりと縁側に向かって歩き出す。

  手を離した時、アリアが少し寂しそうな声を出したような気がしたが、おそらく気のせいだろう。

  そして、後ろでギャアギャア騒いでいる、サナエが居るのも気のせいだろう。

 縁側に来ると、すぐに座る。

  それから、空を見上げて、息を一つ吐く。

  俺は時々こうやって空を見上げて、頭を整理しなければならない。

  そうしないと、今自分が何をすべきなのかを見失いそうになるからだ。

  ゆっくりと、しっかりと、今までの事を整理する。

  そして、しばらくすると、後ろから声を掛けられる。

 

「何ぼーっとしているの?」

お待たせして、申し訳ないです! と、いっても今回はごはん食べて、お話して、で終わりましたね。

次も会話だけにはなると思います。現状、おそらく12話から大きな戦闘が入る予定です。楽しみにしていてください!


それでは、感想や評価など良ければお願いします! 


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