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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
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9話 お背中お流しします。

 俺はとりあえず、マナーが悪いと思いながらもタオルを腰に巻きながら、温泉に入る。

  温泉はとても気持ちい、あぁとても気持ちいのだ。

  しかし、今の俺はその気持ちい温泉を満喫しているほどの余裕がない。

  ここは温泉自体はそこそこ広い。大人5、6人入ってやっと窮屈になるくらいだ。

  なので本来なら、三人入っても別に何も問題ない。しかし何故そんな余裕がないか?

  それは――何故か、サナエとアリアが俺にくっ付いてくるのだ。

 

「なぁ、離れてくれないか?」

「で、ですよね……」

「ダメだよアリアちゃん。ほらもっと体を押し付けて」


 おい、アリアに変な事を教えるな。

  というか、アリアも体を押し付けなくていい。


「うぅ……」

「恥ずかしいなら、無理してやらなくても」

「いいえ! 大丈夫です!」

「流石アリアちゃん!」

「サナエは煽るな。あと、アリアに変な事を吹き込むな」

「えー、わたしー楓君が喜ぶと思ってやってるのにー」


 そんなぶりっ子の様に、声を高くしそう言う。

  その態度に少しイラっとしたため、頭を叩く。

 

「いたぁ、何するの!?」

「天罰だ」


  そう言って俺は立ち上がる。

 

「どこに行くの?」

「体を洗う」

「そうなんだ」

「変な事をするなよ?」

「しないよー」


 信用はできないが、何かしてきたら先ほどの様にすればいいだろう。

  そしてゆっくりと、なるべく距離を離れているところで体を洗い始める。

  そしてしばらくしても誰かが近づいてくる気配を感じた。

  まぁ予想通りといえば予想通りだ。

  むしろ、ここまでするようなやつが、何かを仕掛けられる機会を見逃すはずがない。

 

「何をしようとしている?」


 そう言いながら振り向くと。案の定サナエとアリアが居た。


「あらら、流石に予想されてたか」

「当り前だろ」


 俺はジト目でサナエを見る。

 

「まぁわたしが、何かするわけじゃないから安心して」

「何を安心しろと……」

「あの……楓様良ければお背中お流ししましょうか?」


 大きなため息を吐く。

  さて、これはどうするか。

  本音を言えば。断りたい、断りたいのだが……。ちらりと、アリアを見る。

  なんでそんな顔するんだ。

  断り辛いだろう。

  またも大きなため息が出る。

  俺は今日だけで、ため息何回つくことになるんだろうな。

 

「ん」

「え?」

「背中流したいんだろ?」

「あ……。で、では失礼します」


 そう言って、アリアは俺の体に触れてくる。

  しかしその触り方が恐る恐る、といった感じなので背中が凄くくすぐったい。

 

「うわーこれが、楓様のお背中……ごくッ」


 まて、なんか今ゴクって音が聞こえなかったか? 本当に大丈夫なんだよな?

  まさか、清楚な見た目しているの、意外と獣だったりしないよな?

 

「では、いきます」


 ゆっくりとタオルで背中をこすってくれる。

  なんというかこれは、すごく恥ずかしいな。

  というか、改めて思ったが、女の子と一緒に温泉入るのも、かなり恥ずかしいことだよな。

  向こうではそんな経験はなかったし、何よりそういう人が居なかった。

  いや――恋愛感情を抱いた人はいたか。

  あっちの時は、全く気が付かなかったが、ココナに恋をして、その感情が理解できるようになった。

  そして、思い出すと。俺は恋愛感情を向こうでも抱いた経験があった。

  それが、どんな人だったかは思い出せないが……。

 

「何ぼーっとしてるの?」

「な!?」


 唐突に目の前にサナエの顔が現れる。

  それに驚き、仰け反る。

  しかしその勢いが強すぎたため、俺はそのまま後ろいるアリアを巻き込み倒れる。

 

「あ!? 危ない!」


 サナエが反応して、手を掴んでくれるが、石鹸などで滑りやすくなっていたのか。サナエは足を滑らせ、そのまま俺に上に覆いかぶさるように倒れてきた。

  まるでサンドイッチの様に、俺は二人の女の子に挟まれてしまった。

  上も下も柔らかな感触があり、俺の男子としての欲望が反応しようとする。

  しかし、なんとかそれを耐えて、サナエを上からどかすと、すぐさま体の石鹸を流し温泉に入る。

 

「危なかった……色々と」

「いたた……随分とすばやく温泉に入ったね」

「うぅ、重たかったです……」


 俺が温泉に入ると同時に、二人は起き上がる。

  そして、俺は二人の姿を見て後ろをすぐさま向く。

 

「ん? どうしたの楓君?」

「楓様?」


 どうやら二人は気が付いていないようだ。

 

「あのな。二人とも、タオル……取れてるぞ」

「え……? あ」

「きゃあ!!」


 そう――今の騒ぎで、二人の巻いていたタオルは乱れてしまい。

  胸の部分が、あらわになってしまっていたのだ。

 

「うぅ……見られてしまいました」

「……楓君のエッチ」

「いや、流石にそれは不可抗力だし」


 サナエの言葉に抗議を言う。


「はぁ……まぁそうだね。じゃあアリアちゃん、わたしたちも温泉にまた浸かろう?」

「は、はい」


 二人のひたひたと歩いてくる音を聞きながら、俺は心を落ち着かせる。

  そして、入って来る音が辺りに響き渡る。

 

「ふう、いい湯だね」

「そうですね」


 なんだか、先程の事が頭から離れず、今すぐにでものぼせてしまいそうだ。

 

「なぁ」

「何?」

「なんですか?」


 俺の言葉に二人は同時に反応する。

  そして、一拍置いて俺は口を動かした。

 

「なんで、こんな事したんだ?」

「……」

「んー、そうだね」


 アリアの声は聞こえなかったが、代わりにサナエが喉を鳴らした。

 

「わたしはね、楓君の疲れを癒したかったからだよ」

「わ、私も同じ気持ちです!」

「なんか逆に疲れが増した気がするんだが?」

「う……」

「あはは……それはごめん。でもおっかしいなー、わたしが読んだ本では一緒に入って背中流してあげると、男の人が喜んで、疲れが吹っ飛んだって言ってたんだけどなー」


 一体何の本を読んだんだ。

  そんな展開があるのはアニメや漫画くらいなものだぞ。

  まぁ、この世界にはどちらもないから、もしかしたら、何かそれに近い書物があるのかもしれないが。

  俺は後ろを向いているから、二人の表情は見えないが、声の感じからしても二人の気持ちは本物だろう。

  本当に俺の疲れを癒そうとしてこんなことをしたのだ。

  なら、俺は別に二人を責めるつもりはない。

  まぁ疲れはしたが、これはこれで、悪い気はしないからな。誰かに尽くされるの――

 

「そうか……わかった。ありがとう」

「えへへ……」

「うふふ」


 二人の笑う声がこの温泉全体に響き渡る。

  しかし、流石に少し長く浸かりすぎたのか、頭がぼーっとしてくる。

 

「悪い。先に上がる」

「え? どうして?」

「のぼせてきた」

「あぁそれは大変です。どうぞお先に上がっていただいていいですよ」

「あぁ、ありがとうな」


 そう言って俺はタオルが腰から落ちないように持ちながら、脱衣所へと向かう。

  そして、脱衣所で服を着ると、貸し切りの温泉の部屋から出る。

  そして、温泉に入る前の記憶をたどりながら、ロビーへ戻って来た。

 

「こういうのは、大体座る場所があるが……」


 辺りをッ見渡す。

  すると座る場所を直ぐに見つける。

  俺はその場所まで行くと、ゆっくりと腰を下ろし天井を見る。

 

「今後の事を、そろそろ考えないとな」


 まだまだ俺は弱い。

  しかし、サナエやルトガアのおかげで、俺はここに来た時よりも強くなれた。

  ずっとここに長居している訳にはいかないのだ。

  時間は有限――一分一秒も無駄にできない。


「そうだとはわかってるのに、こんな事をしているのは、どうかと思うがな」


 ぽつりと独り言を言い苦笑いする。

  さて、と。まだサナエ達が出てくるには時間がかかるだろう。

  彼女達はまだ体も洗っていなかったのだから。

  流石に俺が居ると落ち着けないだろうし、早々に出てくる事にしたが、こうしているのも暇だな。

  しかし、ここには特に暇を潰せるような場所はなさそうだし。

 

「はぁ、ここで待っているか」


 そう思い、なんとなく辺りを見渡す。

  すると一人の女性が目に入った。

  あの人は確か――

  向こうも俺の事に気が付いたのか、こちらに近づいてくる。

 

「やぁ、また会ったね」

「貴女は……セリア」

「おおーちゃんと覚えてくれたんだね。光栄だ」

「俺はそんな偉い人じゃないですよ?」

「何を言っているんだ。帝都で王女とその妹をはべらかしていたと聞いているよ?」


 一体誰がそんなを言っていたんだ。

  というか、帝都の事も知ってるのか。

 

「あ。モニカも君の事を気に入ってたし、モニカもたぶらかしていたのかな? 中々隅に置けないねー」


 俺は警戒を強める。

  セリアは今モニカと言った――

  モニカ・ヴェローチェ。帝都に行ったときにメアリーやアリア達の城の使用人として働くことになった時に、俺の指導役だった人だ。

  しかし、その正体はリリーの仲間で、何かを探る為に使用人として潜入していたのだ。

 

「おっと。そんなに警戒しないでよ。確かに私はリリーの仲間だ。でも、君たちには何もしないよ」

「証拠は?」

「ふむ……ないね。でも、私がここに居るのはある人物に会うため」

「ある人物?」

「そう、あ。でもその人の名前は教えられないよ? これは流石に仕事内容だから他言は禁止されているから」


 流石にそう簡単には漏らしてはくれないか。

  あわよくば今の流れで教えてくれないかと思っていたんだが、仕方がない。

 

「じゃあ。その会いたい人はこの場所にいるんですか?」

「何でそんなことを聞くの?」

「ここにセリアが居たから」

「なるほど……。でも、それも教えられない。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」


 居ると言っているようにも、居ないと言っているようにも聞こえる、あやふやな回答をする。

  これでもダメか。

  俺は考えるどうすればこの人から情報を聞き出せるかを――

 

「無理だよ?」

「え?」

「私は君に仕事の情報を漏らす様な真似はしない」


 含みのある笑顔を俺に向けてくる。

  リリーの仲間はこういう人しかいないのか……リリー本人も、モニカもまるで目的を悟らせてくれない。

  しかも、化物の集まりだ。

  この人もあの時のチンピラを相手にしているところしか見たことがないが、かなりの実力者だ。

 

「そんなに気になるなら。私達の仲間になればいいじゃないかな?」

「何?」

「リリーは君の事を欲しがっていたよ?」

「何故リリーが?」

「さぁ? 理由までは教えて貰えなかったけど、なんか気にしていたよ」


 リリーが?

  俺がリリーと会ったのは、オルレットに向かう途中だ。

 その後も何度かあったが、彼女が俺を気にするような事は無かったはずだ。

 

「おっと。長話しすぎたかな。じゃあね黒の剣聖」


 一方的に会話を切って、セリアは小走りでどこかへ行った。

  その後、すぐに後ろから声を掛けらる。

 

「お待たせ楓君」


 どうやら、サナエ達が温泉から上がってきていたようだ。


「あぁ、大丈夫だ」

「えー? 本当? ここ暇を潰すようなものないから暇だったんじゃない?」

「いや――意外と暇を潰せたよ」


 まさかセリアにこんな場所で会えるとは思っても居なかったからな。

  まぁ肝心の彼女が誰に会いに来たのかは聞けなかったが。まぁ誰かに会いに来てここにいるっという事だけは知れたからな。

  リリーは俺とほぼ同じ目的で動いている。

  だと、すれば彼女達の動きをより知ることができれば、こちらにも魔王に関する情報が手に入る筈なんだ。

 

「そうなんだ。それじゃあ行こうか」

「あぁ」

「はい」


 俺達が動き出そうと、すると低い声で声を掛けられる。


「ん? お前たちここで何をしている?」


 声を掛けられた方を見ると、ルトガアが立っていた。

 

「師匠こそこんなところで何してるの?」

「ん? 俺か? 俺が温泉を好きなのを知っているだろう」

「あーそういえば、そうだった」

「弟子の癖に師匠の事を知らないとはな」

「弟子だからって、別に師匠に趣味とか好きなものなんて興味ないよ」


 サナエの一言に、少しショックを受けた顔をした。

  この人ってこんな厳つい顔しているけど、中々面白い人だよな。

 

「ふん! そうか、ところで、楓」

「はい? この後予定はあるか?」

「いや……俺はないが」


 ちらりとアリアに目線を送る。

  その視線に気が付いたアリアはニコリと笑って、口を動かす。

 

「私も用事は無いですよ」

「そうか、なら飯は家で食べていけ」


 ここから、宿屋まで戻れば夕方になる。

  もちろん、サナエ達の家に向かうとしても同じだ。

  時間的には丁度いいだろう。

  ならお言葉に甘える事にしよう。

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」


 それからは、ルトガアも含めて帰り道を歩いて行った。

ついに温泉回が来ましたね。まぁ……もう少し、イベントが合っても良かった気もするんですが、どこまでがOKなのかわからなかったので、今回は控え目にさせてもらいました。


また似たような展開になったら冒険してみたいですね……その時は控え目にしたバージョンも書かないといけませんが、もし引っかかったてもすぐに対処できるようにw


 では、次回もお願いします。

よければ感想や評価などお願いします。

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