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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
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4話 セリア・ルーン

 サナエに町を案内してもらう事になってから三十分が経過した。

  ちなみに、ルトガアはサナエがいれば十分だろうと言って先に家に帰っている。

  俺達の元を去る際に、晩飯は家で食え。と何とも上から目線で晩飯に招待された。

  そして、今現在俺達は最初のサナエの宣言通り、甘味処に来ている。

  しかし何というか、ここは見れば見るほど日本のような場所だな。

  ぜんざい、饅頭、羊羹、団子。俺でも知っている物が揃っている。

  そして店の店員の服装も和服ときた。周りに歩いている人たちが同じ様に和服ならば、まさに時代をさかのぼってタイムスリップした気分を味わえただろう。

 

「楓様、お待たせしてもうしわけありません」

「あぁ、いいよ。どうだ? 何か美味しそうなものあったか?」

「はい、見てください」


 そう言って俺に見せてくるのは饅頭や団子だ。

 

「美味しそうだな」

「はい!」

「はえでふんは――」

「待て。団子を口に入れながらしゃべるな」

「んくッ。楓君は本当に何でも良かったの?」

「あぁ何でもいいさ」

「甘い物はあんまり好きじゃない?」

「いいや。そいういうわけじゃない。ただ、そういのは女の子に任せておいた方が外れがないだろ?」

「そうかー。なら、その期待に応えれると思うよ? わたしのおすすめを買って来たから」


 俺に団子を差し出しながら、笑顔を向けてくる。

  俺はそれを受け取ると一口食べる。うん、甘い。そして少し現代にいたころの懐かしさを覚える。

 

「楓様?」

「なんだ?」

「泣いていらっしゃいますか?」

「え?」


 その言葉に慌てて確認する。しかし俺は涙など流していなかった。

 

「涙なんて出てないじゃないか」

「はい。出てはいません。だけどなんだか泣いている気がしたのです」


 泣いている気がした……か。そうかもな確かに俺は今泣いていたのかも。

  現代にいたころの懐かしさ、そしてあの平和だった日々。あの頃に戻りたいと思った。アリアにはその気持ちが伝わってしまったのだろう。

  俺はアリアのおでこに手を近づけると、そのまま弾く。

 

「いたぁ!」

「ふ」

「な、なにするんですか!?」

「何となくだ」

「何となくでやったのですか!?」


 何となくでデコピンを食らったアリアの文句を聞きながら、先程から視線を向けている人物に顔を向ける。

 

「どうした? まさかお前も俺が泣いていたとかいうのか?」

「ううん。わたしはそんな感じはしなかった。ただ……」

「ただ?」

「辛そうでどこか寂しそうな感じがした」

「は?」


 サナエが何を言っているのかわからなかった。もっと笑って欲しい? どういう意味だろうか?

 

「何を言っているんだ? 初めて会ったお前に俺の何がわかる?」

「…………そうだね。わからない」


 長い、とても長い間ができる。アリアはこの空気に戸惑い。サナエは目を伏せたままだ。

  やってしまったと思った。何もあんな言い方をしなくても良かったのではないか。自己嫌悪が溢れてくる。

  後悔先に立たず。まさにこのことだ。

  俺は深いため息をつき、ポケットから金貨を一枚出し、サナエに差し出す。

 

「ん」

「何これー?」

「二人とも雰囲気悪くして悪かったな。お詫びに何か好きな物買ってきたらいいよ」


 俺がそう言うと、二人は驚いた顔をする。そして、サナエとアリアは微笑みを見せてくれる。

  俺から金貨を受け取ると、また甘味処へ向かう。

  二人が離れると3人から4人で固まって話をしていた奴らが、こちらに近づいてきた。

  何となく嫌な予感がする。

 

「よぉ」

「何か?」

「あれはお前の恋人か何かか?」

「別にそんな関係ではないが、それがそんなことを聞いてどうするんだ?」


 ニヤニヤとして気持ちが悪い奴らだ。まぁ俺の予想ではナンパとかそういったものなのだろう。

  だが、何故俺のところに来たのかが謎だ。二人をナンパしたければ、二人の元に行けばいい。だが、こいつらは俺に話掛けてきた、そして俺に恋人かどうか確認を取って来た。本当にその行動になんの意味があるのか。

 

「じゃあさ、俺達をあの二人に紹介してくれないかな?」


 俺の肩に腕を回してそう言ってくる。

  あぁそういう事か。こいつらの行動の意図が見えてきた。

  つまり俺を使って、二人に近づこうって事だな。普通に話しかければ、警戒されてしまうからな。

 

「残念だけど、断らせてもらう」

「はぁ? てめぇ、これが見えねーのか?」


 俺は奴の手を見る。するとそこには一本のナイフが握られていた。

  こんなもので脅せると思っているのか、という事はもしかして、こいつらここがどこか知らないのか?

 

「ナイフだな。ところでお前らはここがどこか知っているのか?」

「あぁ? ヒダの町だろ? 中々の美人が沢山居るって聞いてるぜ」


 あぁ、やっぱりな。こいつらここがどこなのか全く理解してない。おそらく今日来たばかりなのだろう。

  目の端でアリアとサナエを見る。二人はまだこちらに気が付いていないようで、二人で楽しそうに話をしている。

  そして次はザっと周りを見る。この場を通る人、または立ち止まって友人と話すやつ。そのほとんどがこちらに目を向けている。

 

「……そんなもので脅されても、俺はお前らを紹介するつもりは無い」

「てめぇ!!」


 男がナイフを振りかぶる。しかしそれが下ろされることは無かった。

  何故なら、一人の女性が男の腕を持っているかだ。

 

「そこまでにしておいた方がいいよ」

「なんだアマぁ!?」


 その男の大声でサナエやアリアもこちらに気が付いてしまった。

  彼女達は全ての状況を判断することはできない、しかし、俺の近くでナイフを持った男が居るのだ、何か問題に巻き込まれたと悟ったのだろう。二人は心配そうな顔をしながらこちらに近づいて来ようとしていた。

  だが、俺はそれを手で合図して止める。二人は驚いた顔をしたが、その場で見守ることにしたのだろう。こちらに近づいてくる気配が無くなった。

 

「君たち、もう少し言葉使いを直した方がいいね。そんなんじゃ、女の子を落とす事できないよ?」

「うるせえ! 関係ない奴は引っ込んでろ!」


 男が空いている手で女性を殴ろうとする。しかしそれよりも早く女性は男の足を払い、転ばせる。

  良い動きをする人だな。さっきのは男の行動を予測して足払いをしたのだろうが、素人では簡単にはできないはずだ。

 

「くッ! お前らやっっちまえ!」


 どうやら残りの奴らも襲ってくるようだな。流石にこの人だけでは難しいか?

  俺がそう思っていると、目の前の女性が俺に向かって口を動かした。

 

「大丈夫」


 そう言い、女性は襲ってくる男たちを無駄のない綺麗な動きで捌いていく。

  せわしなく目を動かし、しっかりと男達の位置を把握して、一人一人対処している。

  素直にすごいという感想が頭に浮かぶ。

 

「な、なんで当たらないんだ!」

「無駄無駄。君たちみたいな、隙だらけで戦闘経験も無いんじゃ、私には勝てないよ?」


 元々俺が起こした問題だし、辛そうなら助けようかと思っていたが、彼女が言った通り『大丈夫』だったみたいだな。

  あのなめらかな動きと体の動き、戦闘経験は豊富だ。流石に10や20だと対処は難しいだろうが、この人数なら余裕だろう。

 

「はぁはぁはぁはぁ」

「どうしたの、もう終わり?」

「何なんだ、こいつ……」

「これでわかったでしょ? 君たちじゃ、私に勝てないって」

「ちッ! おい、もう行くぞ」


 どうやら向こうのリーダーも勝てないとわかったのだろう。諦めて取り巻き達を連れてどこへ行ってしまった。

 

「全く困ったものね」

「ありがとうございます」

「いえいえ、でも余計な助太刀だったかな?」

「いいえ、助かりました」

「そっか……ん?」


 笑顔を少し見せた後、横に目線を向ける。俺もそれに釣られるように目線やると、駆け出してこちらに向かってきている二人の姿が見えた。

 

「なかなか、可愛らしい子たちだね。あれは君の恋人かな?」

「いいえ違います。貴女まであいつらみたいな事言わないでください」

「ふふッごめんごめん。じゃあ私は用事があるからこれで失礼するね」

「あ。待ってください」

「何?」

「名前だけ教えてくれませんか?」

「私? いいよ。しっかり覚えておいてね。私の名前はセリア・ルーン」


 黄色い瞳をこちらに向けながら少し得意げにな顔で自己紹介する。



「セリアさんですね。俺は上代楓と言います」

「別にセリアでいいよ。何よりかしこまらなくていいから」

「わかった」

「よろしい。じゃあ失礼するね、黒の剣聖――」

「え?」


 俺は思わず情けない声を出してしまった。俺は確かに自己紹介はした、だが、俺が『黒の剣聖』だとは言っていない。

  また、リリーの関係者かもしれないな。用心に越したことは無いだろう。何故彼女は俺が行く所先々で現れるのか。

  まぁセリアがリリーの仲間と決まったわけではないが、可能性は極めて高いだろうな。

 

「楓様!」

「楓君!」

「二人とも悪いな、心配させた」

「それは別にいいんだけど、あの人誰なの?」

「さぁな、謎の強いお姉さんってところじゃないか?」

「そ、そう」

「まぁそんな事より、買う物は買ったみたいだし、町案内。再開してくれ」

「え? あ、う、うんわかった」


 それからは特に何も問題なく、町を一通り回ることができ、帰りにサナエの家により食事を食べて、1日が終わった。

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