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転生黙示録  作者: 水色つばさ
3章 ヒダの町の天才剣士
42/63

1話 戦神ルトガアとサナエ

 あれから更に数日が経過して、ついにヒダの町の姿が見えてきた。

 

「楓様、楓様! 見えてきましたよ!」

「そうだな」


 まるで家族と遊びに来た子供の様にアリアははしゃぐ。

  その姿は少し微笑ましいものだ。

 

「しかし、今まで見たことがない雰囲気の町ですね」


 確かに帝都とかを見ているアリアにとっては珍しいのかもしれない。しかし転生者の俺にとっては、この雰囲気は意外と見慣れている。

  そう――このヒダの町の雰囲気を表すなら。時代劇の街並み、というところだろう。

 

「アリアにとっては見たことない雰囲気かもな」

「楓様は見たことあるんですか?」

「あぁヒダの町に来るのは初めてだけど、こういった雰囲気の町は何回か見たことがある」

「そうなんですねー」


 しかし、少し驚いている、まさかこんな町が存在しているとは――

  ここなら、本当に刀の使い方を学べるかもしれない。そしてあわよくば、刀を使った剣術を教えて貰えるかもしれないな。

  そして、しばらくして町の目の前へと到着する。やはり遠くからでも見えていた通り、時代劇に出てくる町にそっくりだ。

 

「うわー!」


 アリアも初めて見る物ばかりだからだろう、口を少し開けている。

  お嬢様としては品に欠けるけど、まぁ今は俺だけだし別にいいだろう。

 

「あっ……失礼しました」


 俺の視線に気が付いて、自分が口を開けていることに気が付いたのだろう。少し顔を赤くしながら、謝罪の言葉を述べる。

 

「気にしなくていいよ。俺しか見てないんだし」

「楓様の前だからこそ慎むべきなのです」


 その言葉に少し笑みが零れ、アリアの頭をなでる。

 

「な、なんですか?」

「いいや。なんとなく」

「……嬉しいんですが、この場所だと人目もあって恥ずかしいので、やめてくださると……」


 先ほどよりもさらに顔を赤くして、それを隠すように俯く。

  少しその行動が可愛らしかったが、これ以上やり続けると、いくらアリアでも機嫌を悪くするだろう。なのでそっと手を頭から離す。

 

「ぁ……」

「ん? どうした?」

「いいえ。何でもないです。さぁ! 町に入りましょう!」

「そうだな」


 そして俺達は町の中へと入って行った。

 

 ☆☆☆


「あれ?」


 しばらく歩くと、何やら人だかりができている場所を見つける。

 

「何でしょうか?」

「わからない。行ってみるか?」

「はい」


 そしてゆっくりと人だかりに近づくと、その中心に身長二メートルはある長い髭の生えた大男と、その男には劣るがそれなりの高身長でガタイのいい男が居た。

 どうやらあの二人がこの人だかりの原因みたいだ、だが、ただの喧嘩ってわけでもなさそうだな。

  俺とアリアは更に近づく。すると、二人の会話が聞こえてきた。

 

 

「何で戦えねーんだよ!」

「何度も言っているだろう。俺はお前と戦うつもりはない」


 なるほど、あの鎧を着ている奴が大男に勝負を挑んでいるのか。そして、その勝負を大男は受けないと言っているのだが、鎧の男が引き下がらないため、こんなに人だかりを生んでしまったのか。

 

「楓様。何かもめているようですね」

「だな、だけど俺達には関係なさそうだ。行こう」


 そう言って歩き出そうとしたその時――

 

「何の騒ぎなのー?」


 気が抜けるような喋り方をしながら、一人の少女が現れた。

  その少女薄い水色の髪の色にミディアムショートと呼ばれる髪型をしていて、この世界では初めて見る『パーカー』を着ていた。しかし、そのパーカーはサイズが合っていないのか少しぶかぶかとしている。

 

「おお、帰ったかサナエ」

「うん、帰って来ましたよー。でもこれ何の騒ぎ?」

「いや、こいつが俺と勝負がしたいと言って、聞かないんだ」


 それを聞いたサナエと呼ばれた少女は鎧の男を見る。

 

「師匠またですかー?」

「またとか言うんじゃない。俺だって好きで勝負を挑まれてるわけではないのだから」

「全くもうー。それなら戦ってしまえばいいじゃん」

「おい。こいつは誰なんだ? ルトガア」

「うん? こいつか? こいつは俺の一番弟子だ」

「で、弟子……」

「はーい。わたし、ルトガアの一番弟子をやらせてもらってます。サナエと言います。でも、やることはいつも買い物とか家の掃除とかですが」


 弟子と聞いて驚いた顔をしている鎧の男に、のんびりとした喋り方で自己紹介をする。

 

「そうだ。おまえ」

「なんだ?」

「もしサナエと戦って勝てたら、勝負を受けよう」

「な! それは本当か!」


 ルトガアと呼ばれた大男の提案に鎧の男は表情が明るくなる。

 

「えーわたし戦うの嫌だよ?」

「頼む。それに師匠として久々にお前が戦っている姿がみたいしな」

「んー。なんか納得はいかないけど、向こうはやる気みたいだし。わかったよー」

「助かる」


 そして、サナエはちょっと待っててねーっと言いながら家に入る。それから1分もしないうちに家から出てきて、その手には刀が握られていた。

  俺はその少女に興味が少し沸いた。この世界に来て初めて、自分以外に『刀』という武器を使う人と出会ったのだ。

 

「楓様?」

「アリア。悪いがもう少しだけ見ていていいか?」

「ええ。構いません」


 アリアに承諾を得て、しばらくこの騒動を見守ることに決めた。

 

「それじゃ、鎧のおじさんやろうか?」

「ふっ。いくらルトガアの弟子とはいえ、流石にこんな小娘に負けるほど俺は弱くない」


 そう言いながら、鎧の男は剣を構える。そして同じくサナエも刀を構える。しかし、その構えは独特だ。柄の部分を顔くらいまで上げ、刃の先端を相手に向けている。

 

「あの構え……」

「どうかしましたか?」

「いいや、何でもない」


 一瞬どこかで見たことがある気がしたが、おそらくこれも時代劇で見たことがあるのだろう。


「へッ! なんだその構えは」

「これはちゃんとした構えだよー。(かすみ)の構えって言うの」

「そうかよ」


 男は剣に力を籠める。そして、ルトガアを一瞬だけ見た。まるで開始の合図を急かすように。

 

「血の気の多いやつだ。では両者準備はいいか?」

「わたしはもう大丈夫だよー」

「俺も大丈夫だ」


 両者が大丈夫言い。ルトガアは頷く。

 

「では――はじめ!」


 その合図とともに決着がついた。

 

「な!?」


 サナエは合図とともに男の目の前から消え、突きを繰り出していた。そしてその刃は寸止めされていた。

  あまりにも早すぎる動きに男も驚愕の顔をする。

 

「なんだよ……今の動き」

「勝負ありだな」


 見た目的に俺と変わらない年齢のはずだ。なら、俺とどっちが強いのだろうな。

  俺は彼女の強さを見てさらに興味が沸く。

 

「はぁ……めんどくさかったー」


 そう言って刀を鞘に入れると、家に入って行こうとする。

  しかし――

 

「くっそおおおおおおお!」


 突如男が叫び声をあげながら、ルトガアに斬りかかる。

 

「こんなことで戦神(せんしん)とまで呼ばれた男との戦いを諦められるかぁ!」


 ルトガアはその行動を見ても微動だにしない。そして男の刃が彼に届くかと思ったその時に、間に鞘が割り込んでくる。

  そして、その鞘を割り込ませたのはサナエだ――

  彼女は鞘で剣を受け止めたまま刀を抜き、男の腕を斬る。

 

「が!?」


 続けざまに横に一閃。男の首から血が噴き出す。そして俺は見た、彼女の目を――

  先ほどとはうって変わって、彼女の目はまるで狼のような目をしていた。

  俺はそれを見て生唾を飲み確信する。

  あの子は強い。俺よりも、もしかしたらリリー達にも、後れを取らないほどかもしれない。


「あ、あぁぁ」


 男がゆっくりと地面に倒れる。そしてルトガアに向かって手を伸ばす。まるで、俺はまだ戦えると言いたいかの様に、しかしそのその手は彼の元には届かず、静かに息を引き取る。

 

「流石だな。サナエ」

「もう。わたしが守ること期待しないでよー」

「お前ならアイツ程度なら何とかできると思っていたからな。何より奴では俺に傷を負わせることはできない」

「まぁそうなんだけどねー」


 今、目の前に死体が転がっているとは思えないほど呑気に話している。

 

「さてと。流石にこれは片づけないといけないな」

「わたしは嫌だよ?」

「あぁ俺が片づけておく」

「じゃあよろしくですー。わたしは野次馬も散らしておくね」


 右端から声をかけていく。

 

「もうおわりましたよーほらほら、散ってくださいー!」


 順番に野次馬を散らしていき、残るは俺達が混じっている場所のみとなった。

 

「はーいこちらの人達もですよー」


 そう言われ次々と散らばっていき、残るは俺とアリアだけとなった。

 

「あれ? そこの人達も早く散って――」


 オレンジ色の瞳が俺と目が合った瞬間、サナエは目を見開く。

 

「な、なんで……」

「どうしたサナエ?」

「え? い、いや。なんでもないよー」

「そうか。ん? お前らは」

「どうも。さっきの戦い見させてもらいましたよ。お弟子さんは随分と強いですね」

「まぁこいつの剣の才能はかなりのものだからな」

「そうですか……ところで、俺達旅をしていましてここに初めて寄ったんですが、お名前をお聞きしても?」

「ふん。そんな丁寧な言葉を使わなくていい。俺はルトガア。ルトガア・ヴェルデだ」

「わ、わたしはー……サナエ」

「それだけか?」

「……そうだよ。ね、師匠」

「あ、あぁそうだな」


 なんだか歯切れが悪いな。

 

「そうですか」

「それで、人の名前を聞いたんだ。お前達ももちろん名乗ってくれるよな?」

「ええ。俺は上代楓だ」

「わ、私はアリア・レイチェルと言います」


 アリアの名前を聞きルトガアは驚きの顔になる。

 

「アリアだと!? まさか……」

「おそらくアンタが思っている通りの人物だ。色々事情があって、俺と行動を共にしている」

「そうか……ならば深くは聞かない」


 ルトガアはアリアの事を知っているみたいだったが、その弟子であるサナエはどうやら知らないらしく、まるでお人形のような名前だねーなんて言いながらアリアと会話している。

  少しアリアも楽しそうだ。

 

「ふ。サナエのやつ楽しそうだな」

「そうなのか?」

「あぁアイツがあんなに笑っているのは久々にみた。まぁ話し相手だと、俺くらいだからな」

「ん? 話相手はアンタしかいないのか?」

「あぁ、別に年の近い女が居ないわけではないが、ここは戦いを好む者が集まる町だからな、どうしてもサナエの事をそういう目で見るやつが多い」


 なるほどそういう事か。

  普通に話をしているだけでも観察される――確かに、それはあまり心地の良いものではないな。

  そう考えるとアリアも似たようなものなのかもしれない。彼女はいつも明るいく察しががいい。これは姉のメアリーも同じだが、それは人の動きをしっかりと見ているからだろう。

  人の上に立つ者として、本質をしっかり見極めなければいけない。そしてそれはとても精神的にも肉体的にも疲れる事だろう。彼女は帝都に居る時はずっとその状態だったに違いない。

 まぁメアリーやアラン、もしかしたらモニカも彼女にとっては心を許せる相手だったのかもしれない。しかし残念な事にアランは魔物側についていたが。

 

「何を考えている楓」

「いいや。うちの姫様は今まで大変だったんだなって思っていただけだ」

「当然だろう。人の上に立つとはそういう物だ」

「そうだな。ところでルトガア」

「なんだ?」

「この町の宿屋はどこにあるか教えてもらえるか?」

「そうだな。わかった。おい! サナエ!」

「んー? 何」

「お前こいつらを宿屋に案内してやれ」

「あー」


 パンっと両手を叩く。

 

「この町に来たのは初めてだもんねーじゃあ案内するよ」

「珍しいな。いつものお前ならめんどくさいと言いそうなものだが」

「ひどいよーわたしだって、いつもいつもめんどくさい。なんて言ってるわけじゃないんだから」

「そうか。なら頼む」

「はいはーい。それじゃ行こうか、アリアちゃん、かえでく……上代君」


 ん? なんだ、今一瞬俺の呼び方変えなかったか?

 

「なぁサナエ」

「なにー?」

「別に楓と呼んでくれて構わないぞ?」

「あ……えへへ。じゃあお言葉に甘えてそう呼ばせてもらうね楓君!」

「あぁ」


 楓君と呼ばれるのは久々だな。少し懐かしく感じる。

 

「じゃあ宿屋へご案内しまーす」


 そして俺達はサナエについていく。思いのほか距離は遠く無くて助かった。

  宿に入り受付を済ます。

  最初は部屋を別々にするつもりだったのだが、アリアが一緒の部屋でお願いします。と受付の人にお願いをしてしまい、一緒の部屋になってしまった。

  野宿の時は仕方が無かったが、流石に宿で二人一緒というのは少し落ち着かない。

  まぁもう同じ部屋になってしまったのは仕方がないので、諦める事にした。

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