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転生黙示録  作者: 水色つばさ
2章 双子の皇女と黒の剣聖
39/63

15話 決着

「ふっ!」


 掛け声とともにモニカさんは消える。

  次に姿を現したのは、エグルの目の前だ。

 

「くっ」


 エグルは一瞬反応が遅れるが、何とはガードする。

  しかしモニカさんの攻撃はそれだけでは無かった。再び姿を消すと今度はエグルの後ろへと現れる。

 

「相変わらずモニカは早いですね」

「そうですね。モニカは私より少し早いですからね。彼女より早い人は私は見たことがありません」


 どうやら二人にはモニカさんの動きが見えているようだ。

 

「まだまだ、という事か」

「え? 何がですか?」

「いいえ。なんでもないです」


 俺はまだリリーの足元にも及ばないだろう。

  しかし、リリーだけでなく、あの占い師やモニカさんすら及ばないとはな……。この世界には俺知らない強者が、まだまだいるみたいだな。

  悔しい。

  確かに俺より強い奴が、まだまだたくさんいる事はわかっていた。

  わかっていたが――三人も現れると自信すらも奪われる。

 

  もう少し師匠の元で修行するべきだったかもな。

 

「はッ!」

「甘く見ないでもらいましょうか!」

「ッ!?」


 モニカさんとエグルお互いに攻防を繰り広げていた。

  だが、優勢はモニカさんだ。

  決してエグルが弱いわけではない。モニカさんが強すぎるのだ。

  エグルはモニカさん相手によく持っている方だと思う。彼女の動きは今の俺では見えない、おそらく今戦っても100%負けるだろう。

  それほどまでに早いのだ彼女の動きは、その動きを一言で表すなら――神速。

 

「良く私の動きについて来れますね」

「私は目は良い方なんですよ」

「なるほど、そういう事ですか」


 その一言で納得してしまうのは見た目が鳥の姿だからだろう。

 

「では、次はもっと早くさせてもらいますね?」

「これ以上早くなるんですか」


 モニカさんのその台詞に、流石のエグルも戸惑う。

  おそらくエグルもギリギリモニカさんの動きが見えていただけだろう。

  しかしあれ以上早くなるという事は、もうエグルでも目で追う事は出来なくなるという事、つまり今のエグルでは詰みとなる。

 

「仕方ないですね。お望み通り加護を使わさせて貰いましょう」

「やっと出す気になったみたいですね」

「そうですね。ところで、あのアンデットはいつまで放置しておくのですか?」

「そうですね。僕の魔力も無限ではないですからね、そろそろ疲れてきました」


 そう言うと槍で床をコンっと叩く。

  すると、アランの足元に魔法陣が現れる。瞬間――火柱が上がる。そしてその火柱の色は紫色だ。

 

「きゃッ」

「があぁぁぁぁぁ!!」

「灰となるがいい」

「な……」


 辺りに肉が焦げたような臭いが充満する。そして、身体を焼かれたアランだったモノは床にドカッと崩れる。

 何という威力の魔法だ。流石のエグルも驚いている。

  そして俺も驚きを隠せずにいる。


「今の魔法は……」


 俺は今の魔法を見たことがある気がする。

 

「占い師お前は何者だ?」

「ただの魔法使いですよ」

「確かに魔法使いかもしれないが、ただのではないだろ? 火柱が紫だった。つまりお前は冥府の魔力を持っているはずだ」

「ほう。良く知っていましたね」

「冥府の魔力を持っている人に会ったことあるんでね」

「なるほど……」


 俺と占い師は見つめ合う。

  するとパンッという音が響く。

 

「はい。そこまでですよ、今はモニカの戦いを見守りましょう」


 どうやらリリーが両手を叩いた音だったみたいだ。


「そうですね」


 俺もモニカさんの戦いを見守ることにした。

 

「貴方達は相変わらずとんでもないですね」

「お褒め頂き光栄です」

「褒めてはいないんですがね……はあぁ!」


 エグルの体から黒いオーラが溢れてくる。

  おそらくあれが加護という物なのだろうが、アランが出していたものより、強大な力を感じる。


 そして、モニカさんも臨戦態勢に入る。

  彼女の目は今まで見たことがないほどに鋭いモノとなっていた。

 

 

「行きますよ?」

「ええ、どうぞ」


 まもなく開戦と思ったその時――

 

「「「「ッ!?」」」」

「ほおぅ?」


 俺はもちろん占い師、モニカさん、エグルが驚く。そして、モニカさんは立っていた場所から後ろへ飛び退く。今モニカさんが立っていた場所を何かが通過する。

  そして、その場所が派手な音をたてて抉れる。

 

「おやおや。まさか助けが来るとは……」

「お前は我らの参謀だ、それがこんなところで殺されては困る」


 奥からガシャガシャと音をたてながら、何かが歩いてくる。

  そしてその姿がはっきりと見えるところまで来た。

  その人物は全身が黒い鎧で纏い、騎士風の姿をしていた。

 

 そしてその姿を見た瞬間一歩足を引いてしまった。

 

「何だ……こいつ」

「参謀エグル。奥にゲートを開いている。そこに向かうがいい。ここは俺が足止めしておく」

「それは助かりますね。ではお願いしましたよ。期待の新人さん」


 新人? 今エグルは新人と言ったか? あれがか?

 

「待ちなさい!」

「おっと。ここは通さないぞ?」

「くッ」

「モニカ……退いてください」

「え?」

「む?」


 ガキンッと音が響く。

 

「ほう?」

「ふふふ……」


 黒い騎士とリリーの剣がぶつかり合い、鍔迫り合いをしている。

 

「いきなり攻撃してくるとはな」

「卑怯などとは言いませんよね?」

「言わないさ……ふっ!」


 黒い騎士はリリーを押し返し、後ろへと飛ばす。

  だが、あれは飛ばされたというより自ら後ろに跳んだという方が正しいだろう。

 

「リリー!」

「モニカさんここは私にお任せください」

「しかし!」

「折角、目の前に本気で戦える人が居るんです。代わってください」

「モニカ。ああなったらリリーは言う事を聞かないですよ」

「そうですね……」


 そしてモニカさんと占い師は後ろへ跳び俺たちの隣に来る。

 

 

「さて、では戦いましょうか?」

「いいだろう」

「ふふ……ふッ!」


 リリーが消える。

  そして黒い騎士の後ろへと現れ、隙間が空いている首へと攻撃を仕掛ける。

  だが、その動きを読んでいたのだろう、いとも簡単に攻撃を防ぐ。

  そして今度は自分の番だというように縦に剣を振るう。

  リリーはそれを受け止める事はせず、横に避ける。すると、黒い騎士の剣を振った場所が一直線に床が抉れる。

 

 

「あの攻撃に一撃でも当たれば、只ではすまないでしょうね。どうですか? モニカは受け止められますか?」

「いいえ。私では無理ですね。というより、あの騎士の攻撃を受け止められるのは私の知っている人ですと、一人しか思い当たらないですね」

「そうですね……僕も同じです」


 二人は呑気に会話している。

  リリーが心配ではないのだろうか?

 

「あの……モニカ?」

「はい。なんでしょう? アリア様」

「あの方はモニカのお知り合いなんですよね?」

「そうですね」

「相手の黒い鎧の方はとても強そうですが、心配にならないのですか?」


 俺の疑問を、アリア様が代わりに聞いてくれたようだ。

  そして、それを聞いたモニカさんは二コリと笑った。

 

「はい。大丈夫ですよ。リリーは私の知る限り、この世界の最強の一角ですから」

「最強?」

「はい」


 リリーがこの世界での最強の一角か、確かにリリーのあの並外れた戦闘能力の高さを見ていると、大げさに例えているようには思えない。

 

「ふんっ!」

「ッ!?」

「アリア様失礼します」

「え?」


 モニカさんはアリア様の頭を押さえ、一緒にしゃがむ。そして俺や占い師――リリーも同じ様にその場でしゃがむ。

 

  そして、頭上を何かが突き抜け、後ろの壁に斬撃で傷がつけられる。

 

「あれは化け物だな」

「そうですね。流石にここまでとは驚きました」


 俺の言葉に占い師も同意する。

  そして、アリア様は何が起こっているのか理解できておらず、辺りを見渡し、戸惑いと恐怖の表情を浮かべている。

 

「ご安心ください。アリア様は私がお守りしますから」

「モニカ……」

「アリア様、安心していいですよ。モニカは自らが認めた主は絶対に守りますから」


 なるほど、そういう事か。エグルとの戦いの時モニカさんが怒っていたのは、メアリー様を襲ったからだな。

 

「とわいえ、これだと城が持たないな」

「そうですね」


 モニカさんと占い師の言う通りだ。あの黒い騎士の攻撃は一撃一撃が強力過ぎる。

  このままだと城が壊されかねない。

 

「はぁ!」


 カキンッカキンッカキンッカキンッ!

 

 一秒以内に四回の連続攻撃を仕掛けるリリー、しかし、黒い騎士はそれを全て受けきる。

 

「ふぅ。いい加減、全力で戦いませんか?」

「それはこちらの台詞だな。そちらもまだ本気ではないようだが?」


 お互いに本気で戦わない理由は簡単だろう。互いに力量を見極めているのだ。相手は自分より強いのか、それとも弱いのか、それを推し量って戦っているのだ。

 

「そうですね。では、ここからは本気で戦いましょうか?」

「……」


 リリーの提案に黒い騎士は黙る。

 

「残念だが、今回は遠慮させてもらおう」

「あら? なんでですか?」

「俺とお前が戦えば、この城、そしてお互いの肉体ですら、ただでは済まなくなるだろう」


  そしてゆっくりと黒い騎士は剣を鞘に納める。そして、踵を返して、ゆっくりと歩いていく。

 

「あら? どこへいかれるのですか?」

「さっきも言ったはずだぞ? お前とここで戦えばただでは済まないと」

「ええ、それは聞きました、ですが、それで、どうして貴方が逃げる理由になるのですか?」


 リリーが口に出した逃げるという単語に、黒い騎士は殺気を放つ。

  おそらくこれはリリーの挑発だろう。そう言う事で自らと戦う様に仕向ける。

  リリーはとにかく相手を見下す方向がある。そして、悔しいことだがそれに見合った能力を彼女は兼ね備えている。

 

「ふん。そんな挑発には乗らないぞ? 何より俺は色々とやることがあるのだ。お前と戦えばそれに支障が出る」

「なるほど……ではどうぞ行ってください。後ろから攻撃などは致しませんので」


 リリーのその言葉を聞きゆっくりと歩き出す。しかしその後ろ姿には隙が見たらない、おそらくリリーの言葉を一切信用していないのだろう、だから警戒を解かないのだ。

 

  まぁ俺も後ろから攻撃しないと言われても、警戒など解くことはしないがな。

 

「攻撃しないと言っているのですけどね。信じてもらえませんか」


 しばらくして、黒い騎士は闇の中へと消えていった。

 

「ふぅ……行きましたね。では、改めて。楓さんお久しぶりですね?」

「あぁ、久しぶりだな。何故お前がここにいる?」


 俺のその疑問にリリーはふふっと笑う。そして一拍あけ、口を動かす。

 

「私がここにいる理由、それは魔王の情報がここにあるからですよ」

「魔王の情報……」

「ええ、しかし、それももう消えてしまったようですが」


 そう言い、床に転がる人だったモノを見る。

  その行動が示す意味――それは、アランが魔王の情報を持っていたのだろう。

  何故彼が魔王の味方をすることになったのかはわからない、しかし、もしかしたら彼は魔王と出会った事があるのかもしれない。

 魔王は人を魅了する――ゲームでそう説明されており、ゼル師匠も同じ事を言っていた。

 

  つまり、アランは魔王とどこかで会い、そして魅了された。そう推測することもできるのではないか?

 

「まぁいいです。魔王についての情報は他にもあるでしょうし」


 そう言い放つと、再び俺の方へ向く。そして目を少し細める。

 

「強くなりましたね」

「リリーが紹介してくれた人のおかげだ」

「そうですか……良かったですね」

「あぁ、本当にあの人には感謝しかない。しかし、リリーはあの人に会いに行ったりしないのか? 結構寂しがっていたが」

「そうですね。私も久々にお会いしたいですが、それ以上に、今はやらなければならない事があるので」


 懐かしそうな顔をしたかと思ったら、次の瞬間には何かを決意している目をこちらに向けてきた。


「お前のやらなければいけない事ってなんだ?」

「それは言えません」


 ゼル師匠も教えてくれなかった。本当にリリーは何を目標で動いているのだ?

 

「楓!」


 俺がそんなことを考えていると、聞き覚えのある声が響き渡り、その場に居た人たちは皆一斉に声のした方へと顔を向ける。

  そして、方向に居たのはアリア様の姉――メアリ様だった。

 

「お姉様!」


 アリア様が喜びの声を上げメアリー様の元へ走っていく。

  当然だろうな、彼女の実の姉であり、そして一番信頼している人物。それがメアリー様なのだから。

 

「アリア! 無事だったのねよか……た」

「お姉様?」


 メアリー様はアリア様の姿を見て無事だったことに安堵の表情を浮かべていたが、突然恐怖の表情へと変わった。

  そして、メアリー様が向けている視線の先にはリリーが静かに佇んでいる。

 

「あ……あぁ…」

「お姉様!? どうなっさたのですか! しっかりしてください」

「リリーお前はメアリー様と知り合いだったのか?」

「いいえ。彼女を遠目では見たことありますが、直接お会いするのは初めてです」


 リリーが嘘をついている可能性を考えたが、その言葉が真実だとすぐに理解することになった。

  メアリー様の言葉で――

 

「な、なんで震えが止まらないのよ」

「お姉様、本当にどうなさったのですか! あの方と知り合いだったのですか?」

「し、知らないわ、初めて出会ったわよ、でも初めて会ったのに、姿をみた瞬間、恐怖が襲って来たのよ」


 アリア様は心配そうな顔をしながら、メアリー様の肩を抱いて落ち着かせようとしている。

 

「どうやら本当みたいだな」

「こんな事で嘘なんてつきませんよ?」

「お前は嘘つきだからな。そう簡単に信じられない」

「心外ですね。しかし、私を見るだけで震えてしまうとは……仕方ないですね。私はここを離れさせてもらいます」

「リリーいいのですか?」

「構いません。では、行きましょうか?」

「わかりました」

「あの……リリー私はどうしたら?」

「モニカ。貴女はまだここの使用人です。ですから残っていていいですよ」

「ありがとうございます」


 そし、てリリーと占い師が歩いて行くのを俺とモニカさんは見守っていた。

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