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転生黙示録  作者: 水色つばさ
2章 双子の皇女と黒の剣聖
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12話 潜入

 城の近くまで戻って来た俺は気配を消しながら、どこか潜入できる場所が無いか探す。

  脱出に使った道は警備が厳しくなっていたのだ、おそらく俺が逃げたのがバレたのだろう。

 

 随分と対応が早い事が気がかりだが、まぁ今は置いておく。

 

「しかしどこから侵入するべきか……」


 俺はここ数日でインプットした城の構造を頭に浮かべながら、隙がありそうな場所の目星をつける。しかし、やはりそこも警備は厳しかった。

 

「これは流石に無理かもしれないな。できれば侵入は静かにしたかったが、正面突破するか?」


 そう思いながら、最後の希望の場所に到着した。すると――

 

「誰もいない?」


 そこに警備兵の姿が見当たらなかった。

  一体どういうことなのだろうか? 罠の可能性もあるが、どの道ここがダメだったら正面突破するつもりだったのだ。このまま進むことにした。

 

「これは……」


 奥へ少し行くと、魔物や兵士の死体が転がっていた。

  ある者は首を切られ、ある者は腹から臓器が少し見えている。

 

「兵士と魔物が戦ったとかではなさそうだな」


 何より騒ぎになっていな所を見ると、こいつらが声を出す暇すら与えずに殺したのだろう。

 

「なんか、アランよりとんでもない奴が混じっていないか?」


 まぁ……一応心当たりはあるが、その人物がこんなことをする理由が不明なので、一度置いておくことにする。

 

「く、くるなぁ!!」

「ん? 今の声は?」


 突然大きな声が聞こえ、そちらへと足を運ぶ。

  すると一人の兵士とその後ろにメアリー様が居た。

  そして、その向かい側にはこの城いるのが不思議な人が居る。

 

「アイツらは」


 そう、その人物とは、ここに初めて来て時に絡んできたチンピラどもだ。

  何でいるのかは不明だが、どうやら魔物を従えているのか、何匹かその後ろに魔物が居る。

 

 あの兵士もチンピラ程度ならどうにでもできるだろうが、あの魔物はキツイだろうな。

  しかし俺は今出ていくわけにはいかない。何故ならこれこそが罠の可能性もあるのだから、実はアイツもグルでこの状況自体が演技かもしれない。だから俺はあいつがグルじゃない可能性が消えるまで出て行かない。そう――あの兵士が死ぬか、ここで魔物とチンピラどもを撃退しないと。

 

「おいおい。俺はただ、そこの姫様をこちらに引き渡せと言ってるだけだぜ?」

「姫様は渡しはしない!」


 兵士は剣を構える。

 

「はぁ……俺もこういう事命令したくないが、仕方ないか。やれ魔物ども、そのうざい兵士を殺せ」


 リーダの男が後ろのトカゲのような姿をした魔物に命令する。そして、その命令に従うように、動き出し兵士に向かって武器を構える。

 

「姫様。貴女は俺が守ります! うおぉぉぉぉぉ!!」


 兵士はトカゲの集団に向かって突撃していく。

  流石にこの城の兵士だけはあり、一匹、二匹と魔物を倒していく。しかし、少し数が多すぎる。周りを囲まれ斬りつけられる。

  しかし兵士はそれでも攻撃の手を止める事はせず魔物に攻撃をする。

 

「おいおい、いつまで手こずってんだ! 相手は一人だぞ!」

「あ、兄貴流石にこれは不味いんじゃないのか?」

「うるせぇ! もう後戻りは出来ねーんだよ!」


 リーダーの男は剣を抜き一歩一歩兵士に近づく。

  そして魔物に集中していいる兵士に向かって剣を突き刺す。

 

「がぁ!?」

「後戻りなんて、できないんだ」

「姫様、どうかお逃げくだ……さい」


 その言葉を最後に次々と魔物が持っていた剣が突き刺されていく。

 

「さて、姫様アンタを守る兵士もいなくなった、諦めて俺たちと一緒に来てもらうぜ? アランさんがお呼びだ」


 メアリー様は目の前の兵士の亡骸を見つめている、そしてしばらくして俯き、ごめん、ごめんっと小さく呟くのが聞こえた。

 

「……捕まえろ」


 魔物がその命令に従い、メアリー様の近くまで行きその手を触れようとした瞬間、俺は刀を抜きその魔物の手を斬る。

  ギリギリ踏む込みの範囲だったのが幸いした。

 

「な!?」

「え?」


 チンピラのリーダーとメアリー様が驚いているが俺はそれを無視して、目の前の魔物の首を刎ねる。

 

「な、なんでここにいるのよ、楓!!」

「……」


 質問を投げかけてきているが、俺は何も答えず、目の前の魔物の集団を見据える。

 

「お前はあの時の……」

「兄貴!? 流石にアイツは!」

「わかってる! お前らは手を出すなよ? 俺とこのリザードマンでどうにかする。いけ! あいつを殺せ」


 一斉にリザードマンが襲ってくる。

 俺は一歩踏み込み――二体のリザードマンの胴体を真っ二つにする。

 

「リザードマンというのも、たいしたことないな」

「くッ! 舐めるなよ! あの時は油断したが今度は油断しない!」


 あの時? あの時とはどの時なのだろうか?

  俺が覚えている限りでは、こいつらに実力を見せていないはずなんだがな。

 

  あ――もしかして、前にアリア様を襲って来たのはこいつらか? 

 

「お前もしかして庭で襲って来た奴か?」

「今更隠す必要もないだろうな。そうだ。あの時襲ったのは俺たちだぁぁぁぁ!」


 剣を構えて襲ってくる。

  なるほど……確かにこの素人同然の動きは間違いなさそうだな。

  向かってくる剣を軽々と刀で受け止める。

 

「くッ」

「あの時は武器を持っていなかったからな、今度は武器ありで相手をしてやろう」

「くそがぁぁぁ!」


 無茶苦茶に剣を振り回す。冷静に一振り一振りを捌き受け止め、そして隙を見て周りのリザードマンを殺していく。

  さて、周りの魔物も居なくなったことだし、お遊びも終わりにするとしよう。

  俺は剣を右に逸らし、そのまま肩から胴体に掛けて斬りつける。

 

「あにきぃ!!」


 フラフラと後ろに下がり壁に寄りかかり崩れ落ちる。

  そして、今まで見ているだけだった奴らがリーダーの前に集まる。

 

「お前らとっとと逃げろ。俺でも勝てなかったんだ。お前らじゃ絶対無理だ」

「嫌だ! どうせもう俺らだって罪人だ! こんな事したのなら、死刑にされちまう」


  俺はゆっくりと近づく。そして血で汚れた刃をリーダーに集まっている人物の人の首にあてがう。

 

「その通りだ、お前たちは死刑にされる。なら、俺がこの場で殺してやる」

「やめてくれ。こいつらは何も関係ない。俺が無理やり着き合わせたんだ」

「な!?」


 周りの奴らが驚いたような反応をする。

 

「だから、こいつらだけは見逃してくれ」

「……」


 俺は刀に強く握る。そして今まさに目の前の奴の首を斬ろうと思ったその時――

 

「止めなさい」


 いつの間にか俺の隣まで来ていたメアリー様が俺の手を掴み、止める。

 

「何故止めるんですか?」

「いいから、その武器をしまいなさい。こいつらはもう、戦う意思なんて持っていないわ」

「貴女を襲ってきた人たちですよ? いいのですか?」

「いいわ。だから武器を下ろしなさい」

「……」


 俺は無言のまま静かに刀を鞘に納める。

 

「はは……姫様すまなかったな。俺達も色々あってな、従うしかなかったんだ」

「賊の言い分なんて聞きたくないわ。だけど、もし、貴方は自分の命と引き換えに願いが叶うとしたら、何を望むのかしら?」

「何?」


 メアリー様まさか――

 

「ははははッ。こりゃいいや。そうだな……俺の命と引き換えに、か。なら、それは一つだ。こいつらの罪をなかったことにして欲しい」

「兄貴!?」

「そう……」


 メアリー様は目を閉じ背を向ける。そして言葉をゆっくりと発する。

 

「楓、その賊を殺しなさい」

「止めてくれ! 兄貴を殺さないでくれ!」

「良いんですね?」

「ええ、でも周りの人は殺しちゃだめよ? その人たちは一般人。この帝都に住まう大切な民なのだから」

「わかりました」


 再びゆっくりと刀を抜く。そして、逆手に持ち突き刺す準備をする。

  しかし、邪魔が入る。

 

「止めてくれ! 頼む!!」


 取り巻きの奴らが俺の服などを掴む。

 

「止めろ! おめぇら!」

「あにきぃ……」


 こいつらの顔は涙でぐしゃぐしゃで、言葉にも嗚咽が混じっている。

 

「せっかく、女神様が願いを叶えてくれるんだ。俺の願いを踏みにじるんじゃねーよ」


 その一言で自らのリーダーの覚悟を無駄にするわけにはいかないと悟ったのだろう。

  袖で涙と鼻水を拭き。わかった、と一言だけ発して、後ろへと下がった。

 

「悪かったな。さぁ思う存分やってくれ」

「ああ」


 そして、俺は刀をそいつの心臓めがけて突き刺す。

 


 ☆☆☆


「それで貴方たちはなんでアランに従っていいたのかしら?」

「それは……」


 周りの奴らと顔を合わせ頷く。

 

「それは、脅されていたからです」

「脅されていた?」

「はい。俺たちは元々は帝都の出身者ないんです。兄貴は帝都の出身ですが」

「それで?」

「兄貴は俺たちを救ってくれたんです。奪われる側でしかなかった俺たちを――」


 奪われる側、か。おそらく貧しい場所で暮らしていたのだろう。そして治安も相当悪く、こいつらの言う奪われる側とは、明日を生きるために必死になりすぎて、人から物を奪ったりし始めた人たちの標的という意味なのだろう。


「兄貴は俺たちが血のにじむような思いをして手に入れた、食材や金を狙うやつらから守ってくれた。そして、この帝都に連れてきてくれたんだ」

「それは正しい判断ね。この帝都では絶対にそんな事は私が許さないから」

「はい、ここは本当に素晴らしい場所でした。俺の妹も気に入ってましたからね」

「「え?」」


 妹? こいつに妹なんていたのか。


「貴方、妹なんていたのね」

「はい。他の者も家族や恋人が居たりします」

「そう……」


 それをアイツは助けたのか。言葉使いや見た目はかなりチンピラみたいだったが、根は良い奴だったのかもしれないな。

 

「そして、ある時アランがやってきました。そして、アランはこう言いました。俺に従え、さもなくば、お前達の家族も恋人も殺す……と」

「あのアランがそんなことを――」

「……」


 俺は立ち上がる。

 

「楓?」

「俺はもう行きますね」

「アンタはアランに勝てる自信はあるの?」

「当り前です。何より――俺はアランを殺しに、この帝都に来たのですから」

「え……」


 この帝都に来た理由の二つの内の一つだ。もう隠しておくことも無いだろう。

 俺はそれだけ言い残し歩き出す。

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