11話 冤罪
翌日――
俺は一人の兵士に呼ばれ大広間へと来ている。そこには緊迫した雰囲気で何人もの兵士とアランとメアリーが居た。
俺はそれを見た時嫌な予感がした。
「おはようございます」
俺は挨拶するがその場にの誰も、挨拶を返してくれない。
これはますます嫌な予感が強まってくる。
「上代楓」
「はい」
「単刀直入に言う。昨夜アリア様を襲ったのはお前だな?」
その言葉に内心驚く。
俺がアリアを襲った? そんなわけがないだろう。俺がアリアを襲う理由が全くない。何より一体何故俺が襲ったなどという話になっているのだ?
「俺ではありません」
「嘘をつくな!!」
「本当です。それはアリア様から聞いていただければ!」
「そのアリア様が仰っていたのだ」
何? アリアが……いや、そんなはずはない。あのアリアがそんな事言う人じゃない。
何より彼女はあの場に居た当事者だぞ? その人が俺に襲われました。なんて言うはずがない。
「それは本当にアリア様が仰っていたのですか?」
「あぁ、もちろんだ」
嘘だな。もし本当にアリアがこの場で証人としているはずだ、なのにこの場に居るのは姉のメアリーだけ。
「もし本当だというなら、何故その本人がいなのですか?」
「お前が何をするかわかったものではないからな、なのでお部屋で待機してもらっている」
そう来るか。
「なら、なんでメアリー様はいるんですか?」
「それは、俺が守れるからだ」
「守れるのでしたら、アリア様も守れませんか?」
「ふ、流石の俺でも二人をお守りするのは難しい。だからメアリー様だけお呼びしたのだ」
俺はチラリとメアリーに視線を向ける。すると、俺の視線を避けるように辛そうな顔をしながら横を向く。
今の反応で充分だな。
アランは二人は守るのが辛いと言っていた。それなら、メアリーではなくアリアを連れてくるべきだ。
しかし、アリアは連れて来なかった。いや、連れて来ることができないが正しいのかもな。
何の目的があってこんな事をしているのかはわからないが、アリアはこの場に来れば真実を話してしまう。
そしてメアリーの今の反応見る限り真実を知っているだろう。しかしそれを言わない――おそらくアリアが人質になっている可能性が高いと思える。
しかし謎が一つ謎がある。何故メアリーをこの場に連れてきたのだろう? こいつらの目的がわからない。
「そうですか」
「さて、ではこれからお前を捕まえる。抵抗するなよ?」
「……」
武器は部屋だ。しかし抵抗できないわけではない。たかだか、兵士の一人や二人素手でも倒せる。それに今この場から走って自分の部屋まで走って武器を取りに行くこともできるだろう。しかし――
チラリともう一度メアリーを見る。
俺が抵抗することでアリアに何かあればココナに合わせる顔がさらに無くなるな。
「わかった」
俺は手を開いて肩より少し上まで上げる。
「好きにすればいい」
「捕まえろ!」
その合図とともに周りの兵士達が俺を囲む。そして手を拘束され歩かされる。
しばらくして、城から少し離れたところに見るからに怪しい物が見えてくる。
周りは石で作られており、扉は鉄でできて、所々錆びている。
「歩け」
一人の兵士が扉の鍵を開ける。そして俺の近くにいた兵士が厳しい口調で歩くように言う。
俺はそれに従いゆっくりと歩いて行く。
扉をくぐるとすぐに階段が見えた。その階段を下りると、鉄格子で出来た扉がいくつも並んでいる場所に出た。
「ここだ。入れ」
一番奥の牢屋の前に来て、扉を開け俺に入れと命令する。言われるまま俺の身長より少し低い扉を潜り、牢屋に入る。
そして役目を終えた兵士達は何も言わず来た道を引き返す。
「さて、これからどうするか……」
俺は地面に座り、ここからの脱出を考える事にする。
流石にこんな所で処罰を待つほど俺はいい子ではないからな。
とはいえ、どうするか――魔法使ってみるか。
俺は鉄格子に向かって火の魔法を放つ。そして火の玉は鉄格子に当たるが、傷一つ付いていなかった。
初級の魔法なので威力はないが、鉄格子くらいなら破壊できるはずだ。
しかし、それができないという事は、きっと何かエンチャントでも付いているのだろう。
「困ったな……流石に力で無理やりこじ開けるのは俺では無理だし」
ダメだなお手上げだ。とりあえず、何かチャンスが来るまでは、牢屋でおとなしく過ごすことにする。
☆☆☆
あれからどれだけの日にちが経過したのだろう? ずっと薄暗い牢屋の中に居るので時間の感覚がわからなくなってきた。
一応定期的に食事を運ばれてくるので、それを目安に考える事も可能というば可能だが、それよりも俺はここから抜け出す方法を考え方が有意義だ。
「しかしどうしたもんか」
「何をブツブツ言ってるのよ」
ぽつりと独り言を零したとき、一人の女の人の声が聞こえた。
そして薄暗い空間のから、この場所に似つかわしくない綺麗なドレスが見えてくる。
「何でここにいる――メアリー」
「予想してたより元気そうね。はい――」
ポイっと何かを投げてくる。そしてガシャンと音を立てて地面に落ちる。
それを確認して俺は驚く。
「これは……」
「それ、アンタの武器でしょ?」
「あぁ、これは確かに俺の武器だ」
何故メアリーが俺の武器を持ってきたのだ?
「何故これを?」
「アンタを助けに来たのよ」
「俺を?」
「ええ」
全く予想していなかった。まさかメアリーが助けに来るんて。
もし俺を逃がしたのがメアリーだとバレればメアリーに危険が及ぶ可能性がある。いや、何よりアリアも危ないかもしれない。
だから、メアリーがこんな無茶をするとは予想できなかったのだ。
「何で俺を助けようと? 危険だろ?」
「アリアが悲しむからよ」
「え?」
「アンタが死ねばアリアが悲しむから!」
「俺が死ぬ?」
「ええ、なんとなく予想はしてると思うけど、アンタは処刑が確定されてるわよ」
まぁそれは何となく予想することはできた。
だからこそ、俺は脱出する手段を考えていたのだ。
しかし、全く予想していなかった救世主が現れるとはな……。
「そうなんですね」
「そうよ。しかし鍵がないわね? 確かここにいつも掛けていると、聞いていたんだけどなぁ」
壁についているフックを見ながらメアリーは呟く。
確かに俺が来たときはあそこに鍵は掛かっていた。しかし、何故か兵士は鍵を元あった場所に返さず、持ち帰ったのだ。
おそらく、アランの入れ知恵だろうな。あそこに置いたままだと、もし誰かが助けに来た時に脱出されてしまうもんな。
しかし、鍵が無くても脱出できるようになった。
まさか武器を持ってきてくれるとは、メアリーナイス判断だ。
「大丈夫だ」
「え?」
「少し離れていろ」
メアリーが俺の言うとおりに離れる。
そして俺は地面に落ちている刀を拾う。そして鞘から刀を抜くと同時に鉄格子を二回斬る――
「ふぅ。こんなもんか」
「アンタ本当にすごいわね」
「そうか?」
「そうよ! 普通、鉄格子斬れないわよ?」
「まぁそれは武器が良いからな」
「ふーん。まぁいいわ。さっさと脱出するわよ」
「あぁ」
そして、俺はメアリーの指示に従い、外に出る。そして物陰に隠れながら警備を潜り抜け、町へと出る。
「ここまでくれば問題ないわね」
「そ、そうなのか?」
どう見ても町のど真ん中なのだが……本当に安全なのだろうか?
「安心しなさい。問題が起こっているのは城の中だけ、町までは何も起きてない」
「なるほど。そういう事ですか」
アランも流石にそこは控えているのかもしれないな。
「さぁアンタはここから去りなさい」
「メアリーはどうするんだ?」
「私? 私はここから離れるわけにはいかないわ。民の事もあるし、何よりアリアが心配だから」
「そうか……」
ここで俺が何かを言っても無駄だろうな、彼女のあの目は、決意を決めている目だ。
ならば、俺は彼女の言うとおりに、この帝都を去るしかないだろう。ここにとどまっていては迷惑をかけてしまう。そして二人の姫に危険が及ぶかもしれないしな。
その前に、俺は一つだけ聞いておかなければならないことがある。
「メアリー」
「何?」
「この町は大丈夫と言ったよな?
「ええ、言ったわよ?」
「城はどうなっている?」
「……」
俺の質問に険しい顔をして黙る。言うべきか悩んでいるようだ。
「答えてくれ」
「……わかったわ。でも一つだけ約束して」
「なんだ?」
「この話を聞いても、この帝都を出ていく事」
「…………わかった」
俺のその言葉を放つと、ゆっくり唇を動かす。
「城の中は魔物だらけよ」
「……」
魔物だらけ……か。
「魔物か」
「ええ、そしてその魔物を招きいれたのが――」
俺はメアリーが発するよりも早く名前を言う。
「アランだよな?」
「え」
俺の言葉に少し驚いた顔をしたが、すぐにいつも通りの顔に戻り。一言――そうよ、と言った。
「わかった」
「言っておくけど、変な気は起こさないでよ?」
「何でだ?」
「確かにアンタは強い。でも、アランには勝てない――」
「俺は幹部と互角だったが?」
「ええ、でも今のアランは昔より遥かに強いわ。だから、いくらアンタでも勝てない」
彼とは真剣に戦った事がないから、どのくらいの強さなのかはわからない。
だが、俺より強いとは今の段階では思え何だがな。
「わかった。じゃあこの帝都から出ていく」
「素直でよろしい。じゃあ私は行くわね」
そう言って小走りで城の方へ走って行く。俺はその姿が見えなくなるまで眺めていた。
「さてっと」
俺は帝都に入るための出入り口に向かう。
そして、帝都の外に出ると、一人の男性が立っていた。
「お前は……」
「やぁやぁ、久しぶりですね」
そこに立っていたのはいつぞやの占い師だった。
相変わらず怪しい格好をしているな。
「俺に何か用ですか?」
「ええ、ちょっと気分転換になんとなく占ってみたんですが――」
少しだけ間を開ける。。
「この帝都は今、現在進行形で危機に陥ってますね」
「そうなのか?」
「ええ、私の占いは絶対なのです」
「そうなのか……それで、なんでこんなところに突っ立っているんだ?」
占い師はニヤリと笑う。
「私の占いではここで待っていれば、この危機を救う救世主が、通ると出ていたんですよ」
「なるほど。で、その救世主は通ったのか?」
「いいえ、残念なんがら、貴方が来るまでそれらしい人は来ませんでした」
なんか含みがある言い方をするな。
「それは残念だったな」
「ええ、残念です。てっきり黒の剣聖でも通るかと思っていたんですが」
「俺で悪かったな。では俺はこれで失礼するよ」
「待ってください」
俺が占い師の横を通り抜けると、呼び止められる。
「まだ何か用でもあるのか?」
「いいえ、貴方はレイチェル姫の護衛の方でしたよね? 姫様を置いて何処へ行くのですか?」
「……俺は解雇された。だから、これから雇ってもらえる場所を探して旅に出るんだ」
「そうですか。ですがいいのですか?」
「何がだ?」
「あの城には貴方が求めている情報が眠っていますよ?」
こいつ。一体何者だ? ただの占い師ではないだろう。まるで俺の事を知っていてかつ目的を知っているかのような言葉を発している。
「お前は何者だ?」
「私はただの占い師ですよ」
「とてもそうには思えないんだがな」
「ただの占い師、ですよ。それでどうするんですか? 貴方はこのまま去るんですか? それとも、ここで姫様を助けに行ってこの世の悪の情報を手に入れますか?」
この世の悪……まさかこいつからそれを聞くことになるとはな。
「お前はこの世の悪を知っているのか?」
「ええ、知っていますよ。私は占い師ですから」
占い師は関係ないようにも思えるが、こいつが言っていることもわずかながら可能性はある。
俺がここに来た理由の一つがこの世の悪――魔王の情報だ。
ここに魔王の復活を望む集団が居ると噂を聞きつけ来たのだが……生憎そんな集団はいなかった。
しかし。魔王に魅了された人間はいたようだからな。そいつから聞けば何かわかるかもしれない。
「占い師」
「何でしょう?」
「お前の占い信じても良いんだな?」
「もちろんです」
「わかった信じよう」
俺はそれだけ言って踵を返し、帝都へと戻っていった。




