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転生黙示録  作者: 水色つばさ
2章 双子の皇女と黒の剣聖
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9話 帝都に帰還

あれから三時間、やっと帝都へ帰って来ることができた。


「大丈夫ですか?」

「なんとかね……」


 流石に震えは止まってはいるが、まだどこか恐怖している様に見える。

とりあえず、さっさと城へ戻らなくてはいけないな。

俺はなるべくメアリー様の負担を掛けない程度に馬車を急がせて城へ向かう。


「おかえりなさいませ、姫様」

「アランは帰ってきてるかしら?」

「え? は、はい。帰ってきていらっしゃいます。その……姫様大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。ありがとう」


 出迎えてくれた使用人はメアリー様の様子が変だと言う事に気が付き、心配そうにしている。

メアリー様は何とか使用人の前では平然を装うとしてはいるが、声がいつもと違い覇気がない。


「とりあえず、私は部屋に戻るわ。だからアランを呼んできて頂戴」

「わ、わかりました」


 メアリー様の様子から只事ではない事を察して、使用人は走ってアランを呼びにいった。


「楓は一緒に来て……」

「わかりました」


 俺は言われるがままメアリー様の部屋へと来た。


「アランが来るまで、自由にしていていいわ」


 部屋に着くと、そう言い放ちフラフラと椅子に座る。そして、手を顔に当てため息を吐く。


「メアリー様。お願いがあります」

「何かしら?」

「アラン騎士団長が来たら、俺がエグルと戦った事は伏せてもらいたいんです」

「何故かしら?」

「それは、言えません」

「……はぁわかったわ。助けてもらった恩もあるから、今回は特別にそのお願い聞いてあげる」

「ありがとうございます」


 今ここでアラン騎士団長に俺の事の実力を知られるわけにはいかない。あいつは――


「姫様どうかなさいましたか!?」


 アラン騎士団長が焦った様子で部屋に入って来た。


「アラン……せめてノックはしなさい」

「あ、も、申し訳ありません」

「まぁいいわ、とりあえず本題に入らせてもらうわ」


 それから、メアリー様はアランに幹部に襲われた事を話した。もちろん俺が戦った事は伏せてだ。

アランには俺が戦って追い払ったではなく、参謀のアイツがまた気まぐれで帰った事にしてくれた。その時、メアリー様は目でこれでいいんでしょ? と伝えてきた。

俺は顎を引き返事をする。



「まさかあの時のやつがまたメアリー様を狙って襲って来るとは……」

「えぇ、私もびっくりしたわ」

「クソッ! 姫様を守るべき俺が、肝心な時に姫様を守ることができないとは!」


 アランは拳を震わせてそう言う。


「上代楓」

「はい」

「ありがとう」


 俺の目の前に来て頭を深々と下げる。


「頭を上げてください。俺は何もしてないので」

「いや……確かにお前は何もしてないかもしれないが、それでも姫様をここまで連れて帰ってくれた。幹部を見て逃げずにだ」

「それは……腰が抜けて……」

「アラン。その辺にしておきなさい。楓も困っているわ」

「はい」


 メアリー様の言葉で頭を上げる。

そして、メアリー様は俺の方に顔を向ける。


「楓。貴方は確かに怯えて何も出来なかったかもしれない。だけどね、それでも私をここまで連れて帰ってきた。それだけでも褒められる事……とアランは言いたいのよね?」

「はい。その通りです」


 どうやら、アランが言いたかったことをメアリー様が代弁したようだ。

アランは意外とこういった事は苦手なのかもしれない。そういう意味ではメアリー様とアランのコンビは相性がいいのかもしれない。


戦う力はないが洞察力に優れ、人の本質を見抜く力を持つメアリー様。知力はさほどないが、培った戦闘経験と才能で帝都最強の騎士と言わしめた、アラン。

この二人が居れば帝都は崩壊することは無いだろう。


「そうですか……俺はもう部屋に戻ってもいいですか? その、今日は疲れてしまって」

「そうね……楓、貴方にも負担掛けたわね。もう部屋に戻って休んでいいわ」

「ありがとうございます」

「楓」

「はい?」

「私の方こそ、ありがとう」


 その笑顔を俺は直視することはできなかった、メアリー様の笑顔は俺には眩し過ぎる。


「い、いえ。それでは失礼します」


 部屋を出て自分の部屋へと向かう、その時モニカさんと出会う。


「モニカさん」

「上代様。お部屋にお戻りになるのですか?」

「ええ」

「今日はお疲れになられたでしょう? 魔王の幹部と戦うったのですから」

「俺は怯えて動けなかっただけです。無事だったのは敵が勝手に去っていってくれたからで――」

「私には嘘はつかなくてもいいですよ? この周りには誰もいませんし」


 二コリと俺に笑顔を向けるが、俺はその笑顔の裏が気になった。

この人は本当に何者なのか、そして何が目的でここに居るのか……。


「そうですね。確かに周りには他に気配はないですね。それで何か用ですか?」

「良く私が用があるとお分かりになりましたね」


 まぁ誰でもわかると思うんだがな。だって俺の部屋の前に立っていたんだから。

これで俺にが無いという方がびっくりしてしまう。


「何故わかったか……ですか。本当にわからないんですか?」

「そんなわけないじゃないですか」

「それなら良かったです。それじゃ、部屋にどうぞ」

「入れてくれるんですね」

「まぁ話を聞くだけなら」

「では、お邪魔させていただきますね」


 俺が扉を開けて、モニカさんを自分の部屋に招く。


「それで、改めて、俺に何か用ですか?」

「いえ……ただ、お礼を、と思いまして」

「お礼?」

「はい。メアリー様を守ってくださってありがとうございます」

「何でモニカさんがお礼を言うんですか?」

「もうお察しかもしれませんが、私はとある理由でここにいます」

「まぁ貴女ほどの実力者が居るのは、不思議でしたからね」

「一時的だったとしても、私の主であることには変わりありません。もし主に何かあれば私は……」


 そう語るモニカさんの顔に影が差す。

彼女も何かあるのだろう。まぁ俺には関係が無いことだがな。


「すみません。暗くなってしまいました」

「いや……いいんですが、それだけですか? というより、それならモニカさんも着いてきたらよかったのでは? 貴女ならあの幹部とも戦えるでしょ?」

「私も上代様と同じで、実力は表に出せないのです」


 そうだろな。この人は実際に戦ったわけではないだ、アランよりは強いと予想できる。もしそんな彼女が実力を隠さずにここで使用人として働いていたら、俺がアランの代わりに呼ばれることも無かっただろう。


「でも、隠れてついていくとかできたのでは?」

「それはできません。私はここの使用人です。任された持ち場を離れるわけにはいかないのです」


 この人なりの信念みたいなものか。


「ですから、ある人に隠れて護衛してもらえるようにお願いしたのですが、まさかそのまま戦いを見守るとは思いませんでした」


 その言葉に俺は驚く。


「モニカさん」

「はい、何でしょう?」

「今、隠れて護衛を頼んだとおっしゃいましたよね?」

「はい」


 あの場にもう一人いたのか……俺やエグルにすら悟られず、ずっと見ていた奴が。

この人は本当に何者なんだ? この人自身も謎、そして、この人の仲間も実力者だ。


 もしかして、この人は危険な存在なのでは? もしそうなら今ここで始末すべきか?

そう思う俺は刀に手を掛けようと思った瞬間――


「ダメですよ?」

「ッ!?」


 どこから出したのかわからないナイフを俺の首にあてがう。速いな。


「変な事は考えない方が身のためです。正直、私は貴方をいつでも殺す事ができます」


 今の一瞬で確信した。この人は強い、俺と同等、いや――俺以上に強い。

あの力を使わないと勝てないかもしれないな。


「ん? なるほど……才能持ちとは聞いていましたが、紫でしたか」

「どうする? ここで俺を殺すか?」

「……いいえ」


 モニカさんはナイフを引っ込めた。


「私は今回殺しの命令は承っていませんので」

「そうかですか、ところでモニカさんはなんで隠さないんですか?」

「何がですか?」

「仲間がいる事、そして誰かの命令で動いていることを」

「あー、それですか」 


 モニカさんは少し間を置く。そしてゆっくりと口を動かす。


「それはですね。上代楓さん貴方だから隠してないだけです」

「俺だから?」

「はい、道は違いますが、いずれは同じ目的地に着くので、上代楓様になら話しても大丈夫と仰られていましたので」

「そうですか」

「さて、随分と長い事ここに居ましてね。私はここで失礼しますね」


 俺は踵を返して、部屋を出ようとするモニカさんを眺めていると突然扉の前で止まる。


「そうでした。明日もいつもと変わらない接し方でお願いしますね」

「わかっていますよ。今回は俺が軽率だったので」

「ありがとうございます。では、また明日もよろしくおねがいします」


 軽くお辞儀をして部屋を出ていく。

そして、俺は脱力感に襲われ、壁に寄りかかりずるずると地面に座る。


「ありゃ、強いな」


 モニカ・ヴェローチェ。只者ではない。

油断していたとはいえ、俺が全く反応できないとは――彼女は今は敵ではない、それは本当だろう。だが、もし彼女が敵に回った時果たして俺は勝つことができるのだろうか? そんな疑問が俺の頭をよぎる。


「はぁ、とりあえず、しばらくは横になっておこう」


 そんな独り言を言いながら、俺はベッドに向かい飛び込む。そして、静かに目を閉じて夕飯ができるまで眠った。


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