6話 占い
「うふふ」
「上機嫌ね……」
「だって楓様が選んでくださったんですから」
「喜んで頂いて良かったです」
「まぁいいけど、ところでこれからどうするの?」
「そうですねー、そろそろお昼ですから、何か食べましょうか?」
先ほど焼き鳥を食べたから、今すぐ食べたいというほどではないが、それでも、そろそろ食べたいというくらいにはお腹が空いている。
「何かお二人が行きつけのお店とか無いんですか?」
「あるにはあるんですが……」
「どうかしました?」
「そこは、完全予約制なのよ」
答えたのはアリア様ではなくメアリー様だ。
俺の時も思ったが、メアリー様いいタイミングでいつもサポートを入れてくれるよな。
なんだかんだ本当は優しい人なんだろうな。俺にも助言をくれたりして。
そう思うと少し口緩む。
「な、何笑ってるの?」
「何でもないですよ」
「ふふッきっとお姉様の優しさを理解してくれたんですよ」
こっちもこっちで、すごいな。まさにビンゴだ。
「な!? 私は別に優しくないし!」
「そんなことないですよー、お姉様はとても優しいです。妹である私がそれを良く知っています」
「そ、そう」
「仲が良いみたいで何よりです。ところで、食事はどうしますか?」
「あ。そうでした、どうしましょう……」
流石にお店の出入り口で考えるわけにもいかないので、少し場所を移動して、ベンチがある場所に来た。
そしてそこで、どこかいいところが無いかと考える。
しばらくすると、モニカさんが通りかかった。
「モニカ!」
「あら? 姫様こんなところでどうなさったのですか?」
「実はね――」
メアリー様が事情を説明する。
「なるほど……この辺で美味しいお店が無いか、ですか……」
数秒考える素振りをすると、モニカさんは何かを思い出したかのように手を叩く。
「そうです。私がよく行くお店とかどうでしょう?」
「へーモニカがよく行くお店ね、期待できそうね」
「ありがとうございます。では場所をお教えしますね」
モニカさんは、一番近くに居たアリア様に場所を教えてる。
俺はその姿をジッと見ていた。
「モニカをずっと見てるけど、どうしたのよ?」
「え? いや……なんでもないです」
「もしかして、アンタ、モニカの事が気になるの?」
気になる、とはおそらくこの場合、恋愛的意味だろうな。
「別にそういう訳じゃないです」
「じゃあ、なんでそんなにジッと見てるのよ」
「それは……」
なんと答えるべきか悩んでいるとモニカさんがこちらに目線を向ける。そして二コリっと笑いかけてきて体が強張る
「……」
「楓?」
「――の場所の近くにあります」
「なるほど! わかりました!」
場所を聞き終えたアリア様がこちらに向く。
「楓様? どうかなさいましたか?」
「……ええ、大丈夫です」
「上代様どうなさいました? もしかして私に見惚れていました?」
「そうですね……先ほどの笑顔に思わずゾクリとしてしまいました」
「そうですか」
お互いに笑顔を作る。
アリア様とメアリー様は気が付いていないだろうが、笑顔を作ると同時に俺たちは殺気を放っている。
「それじゃアリア様行きましょうか」
「あ、はい!」
アリア様を先頭に歩き出す。そしてモニカさんの横を通った瞬間――
「ご安心ください。今は貴方の敵ではないです」
俺はモニカさんに放っていた殺気を引っ込める事で、一応、信用するという合図を出す。しかし警戒はしておく。
それから数分して目的のお店に到着した。
「ここがそうですね。モニカさんの言っていた特徴と一致しています」
「へー、ここが」
俺は一応辺りを警戒する。まぁぱっと見た感じ怪しい人が居ないから大丈夫だとは思うが、警戒しないにこしたことないだろう。
「早速入りますか?」
「そうね、お腹空いてるし」
「はい。入りましょう」
俺たちは扉を開けると、カランカランとベルが鳴る。すると、店員さんが一人こちらにやって来る。アリア様とメアリー様とわかると驚いた顔をして二人に挨拶をする。
それから、俺たちを空いている席へと案内する。
「さて、何を食べましょうか!」
「ふむ……パスタ系が殆どね」
「そうですね。もしかしたらパスタ専門店なのかもしれないですね」
ペラペラとメニューを見ているが、まぁここはミートで良いだろう。
「俺はこれでいいです」
「へーシンプルなの選んだわね、じゃあ私は――」
それから二人は、あれやこれやと悩みながらもメニューを選んぶ、メアリー様はカルボナーラの様な物、そして、アリア様はナポリタンの様な物を頼んだ。見た目はカルボナーラやナポリタンそのものなんだが、名前が違う。
「お待たせしました」
「わぁ美味しそう!」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「ご、ごゆっくりどうぞ」
最後の部分が上ずっている。相当緊張しているんだな。
「「「いただきます」」」
俺たち三人は同時にそう言葉を発する。そして静かにフォークを取り食べ始める。
「美味しいですね」
「そうね。うちのシェフにも負けないくらい美味しいわね」
「流石モニカさんがおすすめしてくれた場所ですね」
「ええ、モニカには帰ったらお礼を言わないと」
「じー」
な、なんだ? なんかアリア様が俺の方をジッと見てきているのだが?
「じー」
「……」
メアリー様も気が付いている筈なのに何も言わない。
もしかして、これって俺のパスタが欲しいのか?
「あの……何か?」
「楓様のも美味しそうですよね」
「そうですね、とても美味しいです」
「一口ください!」
やっぱりという風にメアリー様は手を顔につける。そして俺もやっぱりと、思った。
まぁ俺は良いんだが、姫様的にはどうなのだろう? なんか行儀が悪い気がする。
「……わかりました。どうぞ」
皿をアリア様の方に持っていく。しかし何故かアリア様は食べる気配がない。
「どうかしました?」
「食べさせてください」
「え」
食べさせる? 俺が? いやいやいやいや流石にそれはメアリー様が許さないだろう。そう思いメアリー様の方に目線を向けると、完全に諦めたのか黙々とパスタを食べていた。
そして一言――
「この子は結構頑固だから、諦めなさい」
そう言った。
「は、はぁ……」
俺は諦めてパスタをフォークに絡める。俺のその行動の意味を理解して、アリア様は口を開けている。
それを見ているとちょっと間抜けだ。
「あーん」
「はい、どうぞ」
「んー美味しいです」
「それは良かったです」
「では、私のもどうぞ」
「い、いや俺は別に――」
「どうぞ!」
俺は無駄だとわかってはいるがメアリー様に助けを求める視線を送る。
しかし、諦めなさいの一言を言われただけだった。
「あ、あーん」
恥ずかしい、転生する前でもこんな事したこと無かったのに、というか、なんでアリア様は俺にこんなに尽くすんだ?
「どうですか?」
「お、美味しいです」
「ですよね! 本当にここのお料理は美味しいです」
それからは、アリア様が何か求める事もなく、一安心した。
「「「ごちそうさまです」」」
三人ともほぼ同時に食べ終わり、会計へと向かう。
「会計お願い」
「は、はい。えっと三人で銀貨一枚と銅貨二枚です」
「はい」
「はい、ありがとうございました」
会計を済ませると、俺たちはすぐにお店に出る。
そして、時間もいいので、お城に帰ろうかと話し合っていると――
「そこの者たちちょっといいですかね」
「はい?」
「なに?」
そこには見るからに怪しいフードを被った男の人が近づいてきた。
俺は何があっても対応できるように、すぐさま警戒する。
「失礼ですが、なんの御用でしょうか?」
「あぁ、警戒しないでください、私は占いをしている者なんですよ」
見た目通り怪しい職業の人がやって来た様だ。
「で、その占い師が何のようなんですか?」
「おやおや、貴方は護衛の方ですか?」
「まぁ一応」
「そうですか……」
「まぁ護衛として役に立つかわからないけどね」
酷い罵倒が横から飛んできた。
まぁちんぴらに絡まれてるところしか、見たこと無いから仕方がないがな。
「ちょっと今サービスしてましてね、初めて占う人は無料にしてるんですよ。どうですか三人とも占ってみませんか?」
「まあ! そうなんですか? 是非!」
「私は遠慮しておくわ」
「俺も遠慮させてもらいます」
「では、お嬢さんだけ」
「はい!お願いします!」
そして、じっとアリア様の目を見つめる。これで本当に占えるのか? 俺がイメージしていた占い師は水晶とか持ってるアレなんだけどな。
「ふむ……なるほど」
「何かわかりました?」
「はい。貴女は今後、災難が降りかかります」
「え、そうなんですか!?」
「ええ、しかもとても大きい災難です」
「そ、そんな……」
「アンタいい加減な事言ってないでしょうね?」
メアリー様が占い師を睨む。
「そ、そんな事はありません! それに、お嬢さん落ち込まないでください。この災難に立ち向かう方法がございますから」
「ほ、本当ですか!」
「はい」
「そ、それはどうすれば!」
「それはですね……黒の剣聖と一緒に居る事です」
その名前に俺は少し反応する。黒の剣聖……一体誰が最初に言い出したのかわからないが、なんとも厨二的な名前だ。しかも黒い服を着ていたからってだけで付けられた名前らしい。
しかも噂に尾ひれでも付いたのか、神速の剣聖と同等と言われるほどの実力と噂されているみたいだし。
今は神速の剣聖は消息が不明らしいから、同等かわからないだろうに……まぁ噂なんてこんなもんなんだろうが。
「黒の剣聖ってあの?」
「ええ、最近有名なあの黒の剣聖です」
「そんなすごい方と一緒に居ないといけないんですね……」
「そうですね。それほど大きい災難が来ているのです」
「でも、私黒の剣聖様が、今どこにいらっしゃるか知らないです」
「それはご安心してよいかと思われます」
「何故です?」
「実はとある筋から手に入れた情報なんですけどね、数日前に黒の剣聖がこの帝都に向かているが目撃されているんです」
その言葉にアリア様だけでなくメアリー様も驚く。
「うそ……あの黒の剣聖が?」
「はい。結構有力な情報なので信じていいかと思います。そして、もしかしたら、もうこの帝都にいるかもしれません」
まぁ数日前に見かけたわけだし、もう着いていても不思議はないな。しかし黒の剣聖は仮面をつけていて素顔は誰も知らないらしいんだけどな。
「そうなんですか!? あの黒の剣聖様にお会いできるといいです」
「ええ……お会いできると私の占いにも出ていますので、きっとお会いできます」
占い師は不敵な笑みを浮かべている。
こいつ……ただの占い師か? 隙だらけに見えて全く隙が無い。
害があるか、まだわからないが、あまり長いしない方がいいかもしれないな。
「アリア様そろそろお時間が」
「あ。もうそんな時間ですか」
「あら、本当ね」
「ありがとうございます、占い師の方」
「ええ、お気をつけて」
「はい! ありがとうございます」
それから、俺たちは馬車の元に戻り、城へと帰った。




